【解説】今さら聞けない!5類になったらどう変わる?
新型コロナウイルス感染症の感染症上の類型について、政府は「2類相当」から「5類」に見直す場合、屋内でのマスク着用を原則不要とする方向で調整を進めていますが、「5類」に変える場合、どのようなことが想定されるのかまとめてみました。なお、対策の詳細は、政府が検討中でまだ決まっておらず、完全に5類と同じにはならない可能性があります。
■マスク着用は?
海外ではマスクを外す状態が増えています。日本でも、政府は5類に変更した場合、屋内でのマスクの着用について原則不要とする方向で調整を進めていることがわかりました。実は、マスク着用や3密(密集、密接、密閉)の回避は、法律の規定ではなく、政府や自治体がまん延防止のため、協力を要請してきました。
新型コロナウイルスは、せきなどで出る「しぶき」だけでなく、感染者(発症の数日前でも)の吐く息に含まれ、小さい粒子となって空気中にただよい、換気が悪い空間で特に感染が広がる、など専門家の分析を受けてのものです。現在でも、マスクは、屋外で駅まで歩くとか、屋内でも図書館や美術館で会話がない場合などは着ける必要なし、とされています。
厚労省HP https://www.mhlw.go.jp/content/000942601.pdf
■5類に変わるとどうなるのか?
感染症法では、色々な感染症について、感染力やかかった時にどの程度重くなるかなどをもとに、最も重い1類(エボラ出血熱、ペストなど)、それにつぐ2類(結核、SARSなど)から5類(インフルエンザ、梅毒など)までに位置づけ、それぞれの類型ごとにとるべき対策が決められています。新型コロナウイルスは、現在、これらとは別の「新型インフルエンザ等感染症」に位置付けられていて、対策としては、二番目に厳しい「2類」でとられているものが多いため、「2類相当」と呼ばれています。
■「2類」と「5類」の違いは?
では、仮に、最も軽い「5類」(インフルエンザなどが該当)に変更した場合、法律の規定上はどのような対策があるのでしょうか?
まず、現在、新型コロナ感染者に対しては、都道府県知事が入院を勧告できますが、5類ではできません。入院をお願いするため、入院費や薬代(新型コロナの新たな治療薬は高額なものが多い)など医療費はすべて公費でまかなわれ、患者の負担はありませんが、5類に変われば、一部自己負担になる可能性があります。
また、現在行われている感染者の就業制限の規定(厚労省が定める期間は就業してはならない)は5類にはないほか、2類にはないものの、新型コロナ感染者には課されている外出自粛(自宅、ホテルなどでの待機)は、5類では求めていません。新型コロナは感染力が高く、専門家は、こうした制限がなくなると、クラスター発生のリスクが高まると指摘しますが、類型見直しで、就業制限や外出自粛をどうするのかはまだ決まっていません。
■ワクチン無料接種は?
新型コロナワクチンは「特例臨時接種」として全額公費、つまり無料で接種できますが、仮に5類になり、この位置づけも変更されれば、自己負担になる可能性もあります。しかし、インフルエンザワクチンも、高齢者は重症化リスクが高いため、自治体の補助によって無料接種となっている例があり、新型コロナのワクチンにもこうした対策がとられる可能性もあります。
■医療はどうなる?
現在、新型コロナを診療する医療機関は限られていて、症状がある場合、発熱外来などを受診する必要があり、入院患者を受け入れる病院も限られています。規定上は、5類になれば、すべての医療機関で受診や入院できますが、類型見直し後も、一気にすべての医療機関が対応するとはならない可能性があります。そのため、発熱外来の仕組みやコロナ病床への補助金、自治体による入院調整などは残る可能性があります。治療薬やワクチンを国が製薬会社と交渉して買い上げ、配分している仕組みも維持するのかが課題です。
■感染者の把握
新型コロナの感染者については、医師が保健所にただちに届け出ることが義務付けられていますが、感染者の増加をうけて、患者の「数」を届け出る「全数把握」は続いていますが、属性などは、高齢者や妊婦などに限って簡素化したものを届け出るように、変更されています。
一方、5類になると「全数把握」ではなく「定点把握」となり、たとえばインフルエンザでは、指定された全国約5000カ所の医療機関からのみ報告されています。類型見直しで、「定点把握」に切り替えるのかはまだ決まっていません。
■専門家は…
厚労省のアドバイザリーボードの専門家は、新型コロナはインフルエンザとは「明らかに違う」と指摘しています。主に冬に流行するインフルエンザに対し、コロナは一年を通して流行を繰り返し、流行サイクルの予測が困難であること、治療薬も、飲み合わせが禁止されている薬が多く、タミフルなどのように、簡単に投与できるわけではないと指摘しました。
そして、当初のような重い肺炎はワクチンや薬で抑えることができるようになったが、新型コロナの感染が高齢者らの持病の悪化を引き起こし、死に至ることも増えるなど、まだわからないことが多いと説明し、一気に対策を変えるのではなく、「必要な準備をすすめながら、段階的な移行を」と求めています。
実態としては「2類相当」よりも緩和された対策も多い中、仮に「5類」に変えた場合、どこまで大きな変化が見られるかは未知数です。変更の時期についても、今後の感染状況や変異株の動向を慎重に見極める必要があり、難しい判断となります。