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天皇陛下とロイヤルウエディング 外国王室の結婚式で深めた交流 【皇室 a Moment】

2022年6月19日 14:34
天皇陛下とロイヤルウエディング 外国王室の結婚式で深めた交流 【皇室 a Moment】

■“花嫁が幸せになれる”というジューン・ブライド

――2つの写真はどちらも結婚パレードの瞬間ですが、何か共通点があるのでしょうか?

6月の結婚、「ジューン・ブライド」です。右側は言うまでもなく、1993(平成5)年6月9日に結婚された天皇皇后両陛下。そして、左側は2010(平成22)年6月19日に結婚したスウェーデンの皇太子ヴィクトリア王女の結婚パレードです。

スウェーデンの首都ストックホルムで行われた皇太子ヴィクトリア王女とダニエルさんの結婚式には、皇太子時代の天皇陛下も招かれ、参列されました。6月の結婚、“ジューン・ブライド”は、“花嫁が幸せになれる”と言われて人気です。私も、現地でこの結婚パレードを見ましたが、スウェーデン国民の熱狂的なお祝いが強く印象に残っています。

そして、天皇皇后両陛下は、この6月でご結婚から29年、来年は“真珠婚式”の30年の節目を迎えられます。

■結婚パレードの直前に上がった雨

まず、両陛下のジューン・ブライドを振り返ります。

6月9日は朝から雨でした。当時の皇太子さまと小和田雅子さんは、皇居の賢所で「結婚の儀」に臨んだ後、皇居から赤坂御用地までの4.25キロをオープンカーでパレードし、沿道のおよそ19万人から祝福を受けられました。

当時、私は宮殿の車寄せ前で出発の場面を取材しておりましたが、パレードの直前に雨が上がってさーっと薄日がさし、空までもが祝福していると思ったものでした。

――お二人が幸せな笑顔で輝いているのが今でも印象的ですけれども、この結婚に外国王室の方はいらっしゃったんでしょうか?

いいえ。今なら外国王室の方々が招かれるでしょうが、当時はそのような交流はまだありませんでした。一方で、日本から外国王室の結婚に出席された例はあります。

“世紀のカップル”と言われた1981年のイギリスのチャールズ皇太子とダイアナ元妃のロイヤルウエディングです。皇太子ご夫妻だった上皇ご夫妻が英国の招待を受け、出席されました。上皇ご夫妻が外国、王室の結婚式に出席された例はこの1度です。一方、今の天皇陛下はかなりの数に上ります。

この一覧のように、天皇陛下は浩宮時代に2回、皇太子となって7回、合わせて9回、外国王室の結婚式に出席されています。

最初に出席された結婚式は、イギリス留学中の1984(昭和59)年9月、ベルギーの今のフィリップ国王の妹アストリッド王女の結婚式でした。

■ホームステイ先のお嬢さんをエスコートされたダンスパーティー

次に出席されたのが、離婚しましたが、イギリスのチャールズ皇太子の弟アンドルー王子の1986年の結婚式です。陛下にとっては、留学を終えて帰国されてから約9か月ぶりのイギリス再訪問でした。

この時、催されたダンスパーティーには、ダイアナ元妃やエリザベス女王、アメリカの大統領夫人などの顔ぶれの中に、タキシードの天皇陛下の姿がありました。この夜、陛下がエスコートされていたのはイギリス人女性、留学中のホームステイ先のお嬢さんでした。

――陛下は独身時代ということですが、少しにこやかですけども緊張されていますね。

少し照れた感じに見受けられます。

■雅子さまと一緒に出席されたベルギー皇太子の結婚式

天皇陛下が皇太子となり、やがて結婚して、初めて皇后雅子さまと一緒にご夫妻で出席されたのが、1999(平成11)年12月、ベルギーの皇太子、今のフィリップ国王の結婚式でした。

国王は陛下と同じ年です。マチルド妃は子どもの吃音治療にあたっていた人で、テニスで知り合ったそうです。ベルギー王室が初めてベルギー国内から迎えたお相手でもありました。

