「AI」で胃がん検査 医療分野で進む研究
コンピューターに情報を覚えさせ、人間の脳のような働きを持たせた人工知能(=AI)。日常生活のさまざまな場面で使われはじめているが、医療に役立てようという研究も進んでいる。
◇
都内にあるがん専門の病院。患者の口から内視鏡を入れて胃がんの検査をしている。
医師のそばにあるモニターには、なにやら四角いマークが映っている。実は、マークを付けているのは、人工知能(=AI)。この部分は早期がんの可能性があり、その確率は、45%であることを示している。
開発中のこのAIは、内視鏡検査の際、リアルタイムで胃がんを見つけ出す。
がん研有明病院消化器内科・平沢俊明医師「(胃がんの)早期発見がなかなか難しい。人工知能と医者のダブルチェックで、見逃しを防ぐことができる」
この世界初のAIの開発を進めているのは、内視鏡医師でもある多田智裕さん。
AIメディカルサービス・多田智裕CEO「AIは0.02秒で見つけるので、人間より見つけるスピードは速いです。一瞬でAI検知してますね。ちらっと映りこんだ段階で」
その仕組みは、各病院の協力で得られた胃がんの画像や健康な胃の画像など、40万枚以上をAIに覚えさせ、そのデータをもとに、AIが胃がんを見つけ出すというもの。
AIメディカルサービス・多田智裕CEO「(Q.赤くなっている部分ががん?)そうですね。この部分と周りの変化含めてAIに覚え込ませる形になります」
正しくがんを検知する確率は94%以上。早期の胃がんも検知するという。例えば、小さい早期がんなどは、専門医でも見逃してしまうことがあるというが、AIは見逃さずマーク。
早い段階でがんと分かり治療ができれば、患者にとって大きな助けとなる。
がんかどうか判断する医師の補助役と期待されるAI。開発の背景には、医療現場が抱えるある課題があった。
AIメディカルサービス・多田智裕CEO「医療現場で撮影される(内視鏡の)画像というのが、専門医の処理能力を超えるくらいの枚数が撮影されているんです」
内視鏡検査の技術が進歩し、チェックすべき画像の量が増えている。
通常、自治体の胃がんの検診は、その場で医師が確認し、別の医師らがダブルチェックする。本来の勤務が終わったあと、一度に2000枚から3000枚以上の画像をチェックすることもあるという。疲労もたまり、見落としのリスクも高まるという。
このAIが完成すれば、医師による見落としが減り、検査の質を高めることも期待できる。
AIメディカルサービス・多田智裕CEO「AIは疲れ知らずですし、何時間やっても精度は変わることはない。がんの内視鏡検査を一緒に行うことで、がんの見逃しがほぼ0になる」
医療とAIの融合は、肝臓の画像診断などでも進んでいる。導入のコストが掛かるなど、課題もあるが、多田さんらは、この胃がん検知AIについて、2021年頃の実用化を目指している。