【解説】「政倫審」現職首相が初出席 説明責任は果たされた?
自民党の派閥の、政治とカネの問題をめぐり29日午後、衆議院の政治倫理審査会が開かれ、岸田首相が現職の首相として初めて出席しました。3つのチェックポイントを政治部の平本典昭・官邸キャップと伝えていきます。
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──3つのチェックポイントは
1:首相“初”政倫審 新発言は?
2:【速報】首相発言への評価は?
3:あすは安倍派幹部…注目は?
ですが、まず発言のポイントを教えてください。
1つ目は「政治資金規正法の“連座制”」についてです。
いわゆる「連座制」、秘書など会計責任者が有罪になれば議員も一緒に責任を問われる制度についての発言です。これまで岸田首相は「各党と議論を進める」と繰り返していたのが、29日は「政治家本人の責任を追及できる仕組みを実現する」と一歩、踏み込みました。
2つ目は「自身の政治資金パーティー」についてです。
野党が“脱法的な闇パーティー”ではと批判の矛先を向けていた岸田首相個人のパーティーについてです。29日、何度も問われて初めて「総理大臣在任中は開催しない」と明言しました。
3つ目は「安倍派議員らの処分」についてです。
気になるワードがありました。
岸田首相「法律上の責任以外にも、政治家として説明責任、そして政治責任、『道義的な責任』という言葉も先ほど使いましたが、こうした責任はあると私は思っています」
岸田首相は「説明責任」「政治責任」という言葉はこれまで使っていたのですが、『道義的責任』と、これまでにない表現を使いました。この狙いについて、ある首相周辺は「岸田首相は安倍派幹部などの処分は必要だと考えている。その必要性をにじませた言葉だった」と話しています。
──連日取材をしている平本さんの目には、岸田首相の様子はどう映りましたか?
まず冒頭発言の際、少し緊張しているなと感じました。岸田首相は終了後、周辺に「今、言える最大限の事は説明した」と話していたそうです。その声は緊張からか、少し疲れた様子だったそうです。
というのも、実は岸田首相、かなり準備を入念に行っていたようです。29日は午前7時半に官邸に入り、政倫審が開かれる14時まで身内以外の来客はゼロだったそうです。普段は分刻みで国会議員や、官僚、外国からの訪問者などとの面会を行っているのですが、政府関係者は「ずっと、政倫審に向けた準備をしていた」と話していました。
──自民党、野党からどういった評価が出てますか?
終了後、およそ10人の議員に緊急取材しました。プラス、マイナス両方の声が出ています。
プラスの声は、ある首相側近議員は「まず、自分が先頭に立つ岸田流リーダーシップだった」と。政倫審に出席していた自民党若手議員からは「誠心誠意、説明していた」という意見が出ていました。
次は、マイナスの声です。
まず、質問に立った立憲民主党の野田元首相は「何も新しい部分はなかった。ポーズだけ」、立憲幹部の1人は「疑惑解明どころからさらなる疑惑隠しだった」などと批判しています。
また身内の自民党からでさえ厳しい声が出ています。ある安倍派中堅議員からは「何を伝えたいのか分からなかった」、茂木派若手議員からは「この中身なら出ない方がよかった」などの意見も出ています。
今回の政倫審の出席は岸田首相にとって出席に慎重な議員を出席させるため「最後のカード」を切った大勝負でした。岸田首相サイドは「言える限り踏み込んだ」としている一方、野党からは「踏み込んだといっても小さすぎる一歩」と厳しい評価です。
──さて、政倫審ではあす3月1日、安倍派幹部が出席します。岸田首相の発言の影響、1日のポイントはどこでしょうか?
ある政府関係者は「総理まで政倫審に出て安倍派幹部がこれまでと同じ説明というのはあり得ない」と話しています。安倍派の幹部には裏金事件の実態解明に向けた具体的説明が求められます。
しかし1日に出席する安倍派議員の1人、高木前国対委員長は28日、「これまでと同じような話になる」と耳を疑いたくなる発言をしています。決して許されるわけがありません。
裏金を何に使ったのか。誰の指示で、どういった経緯で組織的な裏金作りが行われてきたのか、これまで足りなかった説明を行う事が求められます。
岸田首相の周辺は、29日は岸田首相は「きょうの自分の発言で『安倍派幹部も何か新しい発言をしなければいけないとうながした』」という狙いがあったそうですが、この発言を安倍派幹部がどう受け止めて、あす1日の政倫審での発言に何か新しいものがあるのか注目したいと思います。