昼食会での記念撮影では、新郎新婦を囲んで、当時のオランダのベアトリクス女王やスウェーデンのカール16世グスタフ国王らが並び、後ろの方に皇太子ご夫妻だった両陛下が、スペインのフェリペ皇太子らと並ばれました。国王や女王夫妻だけでなく、その息子の皇太子など、親子、一家で出席していて、まるで親戚の結婚式のような雰囲気でした。

この時は、両陛下お二人そろって出席されましたが、その後、皇后雅子さまは体調を崩され、陛下お一人のご出席が続いていきます。

2002(平成14)年2月、陛下は、皇太子だったオランダのウィレム・アレクサンダー国王の結婚式に出席されました。お相手のマキシマ妃は南米のアルゼンチン出身で、銀行に勤めていた人でした。

記念撮影では、各国の王族達に囲まれて陛下がいらっしゃいます。

■デンマークとスペイン 8日間で2つの結婚式を“はしご”

2004(平成16)年5月には、結婚式の"はしご"もありました。

まず5月14日にデンマークのコペンハーゲンでフレデリック皇太子の結婚式に出席されました。お相手のメアリー妃は、オーストラリアのシドニーの不動産会社で勤務していた人で、シドニー・オリンピックの時に訪れた皇太子と出会って恋を実らせました。

この後、ポルトガル訪問を経てスペインに入り、5月22日、マドリードで当時皇太子だったフェリペ国王の結婚式に出席されました。フェリペ皇太子のお相手レティシアさんは、国営放送の元ニュースキャスターで、離婚歴のあることでも話題になりました。

――5月、同じ月にヨーロッパで違う国の王室の方が結婚式を挙げられるというのはなかなかないことですよね。

夏至にすこしずつ近づいていく、いい季節ということなのかもしれません。

――陛下も楽しんでいらっしゃる様子が分かりますし、同じメンバーが集う場でもあったかも知れませんね。

そうですね、ついこの間お会いした方々とまたスペインでお会いする、ますます交流が深まるという感じですね。

■参列者と王宮のバルコニーに立たれたスウェーデンの結婚式

2010(平成22)年6月19日に出席されたのが、冒頭に紹介したスウェーデンの皇太子であるヴィクトリア王女の結婚式です。朝の3時ごろから夜11時ごろまで明るい白夜の季節。国中がはなやぐ中、新婚の皇太子夫妻は、“北欧のベニス”と言われる首都ストックホルムを、馬車と船でパレードしました。

そして、二人は王宮のバルコニーに立ち、市民に熱狂的に迎えられます。ヴィクトリア皇太子のお相手は、スポーツジムのトレーナーだったダニエルさん。皇太子は、摂食障害で苦しんだ時期があり、筋肉を戻すために通ったジムで出会いました。

6月19日は、父親のカール16世グスタフ国王と母・シルビア王妃が結婚した日でした。ヴィクトリア王女は両親の特別な日を選んで結婚式を挙げられたんです。

バルコニーでは、天皇陛下も他の国の王族方と並んで市民の前に立たれました。

――陛下は写真も撮られていますね。たくさん詰めかけた方々をカメラに収められていたんですね。

バルコニーの前は本当に大勢の人々で埋まっていましたので、あそこから撮られると、かなり迫力のあるショットになったんじゃないかなと思います。

――井上さんはお二人のパレードを沿道で見ていたそうですね。

はい。沿道で見ていました。この少しピントの甘い写真がその時に私が撮ったものです。早めの夏休みを取ってスウェーデンに向かいまして、早朝から6時間ほど待って王宮近くの最前列で結婚パレードを見ました。隣のグループに聞かれて「日本から来た」と伝えますと、「ダニエルはナイスよ。二人はダニエルの経営するスポーツジムで出会ったの」と熱く語り出し、「遠くから来てくれたから、アイスクリームをご馳走するわ」と、買いに走ってくれたのが良い思い出です。

