焦点は2位争い?「総裁選」3候補の違い
自民党の総裁選挙が8日、告示されました。
菅官房長官が圧倒的優位と言われる中で、この総裁選のどこに注目すべきか、解説します。
■3候補のプロフィール
8日、立候補を届け出たのは以下の3人です。
石破茂元幹事長(63)は鳥取県出身。父親も元国会議員の二世議員です。趣味は鉄道と70年代アイドル。
岸田文雄政調会長(63)は広島選出。父・祖父も国会議員だった三世議員です。趣味は野球チーム・カープの試合観戦。
菅義偉官房長官(71)は秋田出身。世襲でない、たたき上げです。趣味は渓流釣りとウォーキング。
菅さんが総理になれば秋田県出身で初めてで、法政大学出身としても初となります。
■政策の違いは?
石破氏のキャッチフレーズは「納得と共感」。安倍総理との政治姿勢の違いを強調しています。国民の政治への「納得と共感」が大事だと訴えています。
菅氏は「安倍政権の継承」を旗印に出馬しているので、基本、安倍政権と政策は同じです。行政のデジタル化を進めるため「デジタル庁」の新設などを訴えています。
岸田氏は「分断から協調へ」。経済や社会の分断が深まりつつあると主張していて、格差の是正を訴えています。
■「アベノミクス」への見解
同じ自民党なので基本的には政策が大きく違うわけではありませんが、経済への姿勢には違いがあります。
アベノミクスについての見解をそれぞれ次のように述べています。
石破元幹事長
「東京の負荷を軽減するということ、地方に雇用と所得を実現するということ。この2つを国のあり方を、設計図を見直すという観点から変えていかねばならない」
菅官房長官
「(Q:アベノミクスは格差を生んだ?)まったくないと思っている。アベノミクスは日本の経済をよみがえらせたと思っている」
岸田政調会長
「中小企業や地方にも成長の果実が届くんだと言い続けたが、残念ながら7年間まだ届いてないという状況がある。そして結果として格差が生じてしまっている」
菅氏はアベノミクスを前進させていくと。岸田氏は「格差が拡大した」として、中間所得層への住宅や教育支援の強化を訴えています。石破氏は地方重視の路線を打ち出していて、東京一極集中を改め、地方主導の経済発展と、内需主導型経済への転換を図るとしています。
■外交の経験に違い
外交はそもそも同じ政党の中で対立軸を打ち出しにくいため、ほとんど主張に変わりはありませんが、経験には違いがあります。
岸田氏は長く外務大臣をつとめ、当時のアメリカ・オバマ大統領の広島訪問実現など、外交の実績をアピールしました。
石破氏は防衛大臣時代に防衛外交の舞台もこなしてきました。
一方、菅氏は外交舞台での経験は乏しいです。官房長官として内政を中心にやってきた政治家なので、外交が心配という声もあります。
アメリカのワシントンポストは菅氏について「外交の専門家としては知られていない。控えめな性格は安倍首相が築いたアメリカ大統領との関係性の障壁となる可能性がある」としています。
■小泉環境相は石破氏ではなく菅氏を支持
今回の総裁選は、394票の国会議員票と141票の地方票、合わせて535票で争われます。
国会議員票について、菅氏は既に党内の約7割を占める5つの派閥から支持を得ていて、圧倒的優位に立っています。それだけに8日、菅氏の出陣式は都内のホテルの一番大きな会場で行われ、自民党の大物議員が続々と菅氏の応援に駆けつけました。
中には小泉進次郎環境大臣の姿もありました。小泉大臣は、安倍総理と石破氏が争った前回の総裁選で、石破氏を支持し、今回も当初は河野太郎氏を支持していましたが、菅氏支持となりました。
小泉進次郎環境相
「菅さんは改革だけではなくて、大胆な改革をする思いを持っている方だと思うので、そういった改革に期待したい」
小泉環境相は、菅官房長官と選挙区が近く、世話になっています。政策の相談もしています。滝川クリステルさんとの結婚のときも、官邸の菅氏に報告にいきました。
■焦点は2位争い
いまの焦点は、石破氏と岸田氏、どちらが2位になるか。特に岸田氏は2位でないとダメなのです。
岸田氏は派閥の人数でいえば石破氏より多いです。自分の派閥より少ない石破氏に負けると、党内での影響力が大幅に低下するとみられています
ある自民党幹部は「石破対岸田で石破が勝つようなことがあれば、岸田は次は無役になる可能性がある」と話しています。
こうした背景を踏まえて注目すべきは、7日の森元総理の次の発言です。
「岸田さんはこれから次の次の大事な大事な日本の政治の中心になる方。立派な成績を出してあげなきゃならん」
これは、岸田氏が石破氏に負けないようにしなければならないというメッセージです。
石破氏は安倍路線を批判する立場ですから、石破氏が勢いづくと現在の党のパワーバランスが変わります。そうならないように、という狙いがあります。
岸田氏としては、国会議員票の上積み、さらには石破氏が強いとされる地方票でどう戦うか。いままさに激しい駆け引きが行われています。
今回の総裁選、安倍政権で積み残された課題について、実のある議論をしてほしいです。
(2020年9月8日 16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より