「ロボットとしてしか見ていないのか…」 ある宅配ドライバーに“密着” 残業規制から2か月…働き方に変化は?【#みんなのギモン】
トラックドライバーの過酷な労働を緩和する「働き方改革」。今年4月に残業に対する規制が始まり、2か月ほどがたちました。ドライバーは働きやすくなったのでしょうか? 私たちは、ある宅配ドライバーに密着しました。
記者
「おはようございます」
ネット通販最大手、アマゾンの荷物を配達する矢島さん(仮名)。会社に所属せず、下請けの運送会社と契約する個人ドライバーです。この日、運ぶ荷物を見せてもらうと…
記者
「ぎちぎちですね」
アマゾンの荷物を配達 矢島さん(仮名)
「(半日分の)午前便で118個」
記者
「数としては?」
矢島さん(仮名)
「多いほう」
これでも“半日分”の荷物です。118個の荷物は約6時間で配達しなければなりません。
ドライバーの残業時間を1か月で約80時間までとする働き方改革が、4月から始まっています。
トラックドライバーは、大きく、大手運送会社に所属する社員、その下請け会社の社員、そして下請け会社と契約する個人のドライバーに分けられます。
矢島さんのような個人ドライバーも働き方改革の対象ですが…
記者
「(荷物の量が)すごいですね…」
給料は日当で約2万円で、どれだけ多く運んでも同じです。
配達する順番は…
「ピンが打たれています」
アマゾンが開発した配達ドライバー専用のアプリには、運ぶルートと順番が示され、矢島さんはアプリに従って運んでいます。(※アマゾンジャパンはアプリの使用は任意だとしている)
矢島さん(仮名)
「(朝にアプリを)立ち上げた時に、初めて個数とコースがわかる。こんなにある、どうしよう…」
記者
「1個、何分で配る?」
矢島さん(仮名)
「1個3分くらい」
単純計算で、1個3分で配るプレッシャーのなかでは、危険な瞬間もあるといいます。
矢島さん(仮名)
「でも全部急いで配達しようと思ってなっている事なので。適正な荷物量と労働時間だったら(危険な運転に)ならないだろう」
午前の118個を配り終えないうちに、手元のアプリには…
矢島さん(仮名)
「もう午後便が飛ばされましたよ。見てください、これ、109個あります」
記者
「えー!」
早くも午後の分が示されました。
配達先によっては、急な坂や階段を駆け上がる場面も。
記者
「これキツいですね…」
矢島さん(仮名)
「なかなか難所ですね」
「こういうふうに追われてやってるのを、アマゾンは知ってるのか…」
さらに…
記者
「置き配?」
矢島さん(仮名)
「ご不在で持ち帰りです」
持ち帰った荷物は“再配達”になります。
227個すべてを配り終えるまで約12時間の、過酷な労働─。
矢島さん(仮名)
「人として見ていないんだなと。ロボットとしてしか見ていないのか」
私たちが入手したのは、アマゾンの委託先配送業者の下請け会社が作成したとみられる文書。ドライバーの権利が記されています。
「始業・終業時間の指示はない」
「時間的拘束を受けない」
拘束時間などを決められている、矢島さんたちの実際の働き方とは異なります。
先月、再び矢島さんを訪ねると、1日に平均して30個ほど荷物の量は増えたといいます。
矢島さん(仮名)
「(大手社員が)だんだん辞めて、人手が少ないという話も聞いている。残業代を稼げないので。その分、同じ量をアマゾンが配達させるのであれば、誰かがどこかでしわ寄せを受けなきゃいけない」
日本テレビ調査報道班に対し、アマゾンは…
「配送に従事する方々の雇用、契約、稼働管理などは、デリバリー・サービス・パートナー(委託先配送業者) に責任をもって行っていただいています。Amazonでは、ドライバーが業務に対して過度のプレッシャーを感じないよう配慮し、デリバリー・サービス・パートナーに対して安全な働く環境を整えること、関連法規やAmazonの基準を遵守することを求めています」と回答しました。
物流問題に詳しい 赤澤裕介氏
「ドライバーたちが追い込まれることで、商品の扱いが雑になるなど消費者にも影響しかねない」
と指摘しています。
(6月11日放送『news zero』より)
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