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【解説】潜水艇…酸素量は“残り約1日分” 「ナゼ不明に?」考えられる2つの原因… 

2023年6月21日 21:00
【解説】潜水艇…酸素量は“残り約1日分” 「ナゼ不明に?」考えられる2つの原因… 

豪華客船「タイタニック号」の残骸を見に行くツアーの潜水艇が消息不明になってから、日本時間21日夕方の時点で、約3日が経過しました。潜水艇に残っているとされる酸素の量は約1日分。必死の捜索が続いています。

◇迫る命のリミット
◇水中から“音”
◇考えられる2つの原因

以上の3点について詳しくお伝えします。

■潜水開始から1時間45分後…消息不明に

1912年に大西洋で沈没した「タイタニック号」を実際に見てみようと、小型の潜水艇で向かう観光ツアーがあります。アメリカの民間会社が1人「25万ドル」、日本円で約3500万円という超高額で行っています。

潜水艇の名前は「タイタン」と言います。乗客のツイートによると、現地時間の18日午前4時ごろに潜水を開始しました。そこから、約2時間半でタイタニック号までたどり着く予定でした。ところが、約1時間45分後に消息を絶ちます。

潜水艇「タイタン」には4日分、つまり96時間分の酸素が積まれていて、緊急事態に耐えられるように設計されているそうです。しかし、消息不明から約72時間が経過していて、残されている酸素は「約1日分」という厳しい状況です。

■5人の搭乗者…沈没現場に35回「ミスター・タイタニック」も

この潜水艇には5人が乗っています。海外メディアの情報をまとめると、過去に民間での宇宙旅行も経験したイギリスの富豪で冒険家のハーディング氏(58)、イギリス系パキスタン人の実業家ダウード氏(48)と、その息子(19)。フランス人の探検家ナルジョレ氏(77)は、タイタニック号の沈没現場へ35回以上向かい「ミスター・タイタニック」と呼ばれています。そして、操縦していたこのツアーの運営会社「オーシャンゲート」の最高経営責任者ラッシュ氏です。

タイタニック号は1912年、当時最大の客船として製造され、イギリスからアメリカへと向かいました。その初航海の途中に氷山に衝突して、沈没してしまいました。乗客乗員1500人以上が亡くなる悲劇として伝えられています。当時撮影された船内の写真を見ると、レストランだけでなくプールやジムも完備するほど、豪華な船でした。

海に沈んでいる現在も、内部が見られるようです。今回、消息不明になっている潜水艇のツアー会社が公開している映像では、111年前に沈没し、水深約4000メートルの深海に眠っているタイタニック号の姿を見ることができます。

運営会社が「シャンデリア」と言っている場所を見ると、シャンデリアが2つあるようにも見えます。かなり朽ちているようで、さすが100年以上たっていることをうかがわせるようでした。

■水中から音が…発生した場所の特定には至らず

地図で確認すると、タイタニック号が沈んでいるのは、カナダのニューファンドランド島の南に約700キロいったエリアの海底です。そして、潜水艇が消息不明になったのは、ニューファンドランド島から南に約650キロのエリアです。

    ◇

現在、複数の国々による大規模な捜索が行われています。その拠点の1つ、アメリカ東海岸のボストンにいる記者から現地の様子を伝えてもらいます。

NNNボストン・橋本雅之記者(現地時間21日午前3時40分ごろ)
「捜索を行っているアメリカの沿岸警備隊の拠点があるボストンです。現地の時刻は(日本時間午後4時あたりで)午前3時半を過ぎたところですが、現在も24時間態勢で懸命の捜索活動が続いている状況です。現地メディアも何か動きがあった際には、速報で伝えられるよう(機材を設置しておくなどして)スタンバイを続けています」

「こうした中、アメリカのCNNは先ほど『現地時間20日の捜索中に水中からものを激しくたたくような音が30分おきに聞こえたことが、アメリカ政府の内部文書で明らかになった』と速報で伝えました」

「アメリカ政府の内部文書では、今回聞こえた水中からの音について『生存者がいることを示す継続的な希望なんだ』と記しているということです。ただ、この音について具体的にどれくらいの長さのものだったかは不明だとしています。また、沿岸警備隊によると、カナダの航空機が水中ノイズを検出し、ノイズの発生源を探るため、探査機による捜索を行ったということです。ただ、これまでのところ発見には至っておらず、捜索活動は難航していると言わざるを得ません」

■潜水艇…“手作り”だった? 2018年には安全性に“警告”も

潜水艇はなぜ消息を絶ってしまったのか。

東海大学海洋学部の山田吉彦教授に聞いたところ、考えられる原因は2つあるといいます。

1つは「電気系統の故障」です。この手の潜水艇はすべて部品を寄せ集めた“手作り”で、たとえば操縦かんがゲームのコントローラーなどを寄せ集めて作っていて、意外と電気系統やコンピューター系が弱かったりするそうです。電源喪失をしている可能性があるといいます。

そして、アメリカのニューヨークタイムズによると、2018年の時点で、30人以上の専門家がこの潜水艇の安全性について「懸念」を示していて、運営会社に警告をしていたという報道もあります。

原因の2つめは、「衝突などのトラブル」があったのではないかといいます。水深4000メートルの世界は視界が数メートル先しか見えず、タイタニック号に近づこうとするあまりに、ぶつかったり、ひっかかったりしてハマってしまった可能性が十分考えられるといいます。

■水深4000メートルで捜索…可能なのは世界に「数隻」

山田教授によると、水深4000メートルを捜索できる潜水艇は世界で数隻しかないといいます。しかも、深海4000メートルでの作業は非常に難易度が高く、この海域まで運ぶのも非常に難しい、救出は極めて困難なものではという話もしていました。

ただ、希望もあります。水中から聞こえたという「音」に加えて、山田教授は「船は自力で浮上する可能性がある」とも話していました。潜水艇には「おもり」がついていて、自力で外すことができれば海面まで浮上してくることはできるのではないかということです。

    ◇

時間は刻々と過ぎていきますが、各国から派遣された捜索隊が、懸命の作業を続けています。そして「水中からものをたたく音が聞こえた」という新しい情報も入ってきました。何とか希望を持ちながら、見守りたいと思います。

(2023年6月21日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)