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派閥裏金問題で大荒れの自民党 “泥船”岸田政権の次を担う「ポスト岸田」は誰?

2024年1月7日 6:00
派閥裏金問題で大荒れの自民党 “泥船”岸田政権の次を担う「ポスト岸田」は誰?

派閥の裏金問題で支持率が政権維持困難とされる20%前半まで落ち込んだ岸田内閣…。大荒れの自民党で「我こそは」と言うリーダーが居ないのはなぜか。そして“ポスト岸田”と言われる人物たちの現状は?

■支持率24%、政権維持は黄色信号

66%という高い内閣支持率だった発足当初が想像できないほどの事態となっている昨今。2023年11月の世論調査では、相次ぐ政務三役の辞任に加え、所得税などの定額減税が「選挙対策にみえる」などと不評を買い、内閣支持率はついに24%と発足以来最低を更新した。

さらにその後、自民党最大派閥“安倍派”の裏金問題が明るみに出て岸田首相の自民党総裁としての責任が問われる事態となっている。大荒れの自民党では、2024年9月に自民党総裁選が予定されている。岸田首相は裏金問題を受け安倍派の閣僚を一掃する人事を行ったが、岸田首相に近い議員も「安倍派の応援がなければ総裁選には勝てない」と釘を刺す。

■「我こそは」と言えないリーダーなき自民党

ではポスト岸田となりうる自民党議員は誰なのか。裏金問題のあまりの大きさに様子をうかがう議員が多いのが実情だ。

首相候補として名前が挙がるある議員は「誰が白で、誰が黒か、分からないうちは何も動き出せない」と周囲に吐露する。「我こそは自民党を立て直す」という議員が見当たらないのだ。過去の自民党であれば起こっていたであろう『岸田おろし』の動きが出てこない。

その理由は裏金問題の影響が未知数で捜査の着地点が見えないということもあるが、総裁選までまだ9か月ほどあること、衆議院議員の任期がまだ1年以上残っているという点も大きい。議員たちの危機意識が高まらず、『岸田おろし』が起こらないのだ。

では“ポスト岸田”の面々の現状はどうなっているのか。“将来の首相候補”と言われる議員は複数いるが、中でも“ポスト岸田”として名前が挙がる茂木幹事長、河野デジタル相、石破元幹事長、上川外相、加藤元官房長官、の5人について分析する。

■進む道を決めきれない茂木幹事長

自民党の幹事長を務める茂木敏充氏。当選10回を誇る政策通で、党の政調会長のほか、経済産業大臣や外務大臣など重要ポストを歴任してきた。現在は党運営や資金面で絶大な権限を握る“幹事長”をつとめ、党内第3派閥“茂木派”の会長でもある。

将来、首相を目指す姿勢を常ににじませる茂木氏は、麻生副総裁とも良好な関係を築いている。一方で党内からはポスト岸田に同じ派閥の加藤元官房長官を推す声もあり、必ずしも足下が安定しているとは言い切れない。

さらに裏金問題について、茂木派ではほとんど問題がなかったため「茂木幹事長はどこか他人事だ」という批判まじりの声も聞こえる。また、本来、幹事長は首相を支えるポジションであるにもかかわらず、首相よりも先に政治資金規正法の改正について発信するなど、幹事長としての役割を超えていると指摘される行動も多い。

茂木氏がポスト岸田に名乗りをあげるためには、岸田首相を支え続け禅譲を狙うのか、どこかで別の路線に進むのか決断が必要になる。

■“人気”を誇る河野デジタル相

国民的人気を誇り、歯に衣着せぬ発言や発信力で常に話題となる河野太郎氏も“ポスト岸田”の1人。これまで外相や防衛相などを務め、現在はデジタル相としてマイナンバーカードをめぐる一連の問題で陣頭指揮を執るなど、常に注目されているのが河野氏の強みだ。

