【解説】衆院解散とは?今回は“戦後最短”
岸田総理大臣は14日午後、衆議院を解散しました。内閣発足からわずか10日後という戦後最短の解散となったわけですが、衆議院の解散について、いまさら聞けない基本情報や豆知識、今後の展望などを詳しく説明します。
岸田総理大臣は14日午後、衆議院を解散しました。内閣発足からわずか10日後という戦後最短の解散となったわけですが、衆議院の解散について、いまさら聞けない基本情報や豆知識、今後の展望などを詳しく説明します。
◇
■衆院解散 議員失職するのに“万歳”なぜ?
14日午後1時から行われた衆議院本会議で、大島衆議院議長が解散詔書を読み上げました。
大島議長
「日本国憲法第7条により、衆議院を解散する」
その後、議場内には「万歳!」の声が響きました。
ここで、そもそも衆議院を解散するとはどういうことなのか、詳しく見ていきます。衆院解散とは、全衆院議員の身分を失わせて「全員を選びなおす」ということです。衆議院議員の任期は4年ですが、衆議院が解散されると、任期途中でもその資格が失われます。
何のために解散するかというと、総選挙を行うことでその時の内閣の「政策」や「課題」について国民に信を問い、「最新の民意」を政治に反映させるということが目的です。
4年ぶりの解散となった1日の流れは、次のようなものでした。まず、臨時閣議で解散について閣議決定します。そのあと本会議が始まる直前、松野官房長官が紫色の“ふくさ”を受け取りました。中には「解散詔書」が入っています。このふくさを、官房長官が議長席へ運ぶことが、恒例となっています。この詔書を議長が読み上げて、衆議院は解散となります。衆議院議員全員が失職し、事実上の選挙戦へ突入します。
衆院解散の恒例行事のもう一つは、議長の「衆議院を解散する」との声を合図に一斉に万歳することです。
議員は失職するのに、なぜ万歳するのか?「景気づけ」とか「やけっぱち」など諸説ありますが、理由はよくわかっていません。いずれにしろ、この「万歳」は明治時代からの恒例となっています。
7年前には、ハプニングもありました。
衆議院 伊吹議長(当時)
「日本国憲法第7条により衆議院を解散する。御名御璽に…」
「万歳!万歳!」
この時、伊吹議長が全文を読み終えていないのに、一部の議員が万歳のタイミングをフライングしてしまいました。そのため、異例の仕切り直しをして、万歳のやり直しをしたこともありました。
■古くは「バカヤロー解散」…今回は「○○解散」?
衆議院の解散はその時の政治情勢を踏まえて、よく「○○解散」と名付けられます。
古くは、1953年、吉田茂内閣の「バカヤロー解散」がありました。当時の吉田茂首相が、野党議員の質問中に小声で「ばかやろう」と口走ったのを、マイクが拾ってしまったことがきっかけの解散だったと言われています。
また、1986年には、当時の中曽根首相が解散を否定し続けながら、不意打ちで解散したことから「死んだふり解散」とよばれました。最近では、2005年、当時の小泉純一郎内閣の時の「郵政解散」も記憶に新しいです。
今回はというと、野党・立憲民主党の枝野幸男代表は「逃げ恥解散」と命名しています。枝野代表は「逃げるが恥なのは間違いない」、「説明と論戦から逃げる解散だという意味で大変残念」と、その意味を説明しています。また、社民党の福島瑞穂党首は「ぼろ隠し解散」と批判しています。また、安倍元首相は「コロナ脱却V字回復」解散と命名し、少し長いです。様々な命名がされています。
■解散から総選挙…首相就任からも「戦後最短」
4年ぶりの衆院選は、今後の日本の方向性を決める大事な選挙となるわけですが、今回は選挙までの期間が短いです。
解散後の総選挙は「40日以内」と決められていますが、歴代内閣の解散から投開票日までの期間を見てみると、戦後、その期間が一番短かったのは、1983年の中曽根首相の時の「20日間」でした。
今回は今月31日に投開票が行われる予定なので、解散から「17日間」しかなく、解散から総選挙まで「戦後最短」の、異例の短期決戦ということになります。
しかも、岸田首相は今月4日に就任し、内閣もこの日に発足したばかりですので、就任からわずか10日での解散ということになり、こちらも「戦後最短」となりました。
期間が短い中、有権者は何を見ていけばいいのか──。選挙の最大の争点は、新型コロナウイルス対策と経済対策です。
岸田首相は、選挙戦を通じ、新型コロナ対策や中間層への分配を重視する看板政策である「新しい資本主義」を訴える考えです。一方、立憲民主党の枝野代表は、新型コロナの第6波に備えた水際対策の強化や、「隠す・ごまかす・改ざんする政治をまっとうな政治に変えていく」などとして政権選択を訴える考えです。
野党側は、候補者の一本化による選挙協力を進めていて、政権交代をかけた選挙は激しい戦いとなりそうです。
◇
14日の衆議院解散を受けて、与野党ともに事実上、戦後最短となる選挙戦に突入します。新型コロナ対策や経済対策など、私たちの暮らしに密接に関わる大切な争点がたくさんあります。各政党や候補者が掲げる主張をしっかり比較検討して、17日後の投票日にのぞみましょう。
(2021年10月14日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)