記憶遺産に「南京事件」 外務省は「遺憾」
中国が申請していた旧日本軍が起こした「南京事件」に関する文書についてユネスコ(=国連教育科学文化機関)は、「記憶遺産」に登録することを決めた。また、あわせて申請していた、いわゆる「従軍慰安婦」に関する文書については、登録を見送った。
中国が申請し、今回、登録が決まったのは、「南京大虐殺に関する文書」と題するもので、1937年から38年にかけて日本軍が行ったとされる虐殺や略奪などの行為を記録した中国人女性の日記が含まれている。また、犠牲者の数を「30万人以上」と記した中国での裁判文書も申請されていた。
日本政府は南京事件について、「殺害や略奪行為などがあったことは否定できない」が、「被害者の具体的な人数については諸説あり、断定するのは困難」という立場。記憶遺産への登録によって犠牲者の数などで「中国側の主張が国際的に定着するのでは」と懸念する声があがっている。
日本の外務省は「中国の一方的な主張に基づき申請されたものであり、当該文書は完全性や真正性に問題があることは明らかであると考える。随時申し入れを行ってきたにもかかわらず、登録されたことは中立・公平であるべき国際機関として問題であり、極めて遺憾」とする談話を発表した。
一方、中国は「日本軍の慰安婦に関する資料」と題して、日本側がまとめたとされる1931年から45年にかけての慰安婦制度の資料や写真などを「記憶遺産」に申請していたが、こちらは登録が見送られた。