「異次元の凪国会」の声も…なぜ? 3つの数字で検証
防衛力強化などの裏づけとなる来年度予算案は、衆議院本会議で可決されました。今回の予算審議は自民党幹部から「異常なまでに静かだった」と言われているということですが、なぜなのでしょうか。論戦の場となった第一委員会室から平本典昭記者が伝えます。
あるベテラン議員は今回の審議を評して「異次元の凪国会」だったと言っています。本当に順調だったのか? 3つの数字に注目し、検証したいと思います。
1.審議時間
今年の審議時間は約80時間。これは、過去3年と比較してもほぼ同じ。例年並みだったと言えます。
2.審議のストップ回数
これは、審議の中で野党側の追及に総理や閣僚が説明できなくなって速記が「止まる」回数。野党の追及の激しさをはかる1つのバロメーターと言えます。総理出席に限ってみると過去3年は平均7.3回。今年は昨日までで0回。「審議が止まらなかった」スムーズに進んだことを示す数字です。
3.岸田内閣の支持率
審議スタートの1月と2月の支持率を比較すると、過去3年平均はマイナス4ポイントだった一方、今年はプラス2ポイント。例年は野党が追及することで支持率が下がる傾向ですが、今年は下がらなかったのが特徴です。
この3つの数字から、今回の予算審議は岸田政権にとって「順調」だったことが裏づけられます。
――Q.なぜ、そんなに順調に進んだのでしょうか?
主に2つの理由が指摘されています。
1つめは野党の戦略ミス。ある野党幹部は最初、防衛増税で攻めようと狙いを定めたが、有権者から「わかりづらい」という反応があり、途中から少子化、LGBTなどに広げたことで「追及が散漫」になったと話しています。岸田総理も周辺に「追及が散発的だった」と述べていて、野党の戦略ミスだった面があります。
2つめは岸田総理の答弁姿勢です。安倍元総理のような「挑発的な言動」が少なく、ある野党幹部も「攻めてもかわすのがうまい」などと、悔しがっていました。
審議が順調だった半面、防衛増税や少子化対策などで議論が深まらなかったとの声もあり、これは国民にとってマイナスです。
参議院では、野党が鋭く追及し、岸田総理が丁寧な説明を行うことで建設的な議論となることが期待されます。