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比・ドゥテルテ大統領 真価問われる17年

2017年1月3日 0:00
比・ドゥテルテ大統領 真価問われる17年

 2016年6月末に第16代フィリピン大統領に就任したドゥテルテ氏。いくつかの不安材料を抱えたまま、新たな年を迎えた。

 ■「暴言」が国際的な知名度を押し上げる

 アメリカのオバマ大統領に対して「地獄に落ちろ」、国連には「脱退するだろう」、EU(=欧州連合)に対しても「くそったれ」と言いのけるなど、2016年はドゥテルテ大統領の口から数々の「暴言」が飛び出した。

 フィリピン第三の都市・ダバオを計22年間率いて治安を劇的に改善した手腕などが評価され、フィリピン国内での人気は高かったものの、国際的には「無名」だったドゥテルテ大統領。その知名度を押し上げたのは、この「暴言」の存在が大きかった。

 ■「暴言」から生じる“ゆがみ”も

 しかし、ここに来てその「暴言」が、様々なところで、ゆがみを生じ始めている。2016年11月に発表された世論調査では、ドゥテルテ大統領の支持率は77%と、依然として高い人気を保っているものの、全体の51%が、「暴言が外交面で悪影響を及ぼす」とも答えていた。

 南シナ海問題で関係が冷え込んでいた中国を訪問し、多額の経済支援を引き出したほか、日本で安倍首相と会談して関係強化を図るなど、積極的な外交を進めてきたドゥテルテ大統領だったが、「暴言」の悪影響に対しては懸念を抱く人が多いことを示す結果となった。実際、ダバオ市長時代に犯罪容疑者を殺害したなどと発言したドゥテルテ大統領に対し、国連の人権高等弁務官がフィリピン司法当局に捜査を求めるという異例の事態も起きている。

 ■アメリカとの関係は

 また、その過激な発言の対象となり続けているのが、アメリカだ。ドゥテルテ大統領はオバマ大統領をののしるだけでなく、フィリピン国内に駐留するアメリカ軍の撤退を要求するなど、アメリカと露骨に距離を置く発言を連発している。

 トランプ次期大統領については「ケンカしたくない」などと、今後の関係に配慮しているようにも見えるが、2017年、どのように関係を構築していくことができるかは不透明だ。

 ■国内の「薬物犯罪撲滅作戦」も雲行き怪しく

 一方、ドゥテルテ大統領が肝いりで進める薬物犯罪撲滅作戦でも雲行きが怪しくなっている。

 治安改善に向け、ドゥテルテ大統領が選挙戦で公約にも掲げていたこの撲滅作戦では、薬物犯罪事案が手当たり次第に摘発され、摘発を恐れた関係者などが、就任直後の2016年7月以降、数十万人出頭している。フィリピン警察は、2016年7月から11月の犯罪発生件数が、2015年の同時期と比べて約30%減少しているとする統計を発表していて、撲滅作戦は目に見えた成果をあげていると言える。

 しかし、この撲滅作戦で問題視されているのは、約6000人にのぼる死者数だ。多くが薬物事件の容疑者とされるが、この撲滅作戦に巻き込まれるなどして、無関係の市民も多く犠牲になっているとされ、世論調査では78%が自分や家族が撲滅作戦の超法規的殺人で犠牲になることを「とても心配」または「心配」と答えている。

 大国や国連などに対しても臆さず過激な発言を繰り返し、危うさすら感じるドゥテルテ大統領の強気な政治姿勢は、圧倒的なフィリピン国内の支持があってこそのもので、支持を失ってしまえば政権を維持することが一気に困難になってしまうだろう。

 ■真価問われる2017年

 2017年、フィリピンはASEAN(=東南アジア諸国連合)の議長国となり、ドゥテルテ大統領には、南シナ海問題などで姿勢が一致せず一枚岩とは言えないASEANのまとめ役としての能力も求められることになる。

 フィリピン国内に向けた政策で、強気な外交姿勢で、そして、何よりもその強烈なキャラクターで、国際的にも常に注目される存在となったドゥテルテ大統領。世界の目が向けられている今、フィリピン国内の支持に応えることができるのか、国際社会から孤立せず、外交姿勢を貫くことができるのか。

 2017年はドゥテルテ大統領の真価が問われる年となる。

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