“死者32万人”南海トラフ巨大地震 10年ぶりに被害想定見直しへ 議論進む
将来、発生が懸念されている「南海トラフ巨大地震」。国は、およそ10年前に被害想定や防災計画を公表し、減災対策を進めてきました。計画の公表から、まもなく10年が経過することから、今年初めから被害想定の見直しを行っていますが、6日、検討状況が公表され、新たな防災対策の方針が明らかになりました。
国はマグニチュード9クラスの南海トラフ巨大地震が発生した場合、激しい揺れと巨大な津波によって、最悪の場合、死者が32万3000人、全壊・焼失棟数が238万6000棟となる被害想定を2013年に公表しています。
この想定をもとに、翌年には防災対策推進基本計画が作られ、耐震対策や津波避難ビルの指定など、各地で減災対策が進められていますが、基本計画の策定から10年が経過することから、国は新たな課題を洗い出し、地震モデルや被害想定の見直しを行っています。
今年2月に始まった検討会では、最新の知見を取り入れて、地震の揺れや津波高の想定の見直しを進めていますが、内閣府の防災担当によりますと、地震モデルについては、最大クラスの「マグニチュード9クラス」と想定震源域は変更しない方針ですが、地震動の推計手法を見直して震度分布を再計算したり、自治体が持つ高精度化された地形データなどを活用して津波浸水範囲の計算に反映したりするなど、検討を進めているということです。
一方、検討会と並行して行われているワーキンググループでは、自治体や企業などの防災対策の進捗状況の確認や、近年の社会状況の変化をふまえ新たな防災対策を検討しています。
特に、災害関連死への対応や、2019年に運用が開始された1週間の事前避難などを求める「南海トラフ地震臨時情報」の国民への認知度の低さが課題となっていることについて、重点的に議論されたということです。
国は、引き続き検討を進め、今後、新たな被害想定と防災対策を公表した上で、来年の春ごろに、改定した防災対策推進基本計画を発表するとしています。