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支援物資「海に」溺死12人 飢餓寸前に…「もう限界点は超えている」迫る南部ラファへの“侵攻”

2024年3月28日 5:59

空から次々と落ちてくるのはガザ地区に向けた支援物資です。この物資が海に落下し、取りに向かった住民12人が溺れて死亡しました。そのガザ地区で活動する日本人は、多くの住民が飢えに苦しむ現状に「もう限界点は超えている」と惨状を訴えました。

パレスチナ自治区・ガザ地区の空に浮かぶ黒い点…。空からパラシュートで投下された“支援物資”です。多くの人が駆け寄りますが、一部が海に落下。

ガザ市民
「海に入って300メートル以上先の沖からこれを取ってきました」

泳いで確保に向かったという人や、中には…

「まだ生きている!」

溺れてしまった人も。パレスチナ自治区保健当局によると、12人が死亡したということです。

「急に飛行機が来て(物資を)海に投げ込んでいった」
「このやり方はダメです。ひどすぎる」

命の危険を冒してまで物資を取りに行くのは、人道危機が深刻さを増しているためです。ガザ地区の住民約4分の1が、飢餓寸前の状態にあるといいます。

イスラム組織「ハマス」とイスラエルの大規模な衝突が始まってから、まもなく半年。ガザ地区保健当局によると、これまでにガザ地区の死者数は3万2000人を超えています。

アメリカの戦争研究所は、イスラエル軍が北部での地上侵攻を続けながら、南部に向けても侵攻を展開していると分析しています。南部ラファには100万人以上が避難していますが、イスラエルはそのラファにも地上侵攻を行うとしています。

ラファではいまだに空爆が続いていて、町の医療センターでは…

避難してきた母親
「北部から避難してきました。以前受けられていた治療が今は受けられません」

看護師
「重度の栄養失調とガザへの攻撃のせいで状況はより悪くなっています」

“侵攻”が迫る町、ラファ―。先週からラファに入り活動をしているUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の清田保健局長に話を聞くことができました。

UNRWA 清田明宏保健局長
「だいたい(テント1棟に)十何人住んでいるので、とにかく重なるようにして寝る」

清田さんが撮影した映像には、街には無数のテントが映っています。

UNRWA 清田明宏保健局長
「だいたい4万人いるのに対し、トイレが16個しかない」

清田さんによると、現地ではすべての物資が不足し、飲み水は1人あたり1日500ミリリットルしかないといいます。また栄養失調の子どもが1割を占め、汚染された水でA型肝炎が流行しているということです。

UNRWA 清田保健局長
「皆さんの心が壊れているというのが、一番心に響いたこと。ある40代の男性は『私の体の中は全部壊れている』とか『もう明日のことは考えられない』『今日のことしか考えられない』とかですね。ここまで人間の尊厳、生きる希望、明日に向かって考える力を奪っていいのか、というのはものすごく感じました」

今後懸念されるラファへの“地上侵攻”については、次のように語りました。

UNRWA 清田保健局長
「もし本当にラファに侵攻されたら(住人は)『行くところがない』と。どこに逃げるんだって問うと、途方に暮れて『もう考えたくない』と。そのことを言われると『夜も眠れない』と言って非常に泣きそうな顔をしていた。本当に人間の我慢できる限界はとっくの昔に超えているのでは」

(3月27日放送『news zero』より)

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