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日米学生が交流、被災地に贈った詩とは?

2016年3月9日 18:25
日米学生が交流、被災地に贈った詩とは?

 キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。9日のテーマは「言葉の力」。日本テレビ・小栗泉解説委員が読み解く。

■子供たちによる詩の交流

 ケネディ駐日アメリカ大使の呼びかけで2014年に始まったこのプロジェクト。月に1回、3か国の子どもたちがインターネット中継による詩の朗読で交流を続けてきた。この日はその集大成として文芸フェスティバルで自作の詩を披露する。ニューヨークから参加したのは3人の高校生、ブリアナさん、アンダーソンさん、アリッサさん。

 ブリアナさん「はじめまして、こんばんは。私の名前はブリアナです」「これから読む詩のタイトルは『高み』です」「詩。それは世界中の素晴らしい人々による絶えることのない芸術。詩。それは現実から抜け出せる私だけの物語。詩。それは今、私達がここにいる理由」

 ニューヨーク、マンハッタンで生まれ育ったブリアナさんはこの2日後に予定されている宮城県石巻市への訪問を心待ちにしていた。

 ブリアナさん「9・11のテロでおばを失いました。これから訪れる石巻の高校につながりのようなものを感じています。お互いに悲劇を経験しましたから」

■初めて見た被災地

 石巻への訪問は、東日本大震災の爪痕を直接「見て欲しい」「見たい」という日米双方の願いで実現した。石巻市は東日本大震災で3277人が死亡、428人が行方不明のままだ。初めて見る被災地の光景にブリアナさんは息をのんだ。

 次に訪れたのは震災の記憶を伝える展示スペース。1階まで津波にのまれた湊第二小学校の元教頭・佐藤さんから話を聞いた。

 佐藤さん「亡くなった子どももいます。お母さんと一緒に車で避難する途中。お母さん、おばあさんと一緒に」

 困難に出会った子ども達の話に胸打たれるものがあったようだ。

■詩を通して、地元の高校生と―

 最後に訪れたのが石巻好文館高校。高校1、2年生あわせて16人がブリアナさん達を歓迎した。この高校は津波で高さ1.5メートルまで浸水し、1階がすべて水没した。ここには震災直後に作った詩が地元の賞をとった気仙沼の高校生・千葉蓮さんも加わり、詩を作った時の気持ちを話した。

 千葉さんは小学校3年生の時から毎日ノートに詩を書きためていた。そのノートが津波に流され、震災から2週間後、がれきの中から見つかったという。

【千葉さんの詩】

賞状やバットやグローブ、
思い出のユニホームすべてが流されてしまった。
流されてしまった。
しかし、流されなかったものもある。
ぼくの記憶やたくさんの思い出。
積み重ねてきた知識や知恵は流されない。
(中略)
ぼくは、ぼくを信じている」

 アンダーソンさん「蓮くんの詩の『僕を信じている』とはどういう意味ですか?」

 千葉さん「これからどんどん復興に向かっていくということで、切り替えられるようにと思いを込めて、『信じている』と書きました」

 生徒たちは2時間にわたって話しあった。最後にブリアナさんたちが、石巻を思いながら全員で作りあげた詩を朗読した。

【癒やしの詩】

これは、あなたと、あなたたちのための詩。
癒やしという希望の元に集まったすべての人たちに。
(中略)
この詩は私たちが刻んで、紡いだ過去のため。
私たちは忘れない。
傷は痛むけど。だけどまた目は覚める。

 女子生徒「『傷は痛むけど、また目は覚める』って言うところで、一度は傷ついても私達はまた立ち直れる力を持っているということを学びました」

 男子生徒「英語で言われたんですけど、パワーを感じたっていうか、言語の壁を越えられるのかな、みたいな」

 ブリアナさん「物質的なものよりも、人と人との絆や関係性の方がはるかに大切なのだと気づかされました。故郷の人々にも、ここで起きたことをもっと伝えていきたい」

■ケネディ大使は―

 この2年間、詩のイベントを主催してきたケネディ大使に詩が持つ力について、話を聞いた。

 ケネディ大使「誰かがあなたを理解していると感じること、誰かがあなたが経験している苦しみをくぐり抜けてきたと感じること、喪失や悲しみから立ち上がり、打ち勝つ勇気、すべて大切なものです。何世紀にもわたって、そういう詩が伝えられてきました。ですから、詩は、人は1人ではないと感じさせることで、大きな慰めを与えるのだと思います」

■「言葉の力」を信じる

 今回のポイントは「言葉の力」だ。詩や小説といった文学は、国境や人種と言った壁を越えて人々の心を打つ。私たちはこれまでも、過去の災害や戦争といった悲しい記憶を言葉の力で乗り越えてきた。子どもたちが共に手を携えて平和な世界をつくるにはどうすればいいのか。そのカギは、「言葉の力」を信じるところにあるのかもしれない。

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