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【解説】「政策集団」として生き残れる? “透明性”どう担保? 政治刷新本部「中間とりまとめ案」中身は…

2024年1月23日 20:49
【解説】「政策集団」として生き残れる? “透明性”どう担保? 政治刷新本部「中間とりまとめ案」中身は…
派閥の政治資金パーティーをめぐる事件を受け、自民党は23日、「政治刷新本部」を開いています。議論されているのは、派閥の全面解消までは踏み込まず「政策集団」として残すことを認める案です。主な論点などについて、小栗泉・日本テレビ解説委員長とお伝えします。

■「政策集団」として生き残れる? 派閥の弊害は過去にも…

藤井貴彦キャスター
「派閥を解散する、しないで対応が分かれているなか、岸田総理は政策集団という形で残すことを示唆したわけですが、党として派閥の全面解消というのは難しいのでしょうか?」

小栗泉・日本テレビ解説委員長
「そうですね。なかなか難しいという声があるのも事実です。麻生派の麻生副総裁、茂木派の茂木幹事長らにすれば、今回、自分たちは全く立件されるような不正なキックバックはしていないのに、なぜとばっちりを受けなくてはいけないんだ、という思いがあること」

小栗解説委員長
「あと『集会の自由』は憲法でも守られているわけで、問題となっている金とポスト(人事)の配分について切り離せば、派閥には政策を研究したり、人材を育成したりといったメリットもたくさんある、というわけです」
「ただ『政策集団』と名前を変えただけでは『いわゆる派閥』と『新派閥』でどう違うのか、分かりづらいですよね」

藤井キャスター
「ただ、派閥についてこれだけ厳しい目で見られているなか、本当に政策集団として生き残れるのかというのが…」

小栗解説委員長
「派閥の弊害というのは、今に始まったことではないんです。今から約30年前の1994年12月、当時自民党は野党でした。派閥を全て解散して、膨大な額の金集めや人事をめぐる党内対立などを解消して“党として再生を目指す”と宣言したんです」

藤井キャスター
「この構図は今の状況と全く変わらないですね」

小栗解説委員長
「全く変わらないんです。私たちメディアも、全て呼び方を『旧〇〇派』と言い換えたりしたんです。でも結局、世論の批判のほとぼりがさめると、実態として派閥は続いてきてしまったと…」

小栗解説委員長
「ここを自民党自ら反省して、なんでまた派閥のお金の問題が起きてしまったのか、これを自ら原因を調査して国民に対してきちんと説明するということなしに、ただ『模様替えしますよ』と言われても、誰も信用しないですよね。自民党内からも『派閥を全面解消するべきだ』という声も出ているわけで、岸田総理が果たしてどう決断するのか、ここが注目されます」

■「人事とカネ」の機能を撤廃…本当に実現すれば“リーダー選び”変わる?

藤井キャスター
「そして忘れてはならないのが金の流れの透明性をどう担保するか、ということです。いわゆる『氷代』『もち代』という、派閥が所属議員にお金を配ることの廃止、そして派閥の政治資金パーティーの全面禁止。派閥の事務所を閉鎖することなどを盛り込むということなんですよね」

小栗解説委員長
「皆さん、これは当たり前のことでしょ、と思うかもしれませんが、政治を長く取材してきた身からすると、もし本当にこれが実現すれば、自民党のリーダー選びが変わってくるかもしれないという可能性を秘めていると思います」

小栗解説委員長
「というのも、派閥というのは“この人を総理総裁にしたい”という人物、リーダーのもとに集まってくるグループのことです。もちろんそのリーダーがどんな国家観を掲げているかということは大切なのですが、もしそのグループにいることで得られるお金があり、そのお金を使えば選挙が楽に戦える…というようなことがあれば、それは派閥の求心力にもなるし、もっと言えば、そのリーダーの求心力にも繋がってきたわけです」

小栗解説委員長
「でも『氷代』『もち代』が廃止され、拠点となる事務所がなくなるということになれば、派閥ごとにリーダーを担ぐメリットというのも薄まり、リーダー選びのあり方も変わるかもしれません。ただ、もちろん個人の政治資金パーティーなどは続くでしょうから、そのお金がどう使われるのか、そのあたりのチェックというのはこれからも引き続き注意が必要です」

■政局は新たな波乱要因を…

藤井キャスター
「リーダー選び、という話がありましたが、今のリーダーである岸田総理は今回、岸田派の解散を麻生副総裁や茂木幹事長に相談なく発表したということですが、関係性は大丈夫でしょうか?」

小栗解説委員長
「相談なくというのは、岸田総理もかなり思い切った行動に出ましたよね。あれは岸田政権への逆風を一気に転換するためのある種の賭け、“岸田政権を守るための賭け”だったと思います」

「どういうことかというと、岸田総理はいま麻生派、茂木派、そして自らの足下の岸田派、この3つの派閥のいわば神輿にのる形で政権を運営しているわけです。岸田総理が先陣を切って『派閥を解消する』と言えば、当然、他の派閥もその検討を迫られます。実際に麻生さん、茂木さんは怒っているわけですよね。そうなれば、この政権基盤というのが崩れるかもしれないです」

藤井キャスター
「せっかく支えてあげてるのに…という思いになりますよね」

小栗解説委員長
「でも世論の今の批判の強さを思えば、この賭けに打って出ないともう政権がもたない。総理周辺は『派閥が残っても、岸田政権が崩壊してしまう』と話しているんです。そしてもしこれを打ち出したことで、岸田政権の支持率が上がれば、さすがの麻生さん、茂木さんだって、自分をおろすようなことにはならないんじゃないかと思っているわけなんです」
「実際、この間の週末の各社の世論調査の結果を受けて、岸田総理は周辺に『派閥解消の打ち出しがなければ、政権支持率はどうなっていたのかと思うよ』と話しているんです。でも、やはり足を踏まれた側というのは、その痛みを覚えているわけです」
「麻生副総裁は周辺に『岸田総理の派閥の解散は人気取りのポピュリズムだ。岸田総理からは、引き続き頼むと言われるだろうけど、同じ気持ちというわけにはいかないよ』と話しているんです」

小栗解説委員長
「政治家ですし、大人ですから、すぐに総理に反旗を翻すということにはならないかもしれませんが、秋に予定されている自民党総裁選などで引き続き岸田総理を支えるのか、それとも別の人を担ぐのか。このあたり政局は新たな波乱要因を抱えることになったと言えそうです」

藤井キャスター
「でもこのような軋轢を含めて、全部をクリーンにしていくのが政治刷新なんじゃないかと思いますので、この後の自民党の動きを見ていきたいと思います」

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