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総選挙 スー・チー氏率いる野党圧勝の勢い

2015年11月10日 18:31
総選挙 スー・チー氏率いる野党圧勝の勢い

 ミャンマーの総選挙は開票作業が続いており、アウン・サン・スー・チー氏率いる最大野党が圧勝する勢いとなっている。政権交代への可能性が高まるなか、今後に向けた野党の課題も見えてきた。

 9日夜。ミャンマーの最大野党NLD(=国民民主連盟)の本部前で、NLD圧勝を伝える開票速報にNLD前に集まった支援者からは大歓声があがっていた。

 NLD支持者「この結果はとてもうれしい。最高の気分です」

 軍の司令官が任命する166議席を除く498議席が改選された今回の選挙。NLDは単独で大統領を選出できる上下両院をあわせた過半数、333議席以上の獲得を目指していた。

 日本時間10日午後2時半現在、NLDは結果が判明した88議席のうち、78議席を獲得。NLDの幹部も最終的な獲得議席が単独過半数を大きく超える380議席以上と分析するなど、圧勝する勢いだ。

 現実味を帯びてきた政権交代。しかし、スー・チー氏は…。

 スー・チー氏「NLDが優勢だというのはみんなわかっていると思います。ですがNLDの立候補者にお祝いを言うのはまだ早い」

 選挙結果に自信を示す一方、勝利宣言はしなかった。支持者に冷静な対応を呼びかけるなど、慎重な発言を続けるスー・チー氏。背景には、過去の苦い記憶がある。

 NLDは25年前の1990年にも総選挙で圧勝した。しかし、当時の軍事政権は選挙結果を無視。政権交代は実現しなかった。

 地元メディアによると、ミャンマー軍のトップは、「選挙結果を認めなかった1990年のようなことは絶対にない」と話しているという。

 しかし、NLDの幹部は、「軍や政府が何をしてくるかわからない」と話す。軍が、本当に選挙結果を受け入れるのか、警戒感を隠さない。

 選挙結果を決めたモノ。それは軍に対する根強い不信感とスー・チー氏の圧倒的な人気だった。

 有権者「抑圧から自由になることを祈る。スー・チー氏の党は自由をもたらすと思う」

 有権者「スー・チー氏を実の母親みたいに信頼している。彼女に全てを任せる」

 NLDはいわばスー・チー氏の人気に支えられた“個人商店”。しかし、スー・チー氏は外国籍の息子がいるため、憲法上の規定で、大統領になることはできない。

 スー・チー氏「もしNLDが勝利し、政府を担うのであれば、私は大統領の上になる」

 “大統領以上の存在になる”と話すスー・チー氏だが、政治経験が少なく、円滑な政権運営ができるかは未知数。また、仮に政権交代が実現しても、国防に関する3閣僚は軍の司令官が指名するなど、軍が依然として大きな力を持っている。これまで対立してきた軍とどう向き合うのかも課題。

 半世紀以上にわたって軍の支配が続いたミャンマー。変革を訴えたスー・チー氏は多くの課題を乗り越えて、民主的な政府を作ることができるのか。手腕が問われるのは、これからだ。