【解説】国会の議論に“今年ならでは”の特徴…31年ぶり“異例の採決”も
国会の議論は参議院に移りました。異例の採決で幕を閉じた衆議院の議論ですが、“今年ならでは”の特徴があったということです。政治部野党担当キャップの天野裕貴とともにお伝えします。
天野裕貴 政治部野党担当キャップ
「5日は特別に、つい3日前まで論戦の舞台となった衆議院第一委員室からお伝えします。5日は主が移動した委員室、とてもひっそりとしています。さて、今年の予算審議は、31年ぶりに予算委員会と本会議の両方とも土曜日に採決される異例の国会となりました。実は議論の中身も“異例”だったんです」
藤井キャスター
「予算案は自然成立が確定して、衆議院での議論は終わったと4日に『every.』でもお伝えしましたが、何が異例だったんでしょうか?」
天野記者
「それを証明するために今回、日本テレビは冒頭の集中審議を含めて80時間近く行われた審議を独自分析しました。岸田首相が参加した予算委員会に限って全ての発言を書き起こし、ここから中身を分析しました。一体、何のテーマにどれだけ時間を割いたのか。集計結果ですが、第3位は「能登半島地震関連」。全体の約11%となりました。第2位が「子ども・子育て・少子化対策関連」全体の約12%となりました。そしてダントツ1位となったのは…藤井さん何だと思いますか?」
藤井キャスター
「1位となったのは『政治とカネの問題』ですかね」
天野記者
「そうなんです。実に全体の約40%を占める結果となりました」
藤井キャスター
「かなりの割合だと思いますが、それだけ時間を割いたということですが、裏金問題については全容解明に向けて時間も議論も足りていない点が多かったんじゃないでしょうか?」
天野記者
「そうですね。しかも今年は『政治とカネ』に議論が集中したせいで『他の政策議論が進まなかった』のではという指摘が与野党から挙がっています。これが今年だけの問題なのかを検証するため、実は去年の議論も集計しました。去年の今ごろ話題になっていたキーワードは『防衛増税』や『異次元の少子化対策』でした。集計の結果、『外交・安全保障関連』が約25%、『子ども・子育て・少子化対策関連』が約19%で、上位2位が政策テーマで44%をしめる結果となりました。『政治とカネの問題』は、実は去年もあったんですけど、全体の0.4%にすぎませんでした。去年と比べると政策議論に割いた時間が少なく、今年は『政治とカネの問題』一色だったことが数字から浮かび上がることになりました」
藤井キャスター
「となりますと、いろいろなテーマが議論されるべきだったと思いますけれども、今年、この『政治とカネの問題』に隠れて議論が深まらなかったテーマはというのはあるんでしょうか?」
天野記者
「与野党の議員や官僚に取材をしたところ、例えば少子化対策の財源として政府が示した『子ども・子育て支援金』です。岸田首相は国民1人あたりの負担額が、平均で月額500円弱になると説明していますが、『実質的な負担増にはならない』という説明には批判が出ています。さらに、次期戦闘機を第三国へ輸出できるようにする輸出ルール緩和なども大きなテーマです。ある野党議員は『国民生活に直結するテーマの問題点を浮き彫りにする議論が進まない』と指摘しています。参議院では残り1ヶ月、予算員会は続きます。裏金の実態を明らかにすることももちろん大事ですが、大事な政策の議論が進むことを期待したいと思います」