“正念場”の国連…問われる「実行力」
2016年、国連は「節目の年」を迎える。国連の「顔」とも言える事務総長である潘基文氏の任期が年末で切れる。
事務総長には、大国の利害が激しくぶつかり合う国連の場で意見を調整し、解決に向けたメッセージを世界に出していく指導力が求められる。
【厳しい評価の声も】
しかし、潘氏に対しては厳しい評価の声が多い。国連内部からは「仕事にそつがない」と評価する声がある一方、ある外務省関係者は「彼が残した成果というべき成果は、あまりないのではないか」と批判。さらに、別の国連関係者は「大国の利害がぶつかる問題で踏み込んだ決断をする姿が見られなかった」と指導力不足を指摘する。
また、潘氏が去年9月、欧米各国や安倍首相などが参加を見送った、中国で行われた「抗日戦争勝利70年」の記念式典に参加した事への批判も根強い。ある日本の国連関係者は「任期切れを前に政治的な行動が目立った。韓国大統領など次のポストを狙って焦っているのではないか」などと分析する。
【次期総長は誰に?】
果たして、次の事務総長は誰になるのか?現時点で有力となる候補の名は挙がっていないが、「キーワード」の1つは「女性」だ。今回の事務総長選挙をめぐり、去年、国連総会は「女性事務総長を奨励する」との決議を採択している。多くの参加国からの要請によるものだ。次の事務総長について、ある国連関係者は「初の女性トップ誕生への期待感は内部でも強い」と指摘する。
また、求められる資質については「大国に対してものを言える強いリーダーシップと発信力のある人物」との声があがる。「存在感が薄い」との指摘も出ている潘氏に変わる人物は誰になるのか。初の女性トップの誕生となるのか。年明けから候補者選びは本格化する事になる。
【安保理改革】
その事務総長が取り組む課題の1つは「安保理改革」だ。国連の最高意思決定機関である安全保障理事会は、唯一、加盟国に対して拘束力を持つ決定を行い、経済制裁などの強制措置も行える力を持つ。
しかし、アメリカ、ロシア、中国など5つの常任理事国が持つ「拒否権」が発動される場面が最近目立ち「機能不全」に陥っているとの指摘が出ている。シリア問題などでは「内政干渉だ」と中国・ロシアが拒否権を発動、国連として意見集約はできなかった。
国の枠組みを超えて起きた課題に「1つの解決策」を出す事を求められる国連。ある国連関係者は「国連の存在感とは、すなわち安保理の存在感だ。安保理が何も決められないのでは国連の意味がない」と指摘する。「安保理の存在感」が問われる年となる。
【安保理メンバーに入った日本】
2016年は安保理メンバーに日本が加わる。2015年10月、安保理の非常任理事国に選ばれた日本。6年ぶり11回目は国連史上最多となる。
安保理メンバーに加わった日本が目指す道とは何なのか?安倍首相は去年、国連総会で「安保理改革を行い、常任理事国として世界の平和と繁栄に一層の貢献をする」と強調。
国連日本代表部のトップ・吉川元偉大使も年末の会見で「日本の行動は常任理事国の候補としても見られている。何か具体的な形で貢献していきたい」と常任理事国入りに向けて強い意欲を見せている。
日本外交の“悲願”である安保理の常任理事国入り。ある外務省関係者は「道のりは険しい。その第一歩は今年、安保理に入ったチャンスを活用し、日本の独自の存在感をどう示すかにかかっている」と話す。
北朝鮮の核やミサイル問題などで、安保理の中で「主導権」をどれだけ発揮できるかなど独自の存在感をどう発揮するか力量が問われる事になる。
一方、その難しさについて別の国連関係者は「安保理ではその都度、その都度、日本の態度、意見を示す事が求められる。大国の意見が真っ二つに割れた時にどう意思表示をするのか“股割き”状態になる厳しい場面が出てくるだろう」と苦しい胸の内を明かす。日本は来年7月には、安保理の議長役を務める予定。
安保理改革に向けて、そのスタート地点につく日本。ある関係者は「安保理を変えるのは、利害が激しく対立する常任理事国ではなく、多くの加盟国の支持を受けた外の国からの声だ」と話す。
非常任理事国として「安保理メンバー」となった日本が、どう存在感を示すかが問われる年となる。