82歳女主人「いつかはキリを」老舗銭湯が年内で休業へ 創業60年の歴史に区切り 山梨
創業60年の老舗銭湯が、その歴史に区切りをつけます。燃料高騰や後継者不在を理由に今年いっぱいでの休業を決め、常連客から惜しむ声が聞かれます。
甲府市緑が丘にある銭湯「緑が丘温泉」です。1964年の創業以来、この場所で60年以上、営業を続けてきました。
泉質は透明な塩化物泉。体が温まり神経痛や冷え性などに効くとして、市外から湯治に訪れる人もいるといいます。
店を切り盛りするのは82歳の藤巻ひろみさん。父から温泉を受け継いで2代目になりますが、この60年、経営は簡単ではなかったと振り返ります。
緑が丘温泉 藤巻ひろみさん
「『もう少しお金をもらったほうがいい』というお客さんもいる。お金をもらうということは大変。お客さんがたくさん入ると喜びは感じる」
風呂のある家が珍しかった時代はいまや遠い昔。 コロナ禍では利用者が半減した一方、 燃料や電気代、人件費は上がり続けました。一度は昨年度中の営業終了も考えたといいますが、常連客の声に引き止められ、踏み切れませんでした。
ただ、けがなども重なり、寄る年波には勝てないという藤巻さん。後継者も見つからず、ついに年内で休業するという案内を軒先につるしたといいます。
緑が丘温泉 藤巻ひろみさん
「いつかはキリを付けようかと思っていた。主人も年が90だし、わたしも80過ぎているし体が大変ですよ。接客業も大変ですね。今年いっぱいと、キリを付けて決断をした」
営業開始の午後1時。この日も次々と常連客がやってきました。
常連客は
「風呂が壊れたから来てみたら、『いい温泉だ』だと。みんな仲間になりますね。知っている人が大勢できたから楽しい。(休業は)さみしい」「休みの日に来て、ぬるい風呂にじっくり浸かると疲れもとれる。残念で誰か受け継いでくれる人がいないかな、という思い」
緑が丘温泉 藤巻ひろみさん
「さみしいことは、さみしい。今までも同じように意気込んできたから(残り1か月半も)変わらない。同じようにせっせと意気込んでいく」
休業は跡継ぎが見つかるまでの区切りだという藤巻さん。来年以降は週末の限定営業を検討するとしています。