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キャンセル待ち「2500組」……過疎の町へ“保育園留学”人気のヒミツ 「普段できない経験を」「地域の活性化にも」

2023年6月2日 10:36
キャンセル待ち「2500組」……過疎の町へ“保育園留学”人気のヒミツ 「普段できない経験を」「地域の活性化にも」

子どもを地域の保育園に通わせながら1~3週間家族で滞在する「保育園留学」が人気です。全国19か所で展開され、キャンセル待ちは約 2500 組に上ります。長野県の保育園で取材すると、注目される背景には地方ならではの魅力があると分かりました。

■兵庫県から長野県へ2週間滞在

長野・上田市の保育園。ここに来たばかりの景太くん(2)は、2週間限定で通うといいます。父親は「保育園留学という、長野県上田市の家に2週間滞在する形で…」と話します。

子どもを地域の保育園に通わせながら1週間から最大3週間、家族で滞在できる「保育園留学」を利用しています。景太くんの自宅があるのは兵庫・伊丹市。なぜ保育園で「留学」なのか。決めた背景には、地方ならではの魅力がありました。

■身近な田んぼに興奮…両親は「新鮮」

伊丹市の自宅の周りではあまり見ることがないという田んぼに、道路を歩いていた景太くんは「水がある」と興奮している様子。母親は「こういう道は伊丹(の自宅近く)にはないので、なんか新鮮だよね」と言い、父親も「これは新鮮」とうなずきます。

景太くんは道路脇の斜面にも登り、「パパも来てー」と楽しそうです。

母親
「自然豊かな環境で、普段の住まいでは経験できない生活から、いろんなことを経験を積んでほしいなと思います」

自然豊かな環境に刺激を受けてほしいと、親の育休期間を利用して「保育園留学」をすることに決めました。

■決め手は「自然」と「英語教育」

保育園留学は、約2500組がキャンセル待ちをしているなど注目されています。北海道・厚沢部(あっさぶ)町や岐阜・美濃市など全国19か所に広がっています。

上田市の保育園には、都内から来たエイトくん(3)とユメちゃん(5)の家族も通っていました。決め手は自然だけではありませんでした。

園では先生が「Good morning!」と呼びかけ、園児たちは「Good morning!Mr.Jon」と応じました。英語の教育に力を入れているといいます。

母親
「英語を浴びられるだけでもいい機会だなと思っています。12月にも北海道の保育園留学をしたんですけど、(上田市でも)子どもにいろんな経験をさせたいというところが一番で」

■都内からの家族は2回目の「留学」

エイトくんとユメちゃんの保育園留学はこれが2回目。前回の北海道では、初めての雪原で雪遊びをしました。上田市でも新しい経験をしてほしいと、留学を決めたといいます。

そこでエイトくんとユメちゃんの家族は、市内の「東山観光農園」で初めてのイチゴ狩りを体験しました。イチゴを手に取ったエイトくんは「太ってる!」、ユメちゃんは「こっちおいしい」と声を上げて喜びました。

■地元も歓迎…宿泊施設はモデルハウス

こうした保育園留学を、地元の人はどう受け止めているのでしょうか。

上田市の農園関係者
「特にお子さんがいる世代が積極的に入ってきていただけるのは、地域の活性化にもつながると思いますので、経済的な部分でも大変有意義に働くのかなと思います」

過疎化が進んでいる上田市。「保育園留学をきっかけに、将来的に定住してくれれば」という期待を寄せているといいます。

そこで地元の企業も協力。ハウスメーカーが、モデルハウスを宿泊施設として提供しています。子どもが保育園にいる間、両親はこの家でリモートワークをしています。

■短期間でも仲良しに…名残惜しい別れ

2週間の保育園留学の最終日。先生は「Today is the last day(今日が最後の日です)」と言い、エイトくんとユメちゃんのためのお別れ会が開かれました。友達から絵のプレゼントを渡されたユメちゃんは「Thank you」と受け取りました。

父親が「(保育園来るの)最後だよ」と伝えると、エイトくんは「最後じゃないの!」と両親の腕を引っ張りました。父親は「最後なんだよ」となだめようとします。エイトくんは帰るのが名残惜しい様子。2 週間でもたくさんの友達と思い出ができました。

母親
「友達見つけて喜んだりとか、短い期間で仲良くなったんだなと感じました。(今までと違う)環境というのもいい刺激になってたらいいなって思います」

(6月1日『news zero』より)