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滞在27時間 1泊3日のアメリカ弾丸訪問…「初づくし」会談の裏側

2023年8月19日 20:00
滞在27時間 1泊3日のアメリカ弾丸訪問…「初づくし」会談の裏側

「新しい時代の幕開け」と宣言された、日米韓首脳会談。日本外交団は1泊3日、滞在27時間の弾丸日程でした。会談の狙いは? “なぜ、あれは…”のギモンに答えます。

■“初づくし”会談…「キャンプ・デービッド」選んだバイデン大統領の狙いは?

3首脳がそろって「新しい時代の幕開け」と宣言した日米韓首脳会談。ある外務省幹部は「『初づくし』の会談」と異例ぶりを強調した。

1つ目の「初」は、会談場所。

バイデン大統領が選んだのは、首都ワシントンDCでなく、大統領の別荘「キャンプ・デービッド」だった。バイデン大統領が外国首脳を別荘に呼んだのは、就任以来「初」。首都ワシントンDCから北西に100キロ、車で2時間ほど離れたキャンプデービッド。日本でいえば、軽井沢の別荘地といったところか。アメリカ側は「最も重要な会談にしか使われない」(米政府高官)と強調、日本側は「大統領のおもてなし」(官邸関係者)と歓迎した。

2つ目の「初」は、会談の形式。

日米韓3カ国の首脳が国際会議以外で、この会議のためだけに集まるのも「初」。「このためだけに、わざわざ太平洋を渡って集まるってことに意味がある」(官邸関係者)のだという。バイデン大統領の狙いについて日米外交筋は、来年大統領選を控え「自分の責任で日米韓を動かした。対中国、対北朝鮮政策で抑止力を高めるという国内向けのアピール」の意味があると分析している。

■一番やりたかったのは誰? 「日本よりアメリカ・韓国が気合が入っていた」

今回の取材で浮かび上がった“素朴な疑問”について考えたい。

〇素朴な疑問<1>「一番やりたかったのは誰?」

複数の関係者に「3カ国会談、一番やりたかったのは誰?」と聞いた。

「アメリカが前のめりな感じはあった」(外務省関係者)
「今回は、日本よりアメリカ・韓国が気合が入っていた」(日米外交筋)

複数の外交関係者が「日本より、アメリカ・韓国が前のめりだった」と声をそろえた。それはなぜなのか? ある米政府高官は、日韓関係の改善に向けて「バイデン大統領は、この数年プライベートな多くの関与をしてきた」と説明。「中国と向き合う中で、基盤となる『日米韓の基軸』を固めることができた、という思いが強い」(日米外交筋)との声が出ている。

■なぜ? 処理水話題にならなかった…「あうんの呼吸」(政府関係者)

〇素朴な疑問<2>「なぜ? 処理水について日韓で話さない」

今回の首脳会談では安保面での協力が大きく打ち出される中、日本政府が直面している課題「処理水」の話が、尹大統領との会談で出るのかが注目されていた。特に、韓国国内で反発が強い尹大統領に、岸田総理がどんな言葉で説明するのか?が気になっていた。しかし、会談前から複数の政府関係者が「処理水は議題にならない」と話していた。

放出を目前に尹大統領とせっかく会うのだから「近く、放出しますよ」と「“仁義切り”をするのでは?」という見方もあった。しかし、会話はなかった。理由についてある総理周辺は「尹大統領の考えはすでにわかっている。会談で議題にすれば逆に尹大統領に対する国内の反発を助長する」と説明している。

つまり、尹大統領を追い込む事態になるから“あえて”話さなかったという説明だ。ある外務省幹部は「そこは、あうんの呼吸」だ、と解説している。

■なぜ? 強行弾丸日程…「次は処理水、時間がない」

日本ーアメリカ間の往復フライト時間およそ26時間。ワシントンの滞在時間27時間。同行した外務省関係者からは「どうせなら、もう1泊してから帰ればよかったのに」「初日は夜に到着し寝るだけ、2日目は朝から飛行機に乗るまで働き続け、シャワーに入る時間もなかった」など悲鳴に近い声があがっていた。

弾丸日程に、岸田総理に「お疲れは?」と聞いたところ「『いまのところ』疲れはない」と語っていた。

帰国直前、「20日に福島を訪問する」と発表した岸田総理。それを聞いた政府関係者は「次は処理水の放出にむけての調整が待っている。岸田総理にはアメリカにもう1泊する暇も、余裕もない」と語った。