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「自分の体じゃないみたい」子宮けいがん手前で手術…不安抱え過ごした5年間

2024年8月20日 15:50
「自分の体じゃないみたい」子宮けいがん手前で手術…不安抱え過ごした5年間
がんの“手前”高度異形成と診断され手術をすることになった(2022年)

子宮けいがん一歩手前の「高度異形成」と診断を受けた有為(うい)さん(仮名)に、異常が見つかってから切除手術に至るまでの話をききました。不安を抱えて過ごした期間は5年間。検診やHPVワクチンについて思うことは?

■「嫌な予感がした」分厚い封筒で届いた子宮けいがん検診の結果が…

報道局ジェンダー班 庭野めぐみ解説委員
「病変が見つかったのはいつごろのことなんでしょうか」

有為さん
「2018年の、私が29歳のときでした。自治体から届く子宮けいがん検診の受診券を使って2年に1度検査をしてたんですけども、その結果が悪く、29歳のときに見つかったというかたちです」

庭野解説委員
「厚生労働省から、20歳以上の女性に対して2年に1度は子宮けいがん検診を受けることが推奨されていまして、各市区町村から無料で受診できるチケットが送られてきます。検査の内容は、内診台に乗って子宮の入り口あたりの細胞を少しこそげ取って、専門機関で調べます」

有為さん
「検査の2、3週間後。いつもならペラペラの『異常なし』という結果だけ入った封筒なのに、今回は分厚い封筒が届いていたので、何か嫌な予感がしたんですね。開けてみると、詳しい検査が必要と書いてあって、がん検診センターに行ってさらに検査を受けたら、軽度の異形成が見つかりました」

庭野解説委員
「子宮けいがんというのは、子宮の入り口の部分にできるがんでして、性交渉などで感染するヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で引き起こされます。このウイルスはありふれたウイルスで、性交渉をしたことがある人なら男女問わず8割ぐらいが一生に一度は感染するといわれるんですね」

庭野解説委員
「感染した女性のうち大体1割ぐらいが子宮けいがんになるといわれています。それも、いきなり子宮けいがんになるわけじゃなくて、ちょっと異常を見せる『軽度異形成』という段階があって、もっと異常が進むと『高度異形成』に。さらに進行するとがんになるということで、感染からがんになるまでは10年ぐらいかかるといわれています。異形成ができても自然に治る場合も多いそうなんです」

有為さん
「私も『自然に治るかもしれない』と医師から説明を受けたんですね。なのでその後、半年に1回くらい検診を受けて様子を見ることになりました。半年のタイミングというのが夏と冬だったんですけど、季節が変わるたびに憂鬱になっていって、『明日検査だな』とか『進行してなきゃいいな』とか、不安もありました」

■徐々に進行して4年後に手術へ…「頭が真っ白になって血の気が引いた」

有為さん
「最初に自治体の検査で引っかかってから3年後の2021年なんですけど、検査を受けたら今までの中で一番悪化していて『HSIL(ハイシル)』と書かれた通知が来ました。HSILというのは、中等度異形成から高度異形成の間のことだそうなんですね」

「様子を見る期間を短くして3か月後、今度は細胞の状態を見るための子宮けい部の組織診というのをしました。これは今までの細胞をこすりとる検査とはちょっと違っていて、怪しい細胞がありそうなところを数か所削りとるそうなんです。なので所要時間も、前の検査だと5分くらいだったのが、この組織診になると15分くらいかかるということでした。器具をいろいろ入れるので痛みや不快感もあって、15分がけっこう長いような感覚でした」

庭野解説委員
「心身に負担があるし、これでがんと言われたらどうしようと思いますよね」

有為さん
「組織診の結果は中等度の異形成でした。少し安心したんですけども、翌年の2022年にまた『HSIL』の結果が出てしまって、3か月後に組織診をもう一度受けたんです。そうしたら、とうとう『高度異形成』と出てしまって、『手術が必要だ』と言われました。2022年の11月で、33歳でした」

庭野解説委員
「高度異形成を放っておくと、約2割の人はがんになってしまうそうです。なので、取る手術を検討してくださいと言われるわけですね」

有為さん
「手術が必要と言われた時に、頭が真っ白になって血の気が引いた感覚がありました。それに、病院の予約がけっこう埋まっていて、手術は『半年後くらいになるかもしれない』という話が出て。医師の話だと、『その半年の間に進行することはないと思うから大丈夫だよ』というふうに言われましたけど、やっぱりモヤモヤしていて不安でした。最終的には空きが出たので、2月に手術を受けることになって、もう本当にひと安心しましたね」

