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銃撃男の母と“統一教会” 教団が会見「破綻されたことは知っている」――「合同結婚式」「霊感商法」社会問題化…被害救済の弁護士「今も深刻」

2022年7月12日 10:42
銃撃男の母と“統一教会” 教団が会見「破綻されたことは知っている」――「合同結婚式」「霊感商法」社会問題化…被害救済の弁護士「今も深刻」

安倍元首相を銃撃した山上徹也容疑者の母親が信者という“統一教会”が11日、会見を開きました。母親が正会員で行事に参加していることを認めた一方、高額献金については明らかにしませんでした。これまでも霊感商法などが社会問題化してきた教団の姿とは?

■教団「高額献金の方々、かつても」

宗教団体「世界平和統一家庭連合」、いわゆる“統一教会”の田中富広会長らが11日、会見を開きました。

田中会長は、「山上徹也容疑者は当法人の信者ではございません」「容疑者の母親は当法人の教会員であり、これまでも1か月に1回程度の頻度で、教会の行事に参加してまいりました」「会員区分は私たちの教会の正会員になっております」と明かしました。

山上容疑者については「母親が(教団と)関わり始めたのが1990年代後半になります。そうすると徹也容疑者は10代後半ということになります。そのころに一緒に学びに来て、学んでいた可能性がないとは言えません」と説明しました。

山上容疑者が「家庭生活がめちゃくちゃになった」と供述で主張している、母親による多額の寄付。田中会長は「献金問題に関しましては、現在警察が捜査中であると思われますので、この場での言及は避けさせていただきます」とのみ答えました。

――一般論として、信者に対して多額の寄付を強いることは?

「ご本人の意思で献金されていきますが、献金の額それぞれは、ご本人の信条に基づいて献金されています」

――1人で何千万の高額の献金ということも?

「高額で献金されてきた方々はかつてもいらっしゃいます」「私たちも感謝して、その志を受け止めております」

■母親の破産は…会長「知っている」

1990年代後半に信者となり、2002年に破産していたという山上容疑者の母親。その後、教団からしばらく離れていたものの、2~3年前から親交を深めた教団関係者と連絡を取るようになりました。そして半年ほど前から、月に1度の行事に来ているといいます。

――行事に参加すると献金は求められる?

「多くの行事企画で献金要請されることはありません。したがって、この(山上容疑者の)お母さんが、もし警察の調査で『明確に高額献金だった』となった場合も、おそらく1990年代後半あたりの献金ではないかと」

「ただ、(山上容疑者の母親が)破綻されていたことは知っています。その後、このご家庭に高額献金を要求したかどうかという事実は、記録上一切残っておりません」

――より救いを求めるのであれば献金をより一層しろ、のような指導や教えは?

「献金に関して、どれくらいやったらどれくらい救われる、こういう教えはありません」「破綻している家庭に対してさらに献金を追いやるというような指導はありませんので、私はないと信じております」

■裁判も…教団で「社会問題」相次ぐ

いわゆる“統一教会”は、「世界基督教統一神霊協会」として1954年、教祖の文鮮明(ムン・ソンミョン)氏が創立しました。その後日本でも活動を始めた、キリスト教系の新宗教団体とされます。

しかし、教団をめぐっては悩みにつけこみ、不当に高額な壺や印鑑などを買わせる「霊感商法」との関連が取りざたされたほか、教団の決めた相手と結婚する「合同結婚式」や、教団名を隠した「信者勧誘」などが1980年代以降、社会問題化しました。

脱会した信者が教団を訴えた各地の裁判でも、霊感商法や勧誘の違法性を認める判断が示されています。教団のホームページによると、全国に284の教会があります。

■教団は「変わった」…弁護士は否定

11日の会見で田中会長は「末端に至るまで、コンプライアンスの徹底を進めてまいりました」「大きく献金に対する姿勢も含め、変わってきた」と強調しました。

長年、被害者の救済にあたってきた「全国霊感商法対策弁護士連絡会」代表世話人の山口広弁護士に聞きました。山上容疑者の母親が入信した1990年代の教団について、「当時は(教祖の)文鮮明からの毎月何億円という指示が繰り返し来るわけですよ」と言います。

「そうすると“統一教会”としては物品を売っている、あるいは献金を集めるだけでは間に合わなくなるので、信者が持っている不動産を担保に、金融機関からお金を借りさせるわけですよ。今も強烈に覚えていますが、20億(円)くらい取られた人がいました」

中には、自己破産する信者も少なくなかったといいます。

一度教団を離れてから数年後に戻るケースも多くあったといい、「やはり心の底の中では何か嫌なこと、不幸なことが起こると、離れたせいじゃないかと。罰が当たったんじゃないかという感覚を持つんですよ。それで結局(教団に)戻ってしまう」と山口弁護士。

田中会長が会見で強調した「今は変わった」という主張について、山口弁護士は「今も続いていますよ、今も続いています。私どもとしては深刻な被害の相談を、今も受けています」と明かしました。

■安倍元首相、友好団体へメッセージ

教団と安倍元首相との関係はどうでしょうか。

去年9月、教団と創始者が同じ友好団体が主催する行事に、安倍元首相はビデオメッセージを寄せていました。

「およそ150か国の国家首脳、国会議員、宗教指導者が集う希望前進大会で世界平和をともにけん引してきた盟友のトランプ大統領とともに演説する機会をいただいたことを光栄に思います」と、教団の指導者が進める世界平和運動に賛意を示していました。

一方、教団の田中会長は「世界平和統一家庭連合の会員として安倍元首相が登録されたこともありませんし、また顧問にもなったことはございません」と説明しました。

「なぜ犯人(容疑者)が安倍元首相と当法人と(が)つながっていると見たかということですが、おそらく、これは臆測でありますが、当法人と友好団体の区別がついていなかったのではないかと思います」との見解を示しました。

今回の事件について、友好団体は日本テレビの取材に対し「2006年5月に行った行事に祝電を送ってくれたのがきっかけと聞いている。選挙活動への協力を行ったことはありません」とコメントしています。

■恨みは…教団会長「直接示されず」

警察の調べに、山上容疑者は「教団に恨みを持っていた」などと供述しています。

田中会長は会見で「(容疑者)本人から、(教団の)今いるメンバーで直接恨みを示された方はいません」と話しました。

その上で「容疑者の動機が解明され、動機の根源に(恨みが)あるんだとなった場合は、私たち教団においても、とても重く受け止めていかなければいけない事実だと考えております」「(警察から)要請があれば全面協力していきたい」と述べました。

(7月11日『news zero』より)

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