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「少子化」進む中国 “結婚離れ”の若者に大学が“恋愛”の授業も… 経済的負担が理由も富裕層は子育てに金を惜しまず

2023年7月13日 21:39
「少子化」進む中国 “結婚離れ”の若者に大学が“恋愛”の授業も… 経済的負担が理由も富裕層は子育てに金を惜しまず

少子化が進む中国は今年、人口がインドに抜かれるとされています。結婚する若者も減り、出生率も下がり続けています。こうした中、少子化に歯止めをかけるため、様々な対策が打ち出されています。

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武漢の大学で撮影された写真に写っていたのは、満員の教室から人があふれている授業の様子です。窓の外側にも多くの学生が集まっていて、バルコニーに上って授業を受けようとする学生もいました。この授業は、“恋愛の手ほどき”を教える授業でした。

中国・国立大学の准教授(中国SNSより)
「愛には学習が、幸福には練習が必要です」

上海の名門大学の准教授が講義していたのは、“出会いから告白までのイロハ”です。

中国・国立大学の准教授(中国SNSより)
「まずはグループでの活動に3回一緒に参加する。次に2人だけの活動を2回行い、最後に恋人だけがやることを1回行う。君たちはこれらを行ってから告白すること」

中国では、大学でこうした「恋愛」をするための授業が各地で行われています。背景にあるのは若者の“結婚離れ”です。

去年の婚姻件数は683万3000組で、過去最低を更新しました。ピーク時のほぼ半分まで落ち込んでいます。

その理由の一つとされるのが、結婚にまつわる習慣です。中国の男性は女性に現金や家などを贈りますが、若者にとっては経済的に大きな負担となっています。

さらに、子育てをめぐっても金銭的な問題があるといいます。

中国では、出産直後に母親が体を休めるために1か月ほど休むのが一般的で、そのための施設もあります。最近は、「至れりつくせり」のサービスが受けられる高級施設の需要が高まっているのです。

記者
「母親がまるで高級マンションの一室で生活するように過ごせる。赤ちゃんは、専門のスタッフが24時間つきっきりでお世話をしてくれます」

施設の費用はひと月140万円から200万円。1日6食の食事のほか、ヨガやエステティックといったサービスも提供されます。

2児を出産した母親(36)
「(第1子が)生まれたばかりの時は体力不足で、夜に2時間ごとの授乳がまるで悪夢、とてもつらかった。ここは専門のスタッフが、私1人のためにサービスを提供してくれる」

産後ケアセンターの社長
「経済発展とともに高学歴や中産階級の女性が増えた。彼女たちは自分にこだわりを持ち、子どもにもこだわりがあります」

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母親の高級志向は、子供服の市場でも見られます。中国で60以上の店舗を展開するミキハウスでは、売れ筋の靴は2万円から3万円だといいます。

買い物客
「きょうは靴を2足買いました。子どもが履き心地がいいかどうかが重要です」
「品質がいいので好きになりました。孫のために購入します」

さらに、約8万円のブラウスなど、素材や製法にこだわった高級シリーズも富裕層を中心に大人気だといいます。

ミキハウス上海店長
「自店のお客さまの場合は、まず日本製の商品。一番いいものを求められるお客さまが多かったです」

買い物客
「(子どもにかける費用は1か月)多ければ1~2万元(20~40万円)。自分が産んだ子どもにかけるお金は惜しくありません」

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子育てにかけるお金を惜しまない富裕層。一方で、経済的な負担から結婚・出産を敬遠する若者が増えていて、去年の出生数は建国以来、初めて1000万人を下回りました。

若者
「私は子どもは欲しくない、お金がないから」
「一定の経済力を持たない限り、結婚はするが子どもはつくらない」

歯止めかがからない少子化。

中国 習近平国家主席(去年10月)
「出産・子育て支援体制を強化する」

かつて「一人っ子政策」などで出産を制限してきた中国は今、いかに子どもを増やすかという課題に直面しているのです。

北京では、初めて今月から一部で、不妊治療が公的医療保険の適用対象になりました。

北京の病院の医師
「以前に比べ(不妊治療の希望者は)継続的に増加している。医療保険の対象になれば、それはもちろん良いことです」

かつて人口を抑制していた中国。それを大転換する“異次元の対策”で少子化を食い止めようとしています。