東京“緊急事態”…五輪「無観客」のため?
東京に4度目の緊急事態宣言が発出される見通しとなりましたが、「五輪を無観客で行うための理由付けでは」という見方が出ています。専門家が無観客を求め、五輪を懸念する世論があったという事情もあります。政府の判断の背景を探りました。
■“まん延防止”は「無観客」できず
有働由美子キャスター
「ここに来て4度目の緊急事態宣言ということになりましたが、背景にはどんなことがあるのでしょうか?」
小栗泉・日本テレビ解説委員
「もちろん新規感染者の増加はありますが、『オリンピックを無観客で行うための理由付けになったのでは』という見方があります」
有働キャスター
「どういうことでしょうか?」
小栗委員
「菅首相はこれまで、『オリンピックは特別視しない』『他の大規模イベントの開催制限と同じ基準にする』と言い続けてきました。となると、『まん延防止等重点措置』を延長しただけだと、定員の50%以下、上限5000人の観客を入れることになります」
「ただ、政府分科会の尾身会長が7日に国会で『無観客が望ましい』という考えを改めて示すなど、専門家から無観客を望む声が多くありました」
有働
「『まん延防止』のままだと無観客にはできませんね」
■緊急事態なら首相周辺「スッキリ」
小栗
「さらに、4日に行われた東京都議会議員選挙では、自民党幹部が『惨敗』と漏らす結果になり、『新型コロナウイルスの感染拡大と東京オリンピックへの懸念が逆風になった』という分析が自民党幹部から出ていました。『菅首相は落ち込んでいた』という周辺の証言もあります」
「そこで注目されたのが、菅首相がこれまで示していた『緊急事態宣言が出ている場合は無観客での開催もあり得る』という考えです。大規模イベントが原則無観客となる緊急事態宣言を出せば、無観客を望む専門家にとってもOK、これまでの判断との整合性を重視する首相周辺にとっても『スッキリする』というわけです」
■辻さん「迷わないメッセージを」
有働
「4度目の緊急事態宣言ですが、辻さんはどういう風に捉えていますか?」
辻愛沙子・クリエイティブディレクター(『news zero』パートナー)
「後手後手の対応がずっとしばらく続いた結果、最近は身の回りやSNSで、分断を感じることがちょっとずつ増えてきたなと思います」
「例えば、補償が足りない中で、時短の要請に従えるかどうかだったり、オリンピックはやるけどロック・イン・ジャパンは中止になったり…。各事業者や個々人の判断だとは思いますが、国の方針を判断基準にしづらいというのがあった結果、それぞれの立場から言い合って、どうしても分断が起こってしまうのではないかと思います。少なくともみんなが迷わなくて済むようなメッセージを発信してほしいなとは、すごく思います」
有働
「『専門家に言われたからやりました』ではなく、『無観客でもオリンピックをやるための宣言なんだ』など、政治が決断の理由をはっきり正直に伝えていただきたいです。そうでないと、もう4度目の我慢は難しいのではないかと思います」
(7月7日『news zero』より)