強制性交疑い医師会元職員の男性 検察審査会が”不起訴相当”と議決 そもそも検察審査会とは?
鹿児島県医師会の元職員の男性が新型コロナの宿泊療養施設で看護師の女性に性的な暴行を繰り返したとして強制性交の疑いで書類送検されたことについてです。男性の不起訴処分を不服とした女性の鹿児島検察審査会への申し立てについて審査会は「不起訴相当」としました。
これは2021年、鹿児島市内の新型コロナの宿泊療養施設で、施設に派遣されていた看護師の女性に対して県医師会の元職員の男性が性的な暴行を繰り返したとして強制性交の疑いで書類送検されたものです。
鹿児島地検は去年12月、証拠が不十分だとして男性を不起訴処分としていました。女性は不服として再捜査などを求めて鹿児島検察審査会に申し立てていましたが、検察審査会は今月3日付で「不起訴相当」と議決しました。
検察審査会は、「不起訴処分の記録や申立書などを精査し、慎重に審査した結果、検察官がした不起訴処分の裁定を覆すに至らなかった」と公表しています。
審査会の判断を受け、男性は「およそ3年かかったがきちんと判断してくれてほっとした。家族も含めて様々な報道で辛い思いをしてきた。民事でもこれまでの主張と変わらず事実をしっかり伝えたい」と話しました。
一方、女性の代理人の美奈川 成章 弁護士は、「極めて残念な結果だが、新しい資料を判断根拠に入れないなど、これまでの捜査対応からして予想はしていた。今後は主戦場の民事で戦っていく」とコメントしています。
ここからは検察審査会について解説です。
まず事件が起きたら、警察や検察庁が捜査し、検察が起訴するのか不起訴にするか処分を行います。起訴となれば裁判所で刑事裁判が開かれますが、不起訴となれば裁判は開かれません。
検察が不起訴と判断したとき、その被害者や告訴・告発した人などが「この決定に納得ができない」と申立てたとき、検察審査会が行われます。今回は、鹿児島地検が男性を証拠が不十分で不起訴処分としたのに対し、女性が納得できないと検察審査会に申し立てました。
検察審査会では、選挙権を持つ国民の中からくじで選ばれた11人が、一般の人の目線でその不起訴処分が正しかったのかどうかを考えます。会議は非公開で行われ、検察庁から取り寄せた捜査記録や申立人が出した資料などをもとに、一般市民の視点で審査していくわけですが、その結果、3つのパターンの判断が出されます。
1つ目が起訴をすべきだと判断する「起訴相当」です。11人のうち8人以上が「これは検察官の不起訴処分は間違っている。起訴すべきだ」と判断したら起訴相当となります。
もう1つが「不起訴不当」です。「検察官の不起訴処分には納得できないから、もう一度詳しく捜査して、改めて起訴、不起訴の処分をすべきだ」という判断です。
「起訴相当」か「不起訴不当」であれば、検察は改めて捜査をすることになります。
ただ、今回出されたのは3つめの「不起訴相当」です。
「検察官の不起訴処分は相当。つまり、検察官が不起訴としたことは一般の人の目から見ても間違ってない。その通りですね」という判断なんです。11人のうち過半数の6人以上が、検察官が不起訴としたことは問題ないと判断したことになります。
この結果、男性はこの件で起訴されたり、刑事裁判にかけられることはなくなりました。