■切除自体は“15分”でも2泊3日の入院生活

有為さん
「手術の選択肢として、子宮けい部を円すい状に切る手術と、レーザーで病変部分を焼く手術を提示されました。私は円すい状に切る手術を選ぶことにしました。レーザーだと、浸潤していた場合は取り除けないと聞いたので。日帰りできるところもあるらしいんですが、私の通いやすい病院を選んだところ、2泊3日で入院することになりました」

「麻酔は全身麻酔か、下半身だけにかける『脊髄くも膜下麻酔』が選択できるという話でした。私は、自分の体の負担を考えて、脊髄くも膜下麻酔にしました。上半身とか頭には意識があって、少し私の中では安心感がありました」

庭野解説委員
「手術にはどれくらい時間がかかるんですか?」

有為さん
「切除自体は15分くらいで終わると聞いてたんですけど、準備したり、麻酔をかけたり、手術後の処置なんかで病室を出てからまた病室に戻るまで2時間ぐらい経っていました」

「麻酔が切れてくるとだんだん腹痛を感じるようになってくるんですね。生理痛と似たような痛みで。その他にも下腹部に違和感があるんですよ。何なんだろうと思ってきいてみたら、『ガーゼを止血用に大量に詰めているから圧迫されて違和感があるんだと思う』と聞いて、自分の体じゃないみたいな気持ちになりましたね」

「私の選んだ麻酔が、限りなく確率は低いけれどちょっと頭痛が出るかもしれないという説明を受けていました。実際私はすごく頭痛に悩まされて、何かしらの振動とか動きが入るともう起きていられないくらいの痛みがあり、これが2~3日ぐらい続いたので、仕事に影響することもありました」

庭野解説委員
「『15分で終わりますよ』と言われても、そんな簡単なことではないですね」

■今年度で終わるキャッチアップ接種──はじめるなら“9月末まで”に

庭野解説委員
「手術は成功したということですけれども、それで高度異形成が見つかる前の状態に戻ったんですか?」

有為さん
「今も検診を半年に1回くらい受けています。これは術後2年ぐらい続くそうで、その後は経過次第では1年ごとになったり、通常の検診と同じように2年に一度に戻ったりすると聞いています」

庭野解説委員
「がんの一歩手前という状態が見つかって、手術をなさった経験から何か感じたことはありますか?」

有為さん
「よく聞くと思うんですけど、『まさか私が』という言葉が本当にぱっと出てきて、もう二度と手術はしたくないと思いました。ただ、憂鬱な気持ちになりながらも、定期的に検診を受けていたことで、おおごとになる前に食い止められたということは、本当に良かったなと実感してます。なので、今後も自分を過信せず、『自分は大丈夫だ』とか思わずに、手遅れになる前にどんな検診でも受けていきたいなというふうにはすごく考えています」

庭野解説委員
「HPVの感染を予防するためのワクチンがあるんですが、日本では接種をためらうなんていう人も多いです。ワクチンについてはどう考えますか?」

有為さん
「子宮けいがんというのはがんの中でもワクチンで予防ができると聞いています。私と同じように長年苦しい思いをしたり、悩んだりするという人が少しでも減るように、がん検診はもちろんなんですけれども、ワクチン接種も検討してみてほしいなというふうには思います」

庭野解説委員
「最新のHPVワクチンを打つと、子宮けいがんのもとになる14タイプほどのウイルスのうち、7タイプへの感染が予防できるといわれているんですね。2024年度、つまり今ですね、17歳から27歳になる女性たちを対象にした無料のキャッチアップ接種も行われています」

「来年の3月末までで無料の期間が終わってしまうんです。3回打つ必要があり、無料期間が終わると自費で総額8万円とか9万円が必要になります。数か月おきに3回打つということになるので、9月末までには1回目を打たないと無料期間に間に合わないんですね。今年度17歳から27歳の方はぜひ1回目をこの夏に受けることを考えていただきたいというふうに医師たちは強調しています」

■Talk Gender~もっと話そう、ジェンダーのこと~

日テレ報道局ジェンダー班のメンバーが、ジェンダーに関するニュースを起点に記者やゲストとあれこれ話すPodcastプログラム。MCは、報道一筋35年以上、子育てや健康を専門とする庭野めぐみ解説委員と、カルチャーニュースやnews zeroを担当し、ゲイを公表して働く白川大介プロデューサー。

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番組ハッシュタグ:#talkgender

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