ミャンマー少数民族との和平は…支配地域へ
軍事政権が続いたミャンマーで半世紀ぶりに文民政権が誕生し、先週、アウン・サン・スー・チー氏が事実上の最高指導者となった。今後の最優先課題の一つは、半世紀以上、戦闘を続けてきた少数民族との和平。解決の兆しはあるのか、少数民族が支配する地域にカメラが入った。
■軍事政権と対立してきた少数民族
タイの西部と接するミャンマー東部のモン州。国境は山岳地帯にあり、道路は舗装されていない。国境に着くと、「タイの領土はここまで」というサインボードがある。その奥には、モン族の旗がはためいている。
赤に黄色の旗をかかげるミャンマーの「新モン州党」は、山あいに点在する200余りの集落を支配している武装勢力だ。
国境から山や川を越えて走ること6時間、新モン州党の支配地域の中心部に着いた。穏やかな暮らしの中には、似つかわしくない軍服の男性、新モン州党は長年、ミャンマーの軍事政権と対立してきた。
■「試金石」として注目される少数民族との和平
スー・チー氏はのべ15年以上自宅軟禁されながらも民主化運動の指導者として軍事政権と闘ってきたが、政権を担うのは初めてで、政治家としての手腕は未知数だ。
スー・チー氏が臨む数多くの課題の中で「試金石」として注目されるのが少数民族との和平だ。
スー・チー氏は今年1月、少数民族との会議の場で、「新政権には皆さんが望む『永遠の国内和平』を実現する責任がある。皆さんの協力をお願いします」と語った。
■停戦を拒否する武装勢力も
ミャンマーには少数民族の武装勢力が約20あり、一部は自治権を求めて半世紀以上、政権側と戦っている。国境地帯を中心に依然10の武装勢力が政権側との停戦を拒否していて、今も激しい戦闘が続くところもある。
今年2月、武装勢力が集まった会議が開かれた。今も軍と交戦している少数民族武装勢力代表は「軍との戦闘は、ほぼ毎日続いている。軍は少数民族との和平など求めていない」と話す。
新モン州党も停戦を拒否している。新モン州党の代表は「武装化しているのは軍が停戦すると言っているのが信用できないからです。ほかの地域では戦闘が続いているでしょう」
■スー・チー氏のリーダーシップに期待する声も
新モン州党の軍事パレード。自動小銃を持って兵士らが次々と行進する。兵士らの中には、ひときわ目立つ黄色いスカーフを身につけた女性兵の姿も。また、観衆の中にはおもちゃの銃を持つ多くの子どもが。彼らにとって、戦いは身近なものなのだ。
一方で、代表からは「すでに時代は変わった。選挙に勝ったスー・チー氏らから死に体の軍に対話を持ちかけている」と、和平を目指すスー・チー氏のリーダーシップに期待する声が聞かれた。自らも軍事政権と闘ってきたスー・チー氏なら、半世紀以上続く戦闘に終止符を打てるかもしれないと考えているのだ。
軍事パレードの会場にいたモン族の人たちも「(スー・チー氏なら)事態を変えてくれると信じています」「もう内戦はたくさんだ!我々はモン族、民族の誇りを守りたい」と話していた。
国民の期待を受け、初めて政権を握ったスー・チー氏。少数民族の多くからも和平を望む声が多く聞かれた。その期待に応えてどのように和平への糸口を見いだせるのか、スー・チー氏の手腕に大きな期待がかかっている。