――素晴らしい交流があったんですね。そして、女性の目線からするとやはり晴れ姿、ウエディングドレス姿、ティアラにも目が行きます。

「カメオ・ティアラ」と呼ばれる品です。カメオは貝殻や瑪瑙(めのう)、大理石などに浮き彫りを施した装飾品ですが、このティアラは、7つのカメオをパールで縁取ったデザインが特徴です。1809年ごろ、フランスのナポレオンの皇妃、ジョセフィーヌが作らせた品で、世界で使用されるティアラでは一番古いと言われているそうです。

■アジアではブルネイ皇太子の結婚式へ

――陛下は、ヨーロッパだけでなくアジアの王室の結婚式にも出席されていますね。

1回あります。それがブルネイです。ブルネイはフィリピンの南西、カリマンタン島のマレーシアの一角にあります。 2004(平成16)年9月、陛下はボルキア国王の長男、ビラ皇太子の結婚式に出席されました。

皇太子のお相手は民間の17歳の高校生でした。それまでの王室の結婚は親族同士のお見合いが主流だったそうですが、伝統も薄れ、民間の国家公務員の娘さんと結婚したそうです。

――金色の装飾が印象的でとても豪華な結婚式ですね

ブルネイは石油や天然ガスと言った資源が非常に豊富で、ボルキア王家は非常に裕福な家として知られていますので、その表れではないでしょうか。

■結婚式を通じて各国の王室と親密な関係を築く

――陛下が出席されてきた結婚式をみてみると、どの国でも、国民から熱狂的に祝福されているのが印象的です。

みてきて感じるのは、ヨーロッパの王室の方々の結婚相手の多くが、一般の方々ということです。銀行員、不動産会社勤務、元ニュースキャスター、スポーツジムのトレーナー。時代の変化がうかがえます。本当に好きな相手ならば国籍や家柄に関係なく迎える、陛下がそうでしたが、自分で選んだ人と結婚するという姿勢が、各国とも国民から祝福されるのだと思います。

陛下は、2004年、デンマークとスペインの結婚式の後、「感想」を発表され、各国の王室メンバーと旧交を温めることができたことをよろこび、同世代や次世代の王室の人たちと親密な関係を築いていきたいと述べられています。

ヨーロッパの王室は互いに親戚関係にあり、結婚式には、国王や女王、その息子の皇太子夫妻、さらにその子どもと、2世代、3世代にわたるロイヤルファミリーが集まります。パーソナルな交流も深められ、いい関係がそこで生まれていくのだと思います。結婚式への出席の意味は大きいと思います。

その交流は、日本の「即位の礼」の出席者にもうかがえます。令和の「即位の礼」には、ベルギーのフィリップ国王夫妻、オランダのウィレム・アレクサンダー国王夫妻、スペインのフェリペ国王夫妻、スウェーデンのヴィクトリア皇太子が父・カール16世グスタフ国王と親子で、そしてデンマークのフレデリック皇太子夫妻が出席しましたが、陛下が結婚式に出席して祝福された人たちです。

かつてヨーロッパには、外国の戴冠式や即位式に君主は出席しないという“慣例”がありました。令和の「即位の礼」ではもう“慣例”は関係なく、陛下が親密な関係を育まれてきた同世代の各国の君主たちが、駆け付けてくれたという印象です。

――「即位の礼」に各国の王族の皆さんがお祝いに駆けつけてくださったのは、本当に心の交流の積み重ねがあったからこそだったのですね。

ただお祝い行事に出席ということではなくて、やはり行ってお祝いしたいという、これまでの付き合いがあってのことだと思います。

――陛下のこうした交流が、日本に暮らす私たちと世界の人たちとの心の距離をぐっと縮めてくださっているようにも感じました。

【井上茂男(いのうえ・しげお)】
日本テレビ客員解説員。皇室ジャーナリスト。元読売新聞編集委員。1957年生まれ。読売新聞社で宮内庁担当として天皇皇后両陛下のご結婚を取材。警視庁キャップ、社会部デスクなどを経て、編集委員として雅子さまの病気や愛子さまの成長を取材した。著書に『皇室ダイアリー』(中央公論新社)、『番記者が見た新天皇の素顔』(中公新書ラクレ)。