防衛力の抜本的強化へ…自衛隊が直面する“課題”
防衛力の抜本的強化を目指す政府。しかし自衛隊は今、ある課題に直面しています。航空自衛隊のパイロット育成を取材しました。
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午前6時。急いで身支度を済ませ、猛ダッシュで移動。男子学生は上半身裸です。点呼や体操を終えると…起きてからわずか5分。始まったのはおよそ2キロのランニング。
ここは山口県にある航空自衛隊・防府北基地。日々訓練に励んでいるのは、パイロットを目指す学生。
Q 「志望は?」
「ここみんな戦闘機」「救難機。希望してます」
ほとんどが高校を卒業したばかりの若者です。徹底した指導が分刻みで続く航空学生の生活。全ては、パイロットに必要な体力、そして、ある“重要な能力”を養うためです。
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今年4月に入隊した菅浩太朗さん。
菅浩太朗2士(19)「F15J戦闘機に乗りたい」
空が舞台の“アニメ”をきっかけに「人を守るため空を飛びたい」と戦闘機パイロットを目指しました。
学生らが授業を受けている間、教官が行ったのは学生の部屋の抜き打ちチェック。菅さんが畳んだ毛布は…。
助教・知念3曹「ここがちょっと汚い。しっかり真っすぐになっていない」
少しのズレも許されない世界。再び上官に、原因と改善策を報告しなければいけません。
菅浩太朗2士(19)「入ります!」「原因といたしましてはスピードを意識するあまり、丁寧さに、丁寧さに対する配慮が欠けていたことです」
別の学生も…。
1年生「原因といたしましては…」
助教・知念3曹「理由も分からずに来たのか、おまえは」
1年生 「いえ!…」
言葉につまってしまいました。
助教・知念3曹「小さいミスがどうなる?」
「事故の原因になります!」
助教・知念3曹「国民を守る立場がおまえ、国民を傷つける可能性があるんだよな。おまえたちが事故ったせいで飛行機が落ちるんだよな」
小さなミスが命取りになるパイロット。訓練を通じ細かいことに気付く力や冷静な判断能力を養いますが、去年は、学生の4割程度が最終的に「適正がない」と判断されるなどして、別の道に進んでいます。
指導にあたる小原中隊長「パイロットを育てるのは一朝一夕ではできません。厳しい状況の中、目標をクリアさせていくそこには非常に困難な道があります」
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長い時間がかかるパイロットの育成。しかし、航空学生の志願者は少子化などを背景に年々減少しています。昨年度は、10年前と比べ、およそ4割に落ち込みました。自衛隊の元幹部は…。
パイロット出身・岩崎茂元統幕長「自衛隊全体として非常に深刻な問題だと思っています。優秀な人材確保という観点からすると問題が出てくるかもしれない」
必要な隊員数に加え、人材の“質”の確保が課題になると指摘します。
菅浩太朗2士(19)「自分も成長してちゃんと使えるパイロットになって…ちょっとすみません」
突然聞こえた国旗降納の合図。菅さんは国旗の方向に向き姿勢を正しました。
防衛力の強化に必要な「質の高い人材」。ただ防衛費を増やすだけでなく、人材確保の課題を乗り越える必要があります。
(防衛省クラブ・増田理紗)