「17 兆円台前半」経済対策の狙いは? 減税に3.5兆円――政府が狙う30年ぶりのデフレスパイラル脱却……与党幹部「全然伝わっていない」
政府が2日に取りまとめる経済対策の規模は17兆円台前半になる見通しです。30年ぶりのデフレスパイラルを脱却し好循環をつくることを狙っています。約3.5兆円をかけて所得税と住民税の減税を行いたい考えですが、減税で賃金アップにつながるのでしょうか?
■所得税と住民税の減税で3.5兆円
有働由美子キャスター
「『17兆円台前半』。これは、政府が2日に取りまとめる経済対策の規模です」
「電気やガスなどの物価高対策が約2.7兆円、中小企業向けの補助金や介護現場の処遇改善などに約1.3兆円、税収が上振れした分を還元する目的で所得税と住民税の減税を行うのに約3.5兆円などとなっています。かなり大きな規模ですよね」
■政府が狙う「好循環」…どうつくる?
「そうですよね。政府は『今が30年ぶりのデフレスパイラル脱却の、またとないチャンスだからだ』と説明しています」
「これまで日本では給料が少ないから、同じ物でも高い物より安い物を選ぶ。安い物の方が売れるので値下げが続き、企業の売り上げも減る。企業の売り上げが減れば働いている人の給料もまた減る、この繰り返しでした」
「ただ、今は物の値段はどんどん上がっていて、給料はその上がり方に追いついていません。そこで政府は好循環をつくるために、働いている人の給料が上がり、高い物も買えるようになり、売り上げが増えて給料にも反映される循環を作りたいとしています」
「ある政府関係者は、賃金のアップが物価高に追いつくまでの間の対策として、『賃上げを支えるのに直結する所得税減税をしたい』と説明しています」
■与野党から「給付が効果的」との声も
有働キャスター
「17兆円なので、本当にこの循環につなげてほしいとは思います。ただ、所得税減税が賃金アップにつながるのでしょうか?」
小栗委員長
「プラスの循環につなげるには減税よりも給付の方が早くて効果的、という声が与野党から上がっていますよね」
「ただ、ある与党幹部は『減税でなく給付となると、どうしてもバラマキに見え、それはやりたくないから難しい。それだけに岸田首相はこの循環の連続性の部分をしっかり説明すればいいのに、全然伝わっていない』と指摘します」
「他の政府関係者は『減税の評判が悪すぎて、経済対策を打ち出す効果が減っている。それが悩み』と話していました」
■辻さん「無料や安さが当たり前の時代」
辻愛沙子・クリエイティブディレクター(「news zero」パートナー)
「私は今27歳で、平均年収が一向に上がらない、いわゆる『失われた30年』しか知らない世代です」
「その世代からすると、そもそもなぜ日本だけこの状況が改善されてこなかったのかをまず顧みて説明していかない限り、先の打ち手をいくら掲げられても、なかなか信用できないなと思います」
「同時に、アプリやファストファッションのように、無料や驚くほど安いものが当たり前になりすぎている時代的な問題もあるかなと思います」
「商品やサービスは当然、背景に作る人がいます。過度に安い物はどこかにしわ寄せがいっていないかどうか。消費者側も立ち止まって考えられる、例えば教育システムなども必要かなと思います」
有働キャスター
「長年そのマインドで来たものを変えるのはなかなか難しいですし、そこには納得と安心が必要だと思います。2 日夕方から岸田首相が記者会見をするそうですが、納得と安心ができる、国民に分かりやすい説明をしてもらいたいです」
(11月1日『news zero』より)