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相次ぐ半導体企業の進出『熊本の地下水は守られるか?』最新データもとに考える

2024年6月14日 14:20
相次ぐ半導体企業の進出『熊本の地下水は守られるか?』最新データもとに考える
半導体企業の進出に伴い地下水が減少することを防ごうと、大津町や菊陽町などの農地に水を張って、地下に浸透させる事業が進んでいます。将来的に熊本の地下水は守られるのか?最新のデータをもとに考えます。

最先端の水循環シミュレーションシステムで表された熊本地域の水の流れです。青い点が川や湖などの「地表水」、赤い点が「地下水」です。赤の地下水が、白川中流域から熊本市側に集まっていることがわかります。

断面図を見ると、上流、中流部で浸透した雨水が、地下水となって江津湖付近で湧き出しています。

水の循環を専門に研究する熊本大学の嶋田純名誉教授は、熊本地域の地下には水をためやすい構造があると話します。
■嶋田純 熊本大学名誉教授
「阿蘇の火砕流の堆積物が、地下水の帯水層という入れ物をつくっている。火砕流は非常に粗い粒子のものですから、間隙が大きいので水を蓄えやすい」

大津町や菊陽町の白川中流域では、この20年間、毎年5月に農地への水張り事業が始まります。多くの地下水を使用する半導体工場の誘致が加速する中で、水を人工的に地下へ浸透させる取り組みが注目されています。これを可能にするのが、「ざる田」と呼ばれてきたこの地域の農地が持つ「地下水かん養能力」です。

水張り事業に取り組む「おおきく土地改良区」と農家の協力で、農地に水が浸透する様子を見せてもらいました。午前9時の段階で約5センチたまっていた水は、午後6時までの9時間で地面が見えるまで減少しました。この辺りは、平均的な農地の5倍から10倍の水が浸透するということです。

■農家
「ここを30センチぐらい掘ったら砂地なんですよ。麦刈りの後に水を入れても、なかなかたまらないです。吸い込んで」

菊陽町に進出したTSMCは、1日に8500トン、1年間で310万トンの地下水をくみ上げる計画を公表しています。水張り事業で地下水の減少は防げるのでしょうか。おおきく土地改良区では、地下に浸透する水の量を1日に11センチとして、水張りで蓄えられる地下水量を試算しています。

今年度、水張りに参加する農家が農家が大幅に増え、夏場の水張りは800万トン以上増加する見込みです。さらに今年度から新たに11月から翌年2月までの冬場の水張りが始まり、300万トン以上の水が蓄えられる見通しです。

白川中流域の水張りだけで、今年度増加が見込まれる水の量は立野ダムの総貯水量を上回ります。一方、TSMCの年間使用量は立野ダムの半分以下です。

また、白川中流域とは別に、5町村で冬場の水張り事業を行う「くまもと地下水財団」は、昨年度の推定かん養量が400万トンと、前の年度から170万トン増えました。

嶋田純熊本大学名誉教授は、TSMCの取水量についてすぐに慌てる必要はないと見ています。
■嶋田純 熊本大学名誉教授
「それぐらいのレベルだと湧き水が停止するというところまではいかなくて、湧水の量が減るというくらいの状態。それもあまり起こしたくないので、人間がくむ量を増やすなら、浸透してくる量を自然だけじゃなくて人工的に強化しようというのが水田の湛水事業の位置づけです」

湧水量の減少などで地下水に注目が集まった1994年には、熊本地域で2億5000万トン近い地下水がくみ上げられていました。最近は1億6000万トン台で推移しています。

熊本県は去年、熊本大学との協働で熊本地域の最新の推定地下水量を試算し、871億トンと公表しました。このうち主に利用される第1・第2帯水層だけで推定100億トン。熊本地域で1年間に使われている地下水量の60年分です。

今後も安心して熊本の地下水を使い続けることはできるのでしょうか?嶋田名誉教授は、将来の気候変動などを視野に、人工的なかん養を続けることがカギになると指摘します。
■嶋田純 熊本大学名誉教授
「最近は雨の降り方、降水量が増えているけれども、実際の降り方は雨量強度が増えていて、大雨が一時にどっと降る。量は多いが浸透する機能は相対的に少なくなっている。そういう意味では、なるべく使った量に見合っただけ、かん養しておくという考え方は意味のある作業になると思います」

熊本県は、地下水保全を目的に今年度から複数の観測井戸の地下水位を県のホームページで確認できるシステムを構築します。

嶋田純 熊本大学名誉教授は、「地下水にこれ以上負荷をかけないような施策を監視するためにも、みんなが関心を持って見守ることは非常に大事だ」と話しています。

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