殺害や誘拐も……ハマス襲撃の街を取材 住民「罪悪感でいっぱい」「まさかここまでの悲劇が」 イスラエルは“最大規模の作戦”
イスラム組織「ハマス」の襲撃を受けたイスラエル南部の町を取材。初めて戻った住民は知人らを失い、罪悪感を抱いていました。パレスチナ自治区のガザでは空爆が今も続き、被害はより深刻化しています。一方、人質解放へ交渉が進んでいるとの報道もあります。
■生活共同体が襲われ、約90人が死亡か
日本時間26日午後、イスラエル南部のベエリを訪ねました。
橋本雅之記者
「ガザ地区から約 5 キロの場所。多くのイスラエル軍の部隊が展開しています」
日本のテレビとして初めて、中に入ることが許されました。
橋本記者
「ハマスによって住民の 10%以上が殺害された集落です。住民らが攻撃以来、初めて戻ってきました」
ここは10月7日の朝、イスラム組織「ハマス」によって襲撃されました。キブツと呼ばれる生活共同体などが襲われ、イスラエルメディアによると約90人が亡くなり、約30人が今も行方が分かっていません。
■街に初めて戻り、立ち尽くす住民
襲撃以来、街に初めて戻ってきた住民のレイチェル・ベナコットさん(55)。黒焦げになり、骨組みがむき出しになった家を見て、立ち尽くします。「ここでギルさん(近所の人)が亡くなった」
ハマスは多くの住宅に火を放ち、シェルターに隠れていた住民らを外におびき出し、殺害したり誘拐したりしたといいます。
襲撃された際、レイチェルさんと家族は家の中にいました。
レイチェルさん
「みんなで床に座っていました。電気もなしで。(ハマスに)忍び込まれるのを防ぐために、1 人がドアをガードしていました。ただそのせいで、他の犠牲になった人たちを救えなかった。すごい罪悪感でいっぱいです」
■ハマスから街を守ろうとした弟が犠牲に
その犠牲者の1人が、別の家で暮らしていたレイチェルさんの弟、アリックさん。年も近く、双子のような姉弟だったそうです。アリックさんは自警団の一員として、ハマスから街を守ろうとしたといいます。
レイチェルさん
「弟を自警団として推薦したのは私でした。まさかここまでの悲劇が街を襲うとは思ってもいなかった。なんと言葉にして良いのか分かりません」
■イスラエル軍が新映像…柵を突破か
イスラエル軍は26日、新たに映像を公開しました。戦車のように見えるものが、柵を突破するような様子が映っています。周囲を柵で覆われたガザ地区に地上から入った瞬間でし
ょうか。
同軍は26日、ハマスが実効支配するガザ地区の北部で、「多数のテロ組織やインフラ、対戦車ミサイルの発射地区を攻撃した」と発表。イスラエルメディアは、今回の攻撃はこれまでで最大規模の作戦だとしています。
イスラエルのネタニヤフ首相が25日に言及したのは、ガザ地区への地上侵攻の準備でした。
「既に何千人ものテロリストを排除しているが、これは始まりに過ぎない。同時にガザ地区への地上侵攻も準備している」と会見で述べました。
ただ、その時期など詳細については明らかにしていません。
■国連機関「ガザには安全な場所がない」
そのガザ地区では 26 日も、イスラエル軍の報復による空爆がありました。北部の町は一変し、上空から撮影された写真で今月 10 日と 21 日の様子を見比べると、建物の多くが崩壊しているのが分かります。
連日続く空爆に、国連パレスチナ難民救済事業機関の報道官は「ガザ地区の中で国連の建物にいたら安全という認識は、もうありません。ガザ地区には安全な場所がないというの
が現実です」と話しました。
ロイター通信はガザ地区保健当局の発表として、これまでに 7000 人以上が死亡したと伝えています。
■「人質を多く解放へ」現地報道も
ガザ地区南部にある病院には25日、物資を運んだトラックが到着しました。
ガザ地区南部 寄付委員会委員長
「今日は9台のトラックがユニセフから来ました。積んでいるのは薬や医療器具です。しかし、これでも支援は全く足りていません」
一方、イスラエルの現地メディア「ハーレツ」は関係者の話として、「多くの人質を解放するための交渉が進行中」と報じました。
交渉に詳しい関係者からの情報だとして、人質の解放は数日以内に実現する可能性もあり、交渉の当局者は「2 日か、それよりも早くに合意することを望んでいる」ということです。
(10月26日『news zero』より)