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ホテル待機7時間…中国「全人代」取材レポ

2020年5月29日 14:47
ホテル待機7時間…中国「全人代」取材レポ

中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)は、新型コロナウイルスの影響で厳戒態勢がとられています。関連会議を取材した記者はPCR検査を受け、結果が出るまでおよそ7時間、ホテルで隔離されました。NNN北京支局・古江正彦特派員の取材記です。

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全人代関連の取材初日となった5月20日。午前4時すぎに起床、支局を出発したのは午前5時でした。取材するのは国政の助言機関である「人民政治協商会議」の開幕前日会見。「人民政治協商会議」は1年で最も大きな政治イベントである全人代とほぼ同時に開かれるもの。中国では重要な会議が2つ同時に開かれることから「両会(2つの会議)」と呼ばれています。

今年は新型コロナウイルスの感染防止対策のため、中国政府が招待したメディアしか取材できません。しかも、早朝に集合し全員PCR検査を受ける必要があります。検査結果が出るまでに6~7時間かかるため、記者らは中国政府が用意したホテルで待機。検査結果が陰性だった場合のみ取材場所に向かうことができます。

私たちは事前に招待を受け取り、指定されたホテルに午前6時前に到着しました。そこに集まったのは中国メディアのほか、ロイター通信や韓国の通信社、キューバ・メディアといった海外メディア。日本メディアは私たちだけでした。ホテルの前に設置された簡易テントで順番にPCR検査を受けます。防護服を着た医療スタッフがのどの奥に、綿棒のようなものをいれて検体を採取。これがかなり苦しく、吐きそうになりました。

検査が終わると、ホテルのカードキーを渡され、それぞれの部屋に入りました。待つことおよそ7時間、ようやく連絡が来て会見会場に向かうことに。はっきりと検査結果が告げられたわけではありませんが、会場に行けるということは陰性だということなのでしょう。

7時間待たされて、会場に到着したのは会見開始の20分前。「7時間も時間があったのになんでこんな直前に」と心の声で叫びながら慌ただしく会場内に入りました。ここでも感染の防止対策が徹底されていました。会場に中国政府高官の姿はなく、そのかわり大きなモニターが設置され、高官の姿が映し出されます。人との接触を避けるためのリモート会見でした。メディアセンターの会場では人と人の距離が空けられ、ソーシャルディスタンスにも気を使っていました。

会見では経済の立て直し、今後の感染防止策、ウイルスの起源問題など新型ウイルスに関連する質問が相次ぎました。対立が深まる米中関係にも質問は及び、中国政府高官は批判を強めるアメリカに対し「中国を傷つけようとする企みが実現することはない」と強くけん制しました。

そもそも全人代は3月5日に開幕する予定でしたが、感染拡大により異例の延期となり、およそ2か月半遅れての開催となりました。全人代の開幕にあたり行われる首相演説では例年注目されてきた経済成長率の目標設定が見送られました。これまた異例なことが起きています。新型ウイルスの影響がいかに大きいのかを物語っています。

感染拡大は抑え込んだとしている中国ですが、いまだに第二波への警戒は続いており、数人ほどではあるものの、感染者は出続けています。経済を含め今後も影響が広がることが予想されており、コロナとの戦いはまだ始まったばかりなのかもしれません。