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「派閥解散なんて言っても…」 カネの流れは脈々と 20余年前…カメラが追った“キングメーカー”

2024年1月27日 9:11
「派閥解散なんて言っても…」 カネの流れは脈々と 20余年前…カメラが追った“キングメーカー”
 今から20年余り前、2000年代初頭の日本の政治は混迷を極めていました。

 バブル崩壊後、銀行の破綻が相次ぐなど経済も停滞し、「失われた10年」とも評された時期です。内閣総理大臣さえも大物政治家の密室談合で決まる不透明な政権運営に、国民の政治不信は高まりました。当時の権力を牛耳ったのは、竹下元首相(故人)を師と仰ぐ旧・小渕派(現・茂木派)の幹部でした。

 テレビカメラは、総選挙を舞台に繰り広げられた自民党の派閥政治の舞台裏を追いました。

 取材中、中堅議員が派閥の祖である竹下元首相を評して「感激した」と涙を流しました。何にそこまで感極まるかと思えば、初出馬の際、「陣中見舞い」として受け取った現金の額が、当初言われたより多かったことに感激していたのです。涙のツボが違う、永田町と一般国民との意識のギャップが表れた場面でした。

 自民党幹事長があえて現金で配った100万円単位の公認料と活動費、内閣官房長官がアピールする1000億円単位の公共事業誘致など、有権者の票を集める権力の真ん中には常に“カネ”の力がありました。

 「総裁が決まる前日に億単位の金がドーンと動いたんじゃないかって噂になったよ」

 派閥領袖がしのぎを削った昭和の自民党総裁選を経験したベテラン代議士から聞いた言葉です。田中角栄元首相の時代に代表される「昭和」の金権政治は、「平成」の時代の政治改革、政治資金規正法の改正を経て、相当に改善はされました。

 しかし「令和」のいま発覚した派閥のパーティー券収入不記載をめぐる事件では、今なおはびこる不透明なカネの実態があぶりだされました。

 東京地検の刑事処分が発表され、安倍派、二階派、岸田派の解散が決まった日、岸田首相はじめ派閥トップを務めた政治家は一様に「おわび」を口にしました。

 しかし週末、永田町のベテラン秘書を取材すると、「派閥解散なんて言っても、新しい人の集まりができます。力のある人はもう動いていますよ。(グループ集めないで)どうやって総裁選戦うんですか」「派閥のパーティーはやりませんけど、個人のパーティーはやるでしょう。自民党本部で人集めるとしたってメシ出さなきゃいけないですし」などといった言葉が返ってきました。

 政治資金をめぐる問題の本質に自民党全体がどこまで真剣に向き合うのか、疑念はつきませんでした。

 竹下元首相がキングメーカーと呼ばれた時代から、小泉改革、「安倍一強」の時代を経て、現在の岸田内閣に至り、自民党内の勢力図は大きく変わりました。しかし、舞台裏では血液のように脈々とカネが還流し、少しでも目を離すとウラ金として闇に埋もれる実態がありました。政治とカネの透明化へ根本的な改革がなされるか、しっかり見つめていかなければなりません。(日本テレビ報道局長・伊佐治 健)