相談しにくい“性の話”を抵抗なく…絵本で子どもに伝える「自分の身を守る方法」
子どもへの性暴力の被害があとをたちません。絵本の読み聞かせで、小さいときから自分を守る知識を持ってもらおうという取り組みが始まっています。
◆「男の子にも伝えるべきなんだ」保育園で“性教育”の絵本読み聞かせ
東京・江戸川区の『つぼみ保育園』で、“性教育”の絵本の読み聞かせを行っていました。描かれているのは、ふざけて友達のパンツを脱がせようとする男の子です。
「プライベートゾーン? それなあに? そうか、みんな知らなかったんだね」
お空で見守っている“くもくん”が、子どもたちに自分の体の大切さを教えるストーリーです。
「プライベートゾーンって、みんなの体のどこなのかな」
「みずぎ」
「水着で?」
「かくれるぶぶん」
「そう!」
子どもたちは、「からだとかさわっちゃだめって、いろんなことをしった」「じぶんのからだをたいせつにするとおもった」と話します。
この保育園では、去年から4歳と5歳児クラスで読み聞かせを実施しています。
鈴木宏彰保育士「小学校にこれからあがる時、子どもたちも世界が広がると思う。その時に自分で判断できるようになってほしいなって」
家庭では持ち出しにくい“性”の話。保護者は、絵本が家庭での会話にもつながっているといいます。
母親「(性教育は)思春期になってからするものというイメージだったんですけど、今の時期からしていただけるのは、すごくありがたい」
母親「男の子にも伝えるべきなんだと思って。結構お話するよね」
◆当時4歳の娘の反応見ながら…不安にならず、繰り返し読んでもらえる絵本へ
絵本のイラストを担当したサトウミユキさんは、6歳の女の子の母親です。
サトウミユキさん「一番最初に(試作を)読み聞かせた時は、終わってから(娘が)一言 『あー長かった』って言ったんですね」
当時4歳だった娘に試作を読み聞かせ、その反応を見ながら完成にたどり着いたといいます。さらに、子どもたちが不安にならず、繰り返し読んでもらえる絵本を目指しました。
サトウミユキさん「最初は黒い手とかが出てたんですけど、見ていて怖くなるような表現は全体的にカットして」
◆強制わいせつ事件17%の被害者が12歳以下…子どもたちに自分の身を守る方法を
そして、この絵本を監修した慶応義塾大学の小笠原教授は、実は警察庁の現役官僚でもあります。性暴力被害をなくす講演活動などを行う中で、絵本は、その内容が“子どもにも伝わるように”と友人が企画・制作してくれたものでした。
先月、東京学芸大学附属小金井小学校では、保護者や教員に向けたオンライン講演が行われていました。
小笠原和美教授「(絵本を)親子で読み聞かせしていただくことによって、思春期になってから相談しにくい、話題にしにくい“性”の話を、抵抗なくできるようにする」
実は、2020年に認知された強制わいせつ事件のうち、17%の被害者が12歳以下の子どもなのです(2020年警察庁統計)。こうした中、政府はようやく「生命(いのち)の安全教育」として幼児期からの“性教育”の実施を通達。文部科学省が去年指導の手引きなどを作成しました。しかし、子どもたちに教えるかは学校などの裁量に任されています。
これを受け、モデル授業を行った小金井小学校では、子どもたちに自分の身を守る方法などが教えられていました。
佐藤牧子養護教諭「嫌だって自分のサインを、意思を出せるように、しっかり伝えていきたいと思う」
◆家庭での会話も大切「被害者にも加害者にも傍観者にもならないように」
小笠原教授は“家庭での会話も大切”だと言います。
小笠原教授「お子さんに『体には大事なところ、守るべきところがある』『他の人の(体)も大事なんだ』と、3歳・4歳には必ず伝えていただきたい。 被害者にも加害者にも傍観者にもならないような大人になっていくように」
子どもたちの笑顔を守る性教育がいま必要とされています。