「日本版DBS」骨子案 自民党部会で反対意見も…来月5日に最終決定へ
性犯罪歴がある人を、こども関連の仕事に就けなくする「日本版DBS」に関する新しい法律の骨子案が、28日午前、自民党の部会に示されましたが、議員からは性犯罪歴の照会期間を長くすべきなど異論が出ました。部会としては、来月5日に、この骨子案を了承するか、結論をまとめることになりました。
28日、こども家庭庁が自民党の部会に示した「児童対象性暴力の防止に関する法律」の骨子案によりますと、法律で認可されている学校、幼稚園や認可保育所、児童養護施設、児童館、放課後等デイサービスなどに対し、従業員や新たに応募してきた人などの性犯罪歴の有無を、こども家庭庁を通じて法務省のシステムで確認することなどを義務付けます。
焦点の一つは、「性犯罪歴」がある場合、それを何年後までを確認の対象とするかです。こども家庭庁は、刑法との関連や性犯罪者の有罪確定者が再犯する場合の年数を調べたデータなどに基づいて、懲役など拘禁刑の場合、刑を終えてから20年、罰金以下の場合は10年までを確認期間とし、それを超えれば、「性犯罪歴」なしとして、国から学校や保育所など照会した側に回答されるという案をまとめました。
この点について、28日の自民党の部会では、「対象期間をのばすべき」「永久にすべき」といった意見なども出ましたが、こども家庭庁は、刑法34条2項で、「禁錮以上の刑の執行を終えた者が罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したときは、刑の言渡しは効力を失う。 罰金以下の刑の執行を終わった者が罰金上の刑に処せられないで5年を経過したときも、同様とする」という規定があり、刑法学者に意見を聞いた上で、この期間になったと説明したということです。こども家庭庁としては、骨子案に盛り込む「確認期間」の変更はしない見通しで、一部議員からの反対意見をどうするかが焦点ですが、政府は今の国会に法律案を提出したい意向で、次回の会合で自民党からこの骨子案への意見をまとめた文書を提出して、たとえば、「不断の見直しをする」などとした上で、この骨子案を了承するかどうか調整が続けられる見通しです。
28日に示された骨子案では、学校など認可を得た事業所だけでなく、学童保育や認可外保育所、塾、スイミングスクール、ベビーシッターのマッチングサイトなどが、この仕組みを導入すると国から「認定」が与えられ、広告などにそれを掲載できるとしています。また、対象となる性犯罪は、刑法や児童買春・児童ポルノ禁止法のほか、自治体の条例で規制する痴漢なども含みます。また、派遣や委託、ボランティアでも、確認の対象になるということです。
性犯罪の有無を確認する際、学校や事業所からこども家庭庁に申請を行いますが、その際、本人も戸籍情報を提出するなどしてかかわり、「性犯罪歴あり」と確認された場合、国からはまず本人に通知するということです。本人は、2週間以内であれば、その結果の訂正請求をすることができ、その間に、本人が例えば、学校や保育所などから得た内定を辞退するなどすれば、その人の性犯罪歴について、国から事業者などに「性犯罪歴あり」と回答することはなく、逆に、本人が訂正請求せずに2週間経過すれば、「犯罪事実確認書」を国から事業者などに交付するということです。
もし、すでに働いている教員、従業員の性犯罪歴が確認された場合は、教育や保育などの業務に従事させることがないよう、事業者に義務付けます。詳細はガイドラインで示しますが、例えば、こどもと関わらない部署やこどもがいない時間帯の業務への配置転換なども想定され、こども家庭庁は「こどもとかかわる業務しかない場合は、本人を解雇することが許容されることもあり得る」と説明しています。
検討中のこの新しい法律は、こどもへの性暴力を防ぐため、「性犯罪歴の確認」だけではなく、次のことも学校や事業者に義務付けます。
●職員らを対象にした性犯罪防止の研修
●こどもなどとの面談やこどもや保護者らの相談をうける体制を設ける
●こどもへの性暴力の発生が疑われる場合の調査、被害者の保護、支援
こども家庭庁は、性犯罪歴の確認だけでは「初犯」の人をこどもから遠ざけることはできず、不十分だとして、性犯罪歴があるかに限らず、広く職員らに研修を行うことなども重要だと強調しています。
仮に、来週、骨子案が自民党の部会で了承されれば、こども家庭庁が法律案について、党内手続きを経て、今の国会に提出することになるということです。