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【解説】新型コロナ死者急増 実際の感染者数「把握困難」指摘も インフルエンザ“同時感染”懸念

2023年1月12日 19:34
【解説】新型コロナ死者急増 実際の感染者数「把握困難」指摘も インフルエンザ“同時感染”懸念

今、新型コロナウイルスの死者数が急増しています。理由として、「実際の感染者数が、把握されている数よりはるかに多いこと」が挙げられています。「新たな変異株」、「インフルエンザ」との同時流行も懸念され、気が抜けない状況です。

●死者急増 搬送困難も
●アメリカで猛威「XBB.1.5」
●W感染「死亡リスク2倍」

以上の3つのポイントについて、詳しく解説します。

■実際の感染者数“把握困難” 専門家会議「検査しない人増加」

12日、厚生労働省が発表した新型コロナウイルスの新たな感染者は全国で18万5472人となりました。死者は489人で、過去最多を更新しました。

感染者数を示したグラフでは、現在の“第8波”よりも、前回の“第7波”の方が感染者数の山が大きいことがわかります。一方、死者数を示したグラフでは、第7波よりも第8波の方が大きくなっていることがわかります。

死者が急増した理由の1つは、「実際の感染者数が、把握されている数よりもはるかに多い」と推測されるからということです。厚労省の専門家会議は、新規感染者数について、「実際には感染していても検査しない人」、「市販キットで陽性となっても報告しない人」が増えてきていることもあり、「日々の報告数だけでは、実際の感染者数の全体を捉えることは困難になってきている」と指摘しました。

実際の感染者数が多ければ、母数が多い分、重症化する人も亡くなる人も増えるということです。また亡くなった人の年代別の内訳では、実に60代以上の高齢者が約97%を占めています。

専門家は「基礎疾患のある高齢者の感染が増加していることもあるが、それだけではない状況もあり、深掘りした分析が必要だ」と指摘しました。

■「救急搬送困難事案」3週連続で過去最多を更新

また新規感染者の増加で医療現場がひっ迫し、患者の搬送先がすぐに決まらない「救急搬送困難事案」も、第7波のピークを超えています。

総務省消防庁によると、救急搬送が困難だったケースは、1月2日からの1週間で7558件と、3週連続で過去最多を更新しました。このうち、新型コロナに感染した疑いがあるケースは約3分の1にあたる2612件で、前の週より13%増えました。

感染症学が専門の国際医療福祉大学成田病院・感染制御部の松本哲哉部長は、「入院の受け入れ状況は相当、厳しくなっている。診断が遅れると、薬の処方も遅れて、入院時点ではすでにかなり悪化していて、亡くなるケースが多くなっている」と指摘しました。

■新たな変異株「XBB.1.5」往来制限ないアメリカで拡大

こうした中、アメリカではオミクロン株の新たな変異「XBB.1.5」が急速に拡大しています。アメリカ・CDC(疾病対策センター)によると、「XBB.1.5」が占める割合は、12月3日時点で推計2.3%でしたが、1月7日時点では27.6%と、約1か月間で12倍に急増しました。

「XBB.1.5」の特徴について、京都大学の西浦博教授が専門家会議でデータを示しました。1人が何人に感染を広げるか示す「実効再生産数」が今、日本で主流となっている「BA.5」と比べ2.22倍で、つまり「感染力がより強い」ということです。

またWHO(世界保健機関)が行った最新の調査結果によると、「免疫を回避する能力が、これまでの変異株の中で最も高い部類に入る」としています。つまり「ワクチン接種や過去の感染によって獲得した免疫が効きにくいので、感染者が増えやすい」とみられています。一方、重症化率についてはまだわかっていない部分も多いですが、これまでのところ、高くなっているという報告はないということです。

また「XBB.1.5」は、日本国内では10日時点で、4件確認されています。(10日時点)西浦教授は、「現在、アメリカとの往来に制限がない状況をふまえると、日本でも今後、流行を引き起こす可能性が高い」と指摘しました。

■インフル・新型コロナ「同時感染」注意呼びかけ

そしてもう1つ、この時期に気をつけなければならないことがあります。今、3年ぶりに全国で流行シーズンに入っているインフルエンザと新型コロナの“同時感染”です。

世界的な医学誌「ランセット」に掲載された研究結果によると、同時感染した場合、新型コロナのみに感染した場合と比べ、「人工呼吸器の装着リスクが4.14倍」、「死亡リスクは2.35倍以上」に増えたとしています。2つのウイルスに同時に感染するため、それだけ重症化したり、死亡したりする可能性が高まるとしています。

松本医師は「今、インフルエンザ患者は確実に増えていて、本格的な流行期に入る2月には新型コロナとの同時感染も増えてくるだろう」と予想しています。

また松本医師は「インフルエンザの薬は48時間以内に服用しないと効果がない。病院がひっ迫する中、重症化リスクの高い人や子どもなどは、新型コロナとインフルエンザを同時に調べられる検査キットを事前に用意しておいて、疑わしい症状が出たら検査してほしい」と呼びかけています。

     ◇

毎年、この時期になると、新型コロナの感染者数は急増してきましたが、今年は把握されていない感染者が非常に多いのが大きな特徴です。いざという時、すぐには受診できない事態も十分想定して、自己防衛の手段を確保しておくことが大切です。

(2023年1月12日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)
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