深刻化する「ペイハラ」医療従事者などへの迷惑行為 刑事責任が問われる可能性も
医療現場での迷惑行為やハラスメントを意味する「ペイハラ」が深刻な問題になっています。その内容によっては、刑事責任を問われる可能性も。実態を調査しました。
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「ペイハラ」を知っているか街で聞いてみました。
「知らないです」
「ペイペイハラスメント?」
「ペイントハラスメント?」
「ペイなので何か支払ってほしいとかの強要ですか?」
30人に聞いたところ、全員が「知らない」との結果になりました。
「ペイハラ」とは「ペイシェントハラスメント」の略で、患者やその家族による医療従事者への暴言や暴力、迷惑行為のことをいいます。
言葉は知らなかったものの、「ペイハラ」を見たという人は――
「ペイハラ」を見た人
「お見舞いに行ったときに隣のベッドの方が看護師に暴言。すごい上から目線で『これしろ!』『態度がおかしい!』」
「ペイハラ」の実態とは…。現場の医療従事者に話を聞くことができました。
病院事務(50代)
「ルール外の医師面会・診療要求、繰り返し要求される。(自分の)名前を言われて『バカ』『アホ』」
患者本人ではなく家族からの「ペイハラ」もあるといいます。
医師(50代)
「『何やっているんだ!』『うまくいってないじゃないか!』『この病院どうなってんだ!』『お前の治療はどうなんだ!』かなり厳しい強い言葉で面談室で怒鳴られた。5~6時間続きました」
ほかにも、待合室で患者に対応していたところ、突然ほおを平手打ちされたという職員や、患者に腕を引っ張られて手の甲にキスをされたという看護師からの証言もあるといいます。
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各地で深刻化する「ペイハラ」。長崎県の医師会が2020年に行った調査では、約7割の病院が「ペイハラがあった」と回答しました。看護職員への被害が最も多く、「執ような要求」や「暴言」などの被害が多くみられました。
4年前から「ペイハラ」対策に取り組む、埼玉県の春日部市立医療センターの待合室や受付には、予防策として「ペイハラ」をしないよう呼びかけるポスターが貼られていました。
「ペイハラ」対策に取り組む蜂矢隆彦副院長
「暴力や暴言、大声を出しちゃいけません。過剰な要求をされても困ります」
中には「撮影禁止」と書かれたものもあります。
――誰が何を撮影した?
蜂矢隆彦副院長
「(撮影者は)入院患者。特定の看護師に対して写真を撮影して、『この病院にはかわいい子がいる』とネット上にアップする」
また、患者らによる暴力から身を守るための対策もしているといいます。
蜂矢隆彦副院長
「さすまたチームをつくって訓練もしています」
厚生労働省は、「ペイハラ対策」の情報を医療機関に周知することや、警察との連携を推進することを都道府県に呼びかけ、患者から繰り返し迷惑行為などがあった場合には、診療の求めに応じなくてもよいとする通達をしました。
専門家は「ペイハラ」の内容によっては、刑事責任を問われる可能性もあると指摘します。
「ペイハラ」問題に詳しい福崎博孝弁護士
「『傷害罪』『暴行罪』『脅迫罪』『住居侵入罪』『不退去罪』病院の業務を妨害することで『業務妨害罪』」
病院側から損害賠償を求められるケースもあるといいます。
ただ、「ペイハラ」は患者側だけの責任ではなく、病院側にも反省する点はあると指摘しました。
福崎博孝弁護士
「(病院側が)感じが悪い、きちんとした対応をとらない。不満がずっとたまっていって、最後(患者側が)爆発する」
「ペイハラをなくすためには、患者と医療従事者がお互いの立場を尊重する姿勢が大切だ」としています。