ペース鈍化“誤情報”発信者の影響も…米
アメリカでは、新型コロナウイルスのワクチン接種のペースが急激に鈍化しています。その要因の一つに、誤った情報を発信するインフルエンサーの存在が浮かび上がりました。
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先月、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンの前は騒然としていました。
越智慎一郎記者「NYでは、きょうからワクチン接種者だけが入れるコンサートが開かれていますが、目の前では激しい言い争いが起きています」
「新型コロナに感染したいのか!?」
「俺は実験台になんかならねえ!」
抗議しているのは、ワクチン反対派の人たち。
抗議デモ主催者「ワクチン接種の有無で差別することは間違っている。ワクチンはまだ緊急使用しか認められていません」
抗議デモの参加者の中にはこんな人も。
デモ参加者「インターネットで多くの人が、接種した腕にスマホやフォーク、メダルやスプーンがくっついたりしている。ワクチンに入っている成分があなたをゾンビに変えるらしいわ」
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実はアメリカでは、『マグネット(磁石)チャレンジ』と呼ばれる動画がネット上に数え切れないほど投稿されています。
Facebookより:ほら、腕にくっついた。ワクチンを接種したところよ。こっちが接種していない方の腕。私たちみんなにチップが埋められたのよ。
ワクチン接種で金属やマイクロチップが埋め込まれ、体が磁力を帯びるという根拠がない主張です。
ネット上には、ワクチン接種後に体が震え始めたと主張する動画も。
こうした動画が拡散し、ワクチンを拒否する人が増える要因になっているのです。
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なぜ、こうした誤った情報を信じてしまう人が多くいるのでしょうか?
アメリカの民間調査団体が調査をすると、その背後に誤った情報を発信するインフルエンサーの存在が浮かび上がったといいます。
デジタルヘイト対抗センター イムラン・アーメッドCEO「ネットで共有されている誤情報のうち65%、つまり3分の2が、たった12人により生み出され、拡散されたことが分かりました。偽の薬や漂白剤を使った偽の治療法、真実を教えるなどとうたって情報を売りつけるためにやっているのです」
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先月、オハイオ州の議会で証言した女性医師。彼女は、誤情報を拡散しているとされる12人のうちの1人です。
テンペニー医師「ワクチンを接種した先生の周りにいる多くの子供たちが、鼻血を出したり目が充血したりしています。私たちはワクチンに金属片が入っていると考えています」
調査団体によると、彼女は支持者らに反ワクチンのセミナーを開催して1人2万円ほどの参加料を徴収し、4000万円以上を荒稼ぎしたとも指摘されています。
さらに、こうした誤情報に影響を受ける学校も出てきました。
フロリダ州の私立学校では、ワクチン接種をしないよう生徒や教職員に求めたのです。
学校の責任者「ワクチンには人々を傷つける成分が入っているのです。私は自分の免疫システムを信じています。私の免疫はパワフルです」
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教育現場にまで及ぶ誤った情報の影響。
なぜ、人々は信じてしまうのでしょうか?
イムラン・アーメッドCEO「SNSでは誤った情報はより興味をもたれ、多くの人が見ます。そのため、アルゴリズムにより、正しい情報よりも有利となり拡散されます」
感情をあおる内容ほど広がりやすいというネットの特性が、誤った情報の拡散に拍車をかけてしまっているのです。
ここにきて、若者を中心に接種ペースが急速に鈍化しているアメリカ。
日本でもSNSを中心に、一部でワクチンに関する誤った情報が広がっていて、問題となりつつあります。