自爆 ~元警部の告白~
覚醒剤密輸に拳銃所持。元悪徳警部が違法行為を自爆する。
「130キロの覚醒剤と2トンの大麻…」「シャブを入れるから通させてくれ、通関させてくれ。やったら拳銃出すから」
稲葉圭昭。総菜の玉子焼きを作るのが仕事。かつて北海道警察の警部だった。「銃器対策課のエース」と呼ばれた男。不法所持の拳銃を次々と摘発。押収した拳銃は100丁を超える。だが、エースの破局は突然にやってきた。覚醒剤所持、及び使用。そして自身で拳銃までを所持。
稲葉元警部「警察官としてというより、人としてやっちゃいけないことをやっちまったんだから」
覚醒剤の密売にまで関わり、懲役9年の刑務所暮らし。裁判では、拳銃の押収方法にも問題があったと“やらせ捜査”を陳述した。
稲葉元警部「100丁ぐらい押収していると思うんですけど、ほぼ9割ぐらいはヤラセだったと思う」
1976年歓楽街・すすきの交番に勤務。「マル暴」刑事となり暴力団との関係は深まっていく。93年発足したばかりの「銃器対策室」へ異動。この時全国の警察は、銃の摘発を競うようになっていた。
稲葉元警部「当時はとにかく拳銃をあげろ」「手段は問わない。必要であれば買ってもいいからと」
警察は縦社会。上から降ってくる言葉を、真に受けた。S(エス)と呼ばれる暴力団組員から入手した機関銃を自らコインロッカーに入れ通報したことも。
稲葉元警部「自分が役所(警察)に電話をかけて『893番に機関銃が入っています。元暴力団ですけど』って」「次から次と(拳銃を)コインロッカーに入れるようになりました」
稲葉たちの“やらせ捜査”もあり、道警の押収数は、過去最高に達する。暴力団員になりすまし、銃の取引に参加したこともあるという。
稲葉元警部「Sと向こう(暴力団員)は2人かな」「トカレフ持ってきて」
そこで予期せぬトラブルが起こった。
稲葉元警部「自分の耳を見た相手方が『おまえサツだろう』と」
柔道で潰れた稲葉の耳を見て、警察官と怪しんだ。
稲葉元警部「拳銃を抜かれて、怖い思いをした」「小便ちびりそうになりましたね」
密輸の手助けをしたことも…
稲葉元警部「130キロの覚醒剤と2トンの大麻を密輸させる見返りに200丁の拳銃を押収させるという約束」
コンテナの中には覚醒剤が隠されおり、稲葉の上司が、税関に根回ししたという。末端価格約100億円の覚醒剤を受け取った後、Sは姿を消した。
稲葉元警部「部屋に行ってももぬけの殻で。ああこれは飛んだなと」
警察が押収できるはずだった200丁の拳銃は…
稲葉元警部「出ないです。それっきりですね」
暴力団にだまされた、この事件…当時、世間に報じられることはなかった。
稲葉元警部「(覚醒剤)130キロ、(大麻)2トンって簡単にいいますけど、ものすごい量なんです。それを拡散させてしまったのは北海道警察だ」
稲葉元警部「(拳銃捜査)こういうことをやったんだよ、やってしまったんだよということを語り継いでいった方がいいんじゃないかなと思いますよ。これからの警察官に対しても」「まあこんなことをやる人間はもういないでしょうけど」
警察を離れたいまだからこそ、語れることがある。
*2019年6月2日放送 NNNドキュメント『自爆 ~元警部の告白~』(日本テレビ制作)を再編集しました。完全版はHuluにて配信中。