「おやつってかわいい」30歳のインフルエンサーが地元で始めたおやつ屋さん 岐阜・多治見市
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岐阜県多治見市にオープンして5か月。午前中には売り切れてしまうほど人気の「おやつ屋さん」が話題と人を街に呼んでいます。
岐阜県多治見市の陶都創造館の中にある「おやつ創房優」
小さなカップに生地を流し込み…甘く煮たリンゴやブルーベリー、クリームチーズなどをこぼれんばかりにトッピングしてオーブンへ!焼き上がったのはふんわり膨らんだマフィン!
こんがりと焼けた表面から、たくさんの具材が顔をのぞかせます外はサクッと中はふんわり。ホロッと崩れそうな見た目が食欲をそそります。
「おやつってかわいい」と作ったマフィンを我が子のように愛しているのは、店主の佐藤優子さん(30)。
去年10月にこの店をオープンさせました。営業は土日だけ。午前中で売り切れることもある人気店です。
この店の商品はすべて米粉を使っています。マフィンだけでなくスコーンもシフォンケーキもベイクドチーズケーキもすべて米粉。
「米粉を使ったお店があまりない。もちもち感がすごい好き」とお客さんからも好評。素朴でオシャレな店内はインスタ映えもするとカメラを持って来る人もいます。
このお店のお客さんの約半数は「SNSを見てきた」という人。実は佐藤さんSNSの総フォロワー数がおよそ14万人いる料理研究家。平日はSNS用の動画の撮影や企業へのレシピ提供を仕事にしています。
今でこそ、料理研究家として活躍していますが、ここまで来るのは簡単ではありませんでした。
多治見市で生まれ育った佐藤さん。高校卒業後は金沢の大学で建築デザインを学んでいましたが、就職を考える頃、生き方にギモンを感じていました。
佐藤優子さん:
「みんなと同じようにポートフォリオ(作品集)作成して就職するという流れがどうも腑に落ちなくて。自分やったらなんか一人でもできるって思い込んでいたんですよ」
自分の力で何かをしたい。そう思った佐藤さんは料理の道に進むことを決意します。
金沢市内の飲食店などでアルバイトをしながら勉強。朝が早かったり休みがなかったりする仕事は精神的にも体力的にも辛かったそうです。
この時期、心の支えだったのが“師匠”と仰ぐ長野一朗さん。金沢市でおかゆのお店を営んでいて、「あなたならできる」といつも佐藤さんを励ましてくれていました。
新型コロナが流行し飲食店の経営が厳しくなり始めた頃、YouTubeチャンネルを開設。レシピ動画などの投稿を始めます。
チャンネル名でもありお店の名前になっている「創房優」は、長野さんが名付け親。6畳一間の家から配信していた事から「小さな部屋(房)で優しい物(優)を創る」という思いが込められています。
しかし、そう簡単にうまくいくはずはありません。2年間、収益はほぼなし。仕事をしながら夜や土日にお菓子を作る毎日。
佐藤さん:
「再生数が伸びないと心が折れるんです。自分はみんなと違う道を歩んだので、それが間違いじゃなかったと思えるように正解を見つける」
諦めずに投稿を続ける中で見つけた正解が「米粉のおやつ」でした。
佐藤さん:
「米だったら、アレルギーの発症率も少なくてみんなで楽しく食べられる食材だって思うときがあった」
これが大ヒット!米粉のおやつレシピは瞬く間に人気となり、去年、レシピ本を出版するまでになりました。
順調にSNSのフォロワーが増える中、「自分のお店を持つ」ことを考え始めた佐藤さん。選んだのは生まれ育った多治見でした。
佐藤さん:
「新しいお店が増えていることに未来を感じた。私も加われたら嬉しいな」
今お店のある本町オリベストリートは古民家を生かした新しいお店ができつつある市内の観光スポットのひとつ。
地元を離れて10年がたち、見慣れたはずの街の変化にビジネスチャンスを感じたのです。
一時は「消滅可能性都市」にも選ばれていた多治見市。街ににぎわいを作り出すべく、2018年から「たじみビジネスプランコンテスト」を開催。
最大賞金300万円というのも魅力で、市内で起業したい人が県外からも参加。多くの店舗やビジネスがここから誕生しています。
佐藤さんも「たじみビジネスプランコンテスト2023」に参加。おやつ屋さん出すことで、自分のSNSフォロワーに来てもらい、そこから多治見ににぎわいを創出したい。そんなプランが評価され見事グランプリを獲得。
賞金300万円も活用し、去年10月に「おやつ創房優」をオープンさせました。金沢時代から支えてくれた長野さんも泣いて喜んでくれたそうです。
佐藤さん:
「多治見がすごく肌に合っていて落ち着く。また来たくなるような長く続くお店にしたい」
素朴で優しい米粉のおやつから始まる街のにぎわいがこれからも広がっていくのでしょうか。