震度5強 ツイッターは不可欠な情報ツール
今月7日の震度5強を観測した地震発生後、情報収集のツールとして、ツイッターが多く使われました。被害状況や電車の運行再開の速報などで活用され、専門家は「マクロで正確な情報はマスメディア、ミクロで迅速な情報はSNSで収集している」と分析しています。
■1分間で推定15万件の「地震」関連ツイート
今月7日の夜、千葉県北西部を震源とした地震があり、東京・足立区などで震度5強を観測しました。東京23区内で震度5強を観測したのは10年前の東日本大震災以来で、交通機関の運転見合わせが相次ぎました。
多くの帰宅難民が発生したほか、翌朝の通勤通学にも大きな影響が出るなか、ツイッターが人々の情報収集ツールとして大きな役割を果たしたことが分かりました。ツイッター社によりますと、地震発生直後の午後10時42分から1分間に投稿された「地震」に関するツイートは推計15万件以上、その後も投稿が続き、地震発生直後からの1時間で約180万件(推計)に上りました。
人口が多い首都圏での災害ということもあり、短時間に非常に多くの人がツイッターを使って、情報収集などをしたことになります。
■新首相もツイート連投、防災情報は急速に拡散
岸田文雄首相も自身の公式ツイッターで、地震発生から約10分後に「最新情報を確認しつつ、命を守る行動を取ってください」、30分後には「官邸に入ります」と立て続けに投稿。テレビやラジオなど従来の伝達方法にとどまらず、ツイッターなどのSNSも活用した形での情報発信を行いました。この岸田首相の2つのツイートは、合わせて約1万3800件リツイートされました。
また、政府機関や自治体などは、被害状況や地震発生後の注意点など、防災に役立つ情報を次々と公式ツイッターに投稿。そうした情報は続々とリツイートされ、瞬く間に拡散したとみられます。
■運行再開の情報 投稿が配信より早かった
地震の影響で都内を走る電車は、ほぼすべての路線で一時運転を見合わせました。帰宅のために乗車していた人が多い時間帯だったため、個人アカウントから電車の運行状況に関するツイートが相次ぎました。
運行状況については各交通機関、各メディアも情報を更新しましたが、そのスピードが、ツイッター上に次々と投稿される個人が発信した情報に追いつかないという現象が起きました。
実際に、東京と千葉を結ぶJR京葉線は、地震直後から運転を見合わせ、翌朝も始発から運休が続いていました。JR東日本は、当初、午前9時頃の再開を予定していましたが、実際は、予定の時刻より1時間半ほど早い午前7時半すぎに運転を再開しました。
JR東日本は午前7時41分に運転再開の情報を配信。しかしツイッターでは、その10分ほど前に「京葉線が再開した」という個人アカウントからの投稿があり、その後も駅の電光掲示板の写真を載せたツイートなど、運転再開を知らせる投稿が相次ぎました。結果的に現場からリアルタイムに情報が発信されたことで、ツイッター情報が「速報」となったかたちです。
こうしたなか、ツイッター上では「最新情報はツイッターで検索した方がいい」といった趣旨の内容のつぶやきもみられました。一方で、再開していない路線で「再開した」という投稿も見られるなど、不正確な情報もみられました。
JR東日本は「当社から配信している運行情報(公式ツイッター)は、正しい情報を広くお客さまにお伝えできる反面、輸送障害の影響範囲により配信に時間を要することがあります。正式な情報については運行情報(公式ツイッター)を参照していただきたいと思いますが、引き続き、正確かつ迅速な情報発信に努めてまいります」とコメントしています。
■今回もデマ投稿…打ち消す投稿も
災害時に問題となる「デマ」の投稿。今回もツイッター上では、「人工地震」や「井戸に毒が入れられた」など、広く拡散はしなかったものの、悪質なデマが流れました。ただ、そうしたデマ情報をうのみにしないよう注意を促すツイートも数多く投稿されるなど、自浄作用といえるような動きもみられました。
■メディアとSNSの使い分け進む
災害時のツイッターの有用性について、ソーシャルメディアに詳しい山口真一・国際大学GLOCOM准教授は、「ユーザーは、マクロ(全体的)で正確な情報はマスメディアから、ミクロ(詳細)で迅速な情報はSNSから収集している」と、必要な情報が何かによってマスメディアとSNSを使い分けていると分析しています。
また山口准教授は、「災害時に有用な情報が多ければ多いほど、デマも多くなることがわかっている。情報をうのみにせず、真偽不明な場合は拡散しない、また政府アカウントなど一次情報をフォローすることがあふれる情報に惑わされないポイントだ」としています。
※グラフは今月7日の分別「地震」ツイート数(投稿の10%を抽出)