未来の「水上都市」に“ココナツ”……日米取材 海面上昇の解決策は?
NEWSイチから解説、気候変動問題を日本テレビとアメリカの3大ネットワークの一つNBCニュースと一緒に考えます。
ことし5月末から6月にかけて日本テレビはSDGsについて、アメリカのNBCテレビは4月に気候変動問題について、キャンペーン報道を行いました。同じテーマでも日米で違ったアプローチがなされていてそれぞれの切り口から気候変動問題を考えます。
第1回は地球温暖化に伴う海面上昇についてです。海面上昇で、水没する危機を抱えた街とその対策を日米で取材しました。
インド洋に浮かぶ島国、モルディブ。地元の人たちが住む島を訪れてみると砂浜が浸食され根があらわになっています。
モルディブはおよそ1200の島からなり島の8割が海抜1メートル未満で、今世紀末には国土のほとんどが水没するおそれがあると指摘されています。
島の住民
「(浸食で)島は以前よりも小さくなっていますこの子たちの世代までは大丈夫だと思いますが、その次の世代には島がなくなるかもしれません」
モルディブでは今、世界から注目される壮大な計画が進んでいます。見えてきたのは楕円形の環礁です。広さは東京ドームおよそ50個分。ここに新たな「水上都市」を浮かべようというのです。海に浮いたたくさんのブロックの上に3万人が住む家ができるほか、商店や学校、映画館なども整備される予定です。
実際に浮かべられたモデルハウスに行ってみると、水辺のイメージで地面は砂になっています。
ブロックは補強された環礁の内側に設置されます。この環礁が防波堤のような役割を果たすため、揺れを感じることはほとんどないということです。
伸縮する柱で海底とつながっていて漂流を防ぐほか、将来、海面が上昇してもブロックごと上昇して都市が水没しない仕組みです。
上に立つ家の間取りは3LDK。屋上にバルコニーもついていて、販売予定価格はおよそ2800万円です。オランダの会社が政府と協力して進める「水上都市」は2027年に完成予定です
一方アメリカにも、海面上昇によって砂浜の浸食がすすんでいる場所があります。
北東部ニュージャージー州のネプチューン。ハリケーンの大きな被害を受けて以来、砂浜の浸食が進んでいます。
住民
「ここに住んでいる人はみな環境問題を懸念しています。」
美しい砂浜を守るために並べられている、丸太に見えるものは「ココナツ」です。インドやスリランカで採れたココナツから必要なオイルなどを抽出して残った廃棄物の繊維なんです。
アメリカに輸出され、海面上昇対策に役立っています。
アメリカ沿岸協会担当者
「ココナツの繊維は天然のもので、最終的には草が生えるようにビーチを安定させるという役目を終えたら消えてしまいます。自然にかえるのです。ですから私たちの目標はできる限り、自然のプロセスを再開させ、仕事の足跡を残さないようにすることです。」
アメリカでは他にもペンシルベニア州ではココナツを使って汚染物質が水路に流れこむのを防いだり、テキサス州では湖の浸食を防いで森が再生しているなどの例もあります。自然が再生した後も、ココナツはコンクリートのように残らず、土に還るというのも大きな利点です。
世界気象機関によると年平均4.62ミリずつ海面が上昇していて、上昇幅は90年代初めから10センチとなります。
NASAが測定値を基に作成し先月公開したアニメーションでは、93年からゆっくりと海面が上がっていきます。2013年で5センチを超えて・・・以降はペースアップ、2022年には10センチを超えました。
ハワイでは、2030年に観光地で有名なハナウマ湾の砂浜が満潮時に88%水没する可能性があるとされています。
また、日本でも、海面が1メートル上昇すると、全国の砂浜の9割以上が失われるとされています。
海面上昇によって、住む場所が奪われますし、津波や高潮など災害の危険性も高まります。原因とされているのが地球温暖化です。
国連のグテーレス事務総長は、「人類は薄氷の上にいて氷は急速に溶けている」「過去半世紀の気温上昇率は2000年間で最も高くなっている」「二酸化炭素の濃度は少なくとも200万年間で最高」「気候の時限爆弾が時を刻んでいる」と警鐘を鳴らしています。
日本は温室効果ガスを2030年度までに46%削減し、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げていますが地球規模の対策は待ったなしの状況です。