前回の総裁選で岸田首相に敗れて以降、“仲間作り”にも力を入れている。毎週火曜日に勉強会を開催、政治家との会食も積極的に行っているという。さらに河野氏は、国民的人気が高い石破元幹事長、小泉元環境相とも近く3人の名前の頭文字を取った“小石河連合”の発信力は強力だ。

ただ実際に河野氏の“仲間作り”が結実してもポスト岸田に名乗りをあげるためには河野氏が所属する麻生派の麻生副総裁の意向が大きく関係してくる。麻生副総裁は「岸田政権を支える」というスタンスで、岸田首相が次の総裁選に出る場合は、河野氏の出馬を後押しする可能性は低い。

河野氏が“ポスト岸田”に近づくためには、派閥の領袖である麻生氏からの支持を得られるかが最大のポイントとなる。

■世論調査“ナンバー1”の石破茂元幹事長

NNNと読売新聞が23年12月に行った世論調査で、ポスト岸田として20%という最も高い支持を集めたのが石破茂元幹事長だ。各社の世論調査でも人気が高い。安倍晋三元首相と一騎打ちでの総裁選を戦うなど、自民党内でも非主流派の顔として脚光を浴び続けていることから政府関係者からは「自民党が変わったと思われるためには石破氏しかいない」との声も出ている。

ただ、石破氏は裏金問題の発覚後、テレビ番組で岸田首相の責任の取り方について「予算が成立したら辞めますというのはあり」と、総辞職を迫るような発言をおこなった。こうした岸田政権を後ろから撃つような言動には、かつての石破派に所属した議員からも「いくら国民的な人気があっても党内に仲間がいない」「溺れかかっている人物を上から突いているようだ」など冷ややかな声が上がっている。

発信力は抜群の石破氏だが、党内に仲間を作るという長年の課題が重くのしかかっている。

■初の女性候補と目される上川外相

2023年9月に行われた内閣改造以降、ポスト岸田として急浮上したのが上川陽子氏だ。法相を3回務め、2018年には、オウム真理教の麻原彰晃こと松本智津夫 元死刑囚の死刑執行命令書に署名をしたことも。「ミスをしない」「政策に強い」などの評判もあり、女性政治家としては首相の座に最も近い人物とされる。

上川氏は岸田首相が会長を務めていた“宏池会”に所属している。外相という重要ポストに上川氏を据えたことで、岸田首相が「次期首相候補」として経験を積ませようとしているのでは、との声も聞こえる。しかし、宏池会には、2023年12月、裏金問題で辞任した松野前官房長官の後任になった、林芳正氏がいる。林氏を飛び越えて上川氏を首相にする、という動きまでには至っていないのが現状だ。また、政策には強いが「政局観がない」など厳しい評価もある。

党内には「初の女性首相となれば自民党内からも誰も文句が言えない」など上川氏に期待する声もあるが、ポスト岸田となるためには「政局観」と「宏池会内の支持拡大」という2つの大きな壁がある。

■ダークホース、加藤勝信元官房長官

菅政権で官房長官を務め、厚労相を3回も経験している加藤勝信氏もポスト岸田のダークホースとして名前があがる。加藤氏は党内に影響力を持つ菅前首相からの信頼が厚いうえに、二階派の事務総長である武田良太氏や安倍派の5人衆の1人、萩生田光一氏とも関係が良好で、各氏の名前の頭文字を取って「HKT+S」と呼ばれる会合を定期的に開いている。

加藤氏が首相候補として名乗りをあげた場合、菅氏が率いる菅グループ、二階派、萩生田氏に近い安倍派の一部議員など、「非主流派」の議員を中心に派閥横断的に集まるのではないかとみられている。

ただ、加藤氏は茂木幹事長が率いる“茂木派”に所属していて茂木氏がポスト岸田に名乗りをあげると、加藤氏も手を挙げるのは難しい。茂木派を飛び出してでもポスト岸田を目指すことがあるのか、加藤氏の動向からも目が離せない。