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不満持つ若者を“親中派”に…中国政府機関が“工作ツアー”開催 13日に台湾総統選挙

2024年1月11日 21:42
不満持つ若者を“親中派”に…中国政府機関が“工作ツアー”開催 13日に台湾総統選挙

13日に、台湾で総統選挙の投票が行われます。“台湾統一”を掲げる中国は、友好的な交流をうたって台湾の若者の取り込みを狙う“工作ツアー”を開催しています。

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中国メディアは先月、中国南部のリゾート・珠海(しゅかい)で観光を楽しむ台湾の若者たちの姿を報じました。

「12月4日、台湾の青年たちが期待を胸に海峡を越え、ここ大陸の珠海を訪れました」

実はこのツアー、主催しているのは中国の政府機関です。台湾の若者をターゲットにした“工作ツアー”の狙いはというと、13日に投開票が迫る台湾総統選挙です。

中国と距離を置く与党・民進党の頼清徳候補と、中国との関係改善を訴える国民党の侯友宜候補。「台湾は米中の架け橋となるべき」とする民衆党の柯文哲候補の、三つどもえの戦いになっています。

渡辺容代記者・NNN桃園(台湾・桃園市、6日)
「頼清徳氏が登場です。支持者らがものすごい熱気で迎え入れています」

選挙戦でカギを握るのは、投票率が高いとされる若者層です。ところが今、若者たちの間で与党・民進党への不満が高まりつつあるのです。

台北でメディア関係の仕事をする李家穎さん(31)は、去年、約2900万円の中古マンションを33年ローンで購入しました。月の収入は23万円ほどで、ローンを支払うとほとんど残りません。台湾では外食が一般的ですが、李さんは食事を自炊。スマートフォンの充電は会社でするなど、低賃金や住宅価格の高騰に苦しんでいるといいます。

李家穎さん(31)
「(民進党には)もちろんいいところもありますが、不満を持つ人もたくさんいます」

中国は、こうした閉塞感を抱える台湾の若者たちをターゲットに、中国へのツアーを開催し、「親中派」にしようとしているとみられるのです。

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その“中国工作ツアー”の現場を取材しました。

記者(中国・珠海、先月)
「一斉に食事の前に立ち上がって、スマホで料理を写真に収めている様子がうかがえます」

食後は観光スポットで写真撮影。旅費はおよそ6万7000円で、相場の半額ほどという格安設定です。翌日には中国で急拡大する電気自動車関連企業の見学も行われました。「台湾より圧倒的な経済力だ」とアピールします。

ツアーに参加した女性
「ここの経済の発展ぶりは、台湾人にとって、とても視野が広がります」

しかも若者たちの参加条件はSNSで動画などを発信していること。台湾で「中国推し」の情報を拡散させる狙いがあるのでしょうか。

ツアー主催者側(中国メディアSNSより)
「(台湾側は)誤った情報を押しつけているが、若者たちは目覚めた。台湾当局は若者が大陸に来るのを恐れているのです」

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さらに、ターゲットは他にもありました。中国へのツアーで、対台湾政策部門トップと面会しているのは、台湾のいわゆる町内会長など地元の有力者たちです。中国に招かれた町内会長らは、ロイター通信によると、去年だけで1000人以上とも報じられています。

ツアー中、中国側が親中派の「国民党候補への投票」を呼びかけていたとの証言もあります。

高雄市の町内会長 林浤澤氏(台湾・高雄市、9日)
「『国民党に投票せよ』とはっきり聞きました」

こうした中国の動きを強く警戒する台湾政府。ツアーに参加した町内会長ら556人が捜査対象となっていることを先月、明らかにしています。

中国の激しい「選挙介入」にさらされる台湾の有権者たち。13日投票の総統選挙でどのような判断を下すのでしょうか。