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【シベリアで取材】肉球もそのまま… 解け続ける"永久凍土"  古代生物が伝える地球の危機

2023年8月19日 20:15
【シベリアで取材】肉球もそのまま… 解け続ける"永久凍土"  古代生物が伝える地球の危機

ロシア連邦の東に位置する、サハ共和国。冬には氷点下50度にも達する極寒の地ですが、地球温暖化によって深刻な変化が起きています。数万年もの間凍っていた"永久凍土"が解け続け、ライオンやサイなどの古代生物が発見される一方で、未知のウイルスの拡散が懸念されています。また、住宅地では地盤沈下による被害も…。

■冬には氷点下50度 東シベリア・サハ共和国

日本からおよそ1500キロ―――。NNNのカメラは7月、ロシア、東シベリアに位置するサハ共和国へと向かいました。人口約100万人で、夏を迎えていました。中心都市・ヤクーツクの市民が感じていたのは“ある異変”でした。

市民
「夏は暑くなってきました」
「昔は9月には氷点下になったけれど、今は11~12月にならないとそこまでなりません」

地球温暖化の影響が色濃く出始めているのです。冬には気温が氷点下50度に達するというサハ共和国は、日本の面積の約8倍。広大な大地のほとんどは、長年凍った状態の地盤、「永久凍土」に覆われています。

その「永久凍土」が、地球温暖化の影響で解け続けているのです。

■冷凍庫のようなトンネルを進むと…

そもそも「永久凍土」とはどのようなものなのか。ロシア科学アカデミー・永久凍土研究所の地下へと向かう階段を進みました。

東郷達郎・NNNサハ共和国
「地下への穴があります。滑りやすいから注意してくれとアドバイスがあります」
「完全に床は氷ですね」

地下15メートル。気温はすでにマイナス8度。冷凍庫の中のような寒さのトンネルを進んで行くと、研究員が足を止めました。そこにあったのが「永久凍土」です。

■表面 軽く触っただけで「ポロポロ」と

川の砂が1万2000年以上前に凍ったもので、水分が凍った部分が、キラキラと光っていました。許可を得て、触らせてもらうと…。

東郷達郎・NNNサハ共和国
「触ってみますとポロポロと落ちますけど冷たいですね。砂のように落ちます」

その5センチほど奥には、コンクリートのように硬い「永久凍土」があるといいますが、表面は乾燥して、軽く触っただけで崩れ落ちるのです。

永久凍土研究所・ムルジン研究員
「都市部の道路では地下2メートルくらいまで解けています」
「非常に急激に温暖化の影響を受けています」

取材したこの日は、気温が30度近くまで上がりました。都市部では、この50年で平均気温が3度以上上がっています。そのため「永久凍土」が解け、地盤沈下や侵食が各地で起きているというのです。

■4万3000年前…眠っているかのような姿で

「永久凍土」が解け、思わぬものも見つかっています。訪ねたのは、古代の動物を研究しているサハ共和国科学アカデミー マンモス研究所。「永久凍土」から貴重な動物が見つかっていました。

それは、絶滅した肉食獣、「ホラアナライオン」のオスの子どもです。

肉球もそのまま、眠っているかのような姿で4万3000年前に凍りついたものだといいます。

さらに、床にサイの骨が置かれた部屋にあったのは…

サハ共和国科学アカデミー プラタポポフ主任研究員
「世界にひとつしかないサイの剥製です。レプリカじゃない。毛も本物です」
「毛がはえたサイがいました。これがその証拠です」

3万3000年前に生きていたケナガサイ。氷河期の寒さをしのぐため、現代のサイとは違い、長い毛で覆われていました。

いま、相次いで発見されている動物もいます。マイナス温度の部屋に置かれていたのは、メスの子どものマンモスです。実はこのマンモスは、10年前の2013年に日本で、世界初の一般公開がなされました。

3万9000年の時を超えて、「永久凍土」から発見されたものです。

■眠れる“未知のウイルス”よみがえるリスク

「永久凍土」が解けることで、現代に姿を見せ始めた古代の動物たち。生物の進化の解明などに役立つ一方で、未知のウイルスや危険な病原体がよみがえるリスクも出ています。

2016年には、「永久凍土」から見つかったトナカイの死骸から「炭そ菌」がよみがえり、2400頭以上のトナカイが感染。住民24人も感染する事態となったのです。

■大地ボコボコ…かつては平らなサッカー場

さらに、「永久凍土」が解け始めたことで、人々の日常生活も脅かされています。

深刻な被害が出ているのは、チュラプチャ村。放牧が盛んな地域です。永久凍土の上に広がる緑豊かなこの地も、冬は氷点下の世界になります。

でこぼこの悪路が続く村の中でも、特に激しくでこぼこになった場所は、かつては平らなサッカー場だったといいます。原因は、地表から1メートル下にある「永久凍土」が解けたことでした。

■築5年なのに…「あと5年ほどでこの家は壊れる」

影響が出ているのは、住宅も。まだ築5年だという家を訪ねると、その部屋には地盤沈下によって、壁と床の間に数十センチもの隙間ができていました。

村人
「永久凍土が解けて床が落ちて隙間が空きました」
「あと5年ほどでこの家は壊れるでしょう」

実は「永久凍土」が解ける現象は、人の手で開発が行われた場所で進んでいるといいます。この村も、かつては森林伐採によって、飛行場開発が行われた場所でした。

■二酸化炭素やメタン放出 温暖化の加速懸念

北東連邦大学・ダニロフ主任研究員
「人間の活動によって変化した場所が気候変動の影響を強く受けるのです」
「(永久凍土は)解け続けています。解け始めたら数年では終わりません」

また、「永久凍土」が解けると、閉じ込められていた二酸化炭素やメタンが放出され、温暖化がさらに加速するとの懸念もあります。

解け続ける「永久凍土」。私たちの地球に深刻な危機が迫っていることを物語っています。

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