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【心臓移植】「それでも生きていけるなら」“補助人工心臓”でアルバイト生活 移植を待ち5年…夢をあきらめない女性のリアルな生活 (every.しずおか特集)

2023年12月13日 13:34
【心臓移植】「それでも生きていけるなら」“補助人工心臓”でアルバイト生活 移植を待ち5年…夢をあきらめない女性のリアルな生活 (every.しずおか特集)

日本で心臓移植を待つ患者は約900人。 一方で、2022年度の実施件数は88件と、 移植が追いついていないのが実情です。
湖西市出身のフレンチの料理人の女性は、40歳のとき、突然「劇症型心筋炎」と診断されました。生きるための唯一の方法は「心臓移植」だけ。今は「補助人工心臓」をつけながら移植を待つ日々…死と隣り合わせでありながらも、夢の実現のために、希望を抱き続ける女性の今に迫りました。

夢の実現を目前に…まさかの宣告

畑で野菜を収穫するのは、湖西市に住む鈴木彩乃さん47歳。リュックを背負って作業していますが、中には鈴木さんの心臓を助ける機械が入っていて、これがなければ鈴木さんは生きることができないのです。

鈴木さんはフレンチの料理人として20年以上腕を振るってきました。そして7年前、夢であった「農園レストラン」を開くため、自宅で野菜作りを始めた矢先、風邪かと思い受診した病院で思わぬ宣告をされたのです。

(鈴木彩乃さん)
「あなたの病名は"劇症型心筋炎"だと言われたんですけど、意味もわからないし、病名もわからないし、ずっと天井を見てる日々が1週間くらい続きました」

「劇症型心筋炎」”心筋炎”は心臓の筋肉に炎症が起こり、心臓の機能が低下する病気ですが、その中でも、症状が急激に悪化し、死に至る可能性が高いのが「劇症型心筋炎」です。4年間で8回もの入退院を繰り返し、「死」の不安におびえる中、入院していた大阪の病院で「心臓移植なら助かるかもしれない」と言われました。

(鈴木彩乃さん)
「このまま退院になって、また心筋炎になったら死しかないよって言われて。死を意識したことはなかったんですけど、まだやりたいこともたくさんあったし、それでも生きていけるんだったらいいのかな」

まだまだ生きたいと「心臓移植」を受けることを決めた鈴木さん。当初は3年待てばできるといわれましたが、すでに5年が経過し、今なお、いつできるかはわからない状況です。

日本のドナー不足の深刻さ…

その背景には、心臓移植の実施件数が、希望者の数に追いついていない現状があります。国内では、心臓移植を希望している人が900人いるのに対し、2022年度、実際に行われた心臓移植は88件。年々、増加傾向にはありますが、 いまだ心臓移植の件数は少なく、その要因の一つが“ドナーの少なさ”です。

100万人当たりの臓器提供者数は、諸外国に比べて、日本ははるかに少ないことがわかります。臓器提供をするか否かの意思表示は、運転免許証や健康保険証などですることができますが、実際に意思表示しているのは、約10人に1人というのが現実です。

補助人工心臓が支える“いのち”

いつ訪れるかわからない臓器移植の日まで、鈴木さんは「補助人工心臓」という、心臓の働きを助けるポンプを体内に取り付けて生活しています。そのポンプを動かすのが、お腹から出てきた管とつながった、こちらの機械。

(鈴木彩乃さん