【子宮けいがんとワクチン】キャッチアップ接種 20代でも打つべき?──イギリス在住専門医に聞く

子宮けいがんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染するのを防ぐワクチンについて、イギリス在住の江川長靖氏(ケンブリッジ大学病理学部)への取材シリーズ第2回は、日本で来年(2025年)3月まで17歳から27歳の女性を対象に行われている、無料の接種=キャッチアップ接種についてや、過去に報告された接種後の体調不良をどう考えるかなどをお伝えします。
■25歳女性が接種して効果があるのか?
子宮けいがんの原因となるような高リスクのHPV(ヒトパピローマウイルス)は15種類程あります。日本でキャッチアップ接種(注:2024年度に17歳から27歳になる女性も無料で接種できる)の対象の人で、すでに一部の型のHPVに感染していても、ワクチンが対象としている型(7種ある)でまだ感染していないものがあるならば、今後それらに感染する可能性を予防することができますので、一定の利益、効果があるだろうと推定できます。(注:どの型に感染していないかわかる検査はありません)
例えば25歳の人が今接種しても、その前に(性行為などを通じて)感染していた場合には、ワクチンを接種しても、それを治せる・感染をなくしてしまうわけではないので、ワクチン接種前に感染したものから高度異形成(がんの前段階)やがんが発症してきます。
ワクチンはあくまでも、接種後の新しい感染に対してのみ有効です。つまり、キャッチアップ接種をした場合も、15年くらい・特に40歳くらいまでは、接種しなかった場合と比べてがんが大きく減ることはないと考えられます。ワクチンを接種しなかった時と同様に定期的な検診が重要です。集団で見た場合、キャッチアップ接種対象者は定期接種で(小5から高1相当の女性が)接種した時と比べて、半分くらいの効果があると考えていいでしょう。
■ワクチン接種が進むと検診が変わる?
WHO=世界保健機関は、15歳までにワクチンを接種した集団の初回検診年齢は30歳でよいだろうとしています。なぜなら、ワクチンだけで20代で発症する子宮けいがんの罹患(りかん)率が9割減るからです。
実際にイタリアなど検診の推奨を30歳以降に切り替えた国も出始めました。日本は、検診率はさておき、20歳から(他国より頻度の短い2年に1度の)検診を推奨するなど、膨大な医療リソースを検診に使っていますが、将来はワクチンでかなりの部分を置き換えることができるはずです。
ワクチン接種によって、検診の手間や負担、そこでがんの前段階の高度異形成が見つかり、治療しようか悩むことも減らせる。検診システムが変わり、負担が小さくなる可能性がある。議論されることは少ないのですが、これも重要なことだと思います。