群大病院“18人死亡”なぜ1人の医師で?
群馬大学病院の40歳代の男性医師が肝臓の手術を行った後、6年間に18人の患者が亡くなっていたことが2014年に発覚した。なぜ1人の医師の手術でこれほど死亡事例が相次いだのか、事故調査委員会は1年かけて調査を行い、組織的な問題があるとする報告書を大学側に提出した。
■事故調査委員会が指摘したポイント
(1)1人の医師が診断から手術までのすべてを担当
(2)病院が手術の数を増やすことを方針としていた
(3)死亡事案を報告する意識の低さ
(4)カルテに記載しなかったり、ウソの記載をしたりしていた
■8人死亡後に手術休止も…すぐに再開
実は相次ぐ患者の死亡を防ぐことができたかもしれないポイントがあった。2009年度に、問題となっている医師が担当した手術で8人が死亡した。一時的にこの医師の手術を休止したが、すぐに再開。翌年度に導入された難度の高い腹腔鏡手術で、さらに患者の死亡が相次いだ。
これだけ患者の死が相次いだことから、医師も病院側も死亡事例を見直し、原因究明を行うべきだったが、群馬大学病院では適切な改善策がとられないまま、放置されていた。
調査委員会は「この時期に適切な対応がとられていれば、死亡事例の続発を防げた可能性がある」としている。
■医師だけでなく、病院側にも問題
また、この問題で病院の体制の検証を行っていた「病院改革委員会」が会見を行った。病院改革委員会は、根本的な原因について「患者本位の医療がなされていなかった」ことを指摘。男性医師については、「医師の適格性が疑われる」とする一方で、「不適格な医師」がいただけで起きたのではなく、病院としてのガバナンスの欠如などが加わって起きたと指摘した。
一方、大学と病院も2日に会見し「大変申し訳なく思っています」と謝罪。また、再発防止に向けて、改革に取り組むと話すとともに、すでに退職している男性医師の処分については懲戒解雇相当とし、また、医師の上司にあたる教授も諭旨解雇処分としたことを発表した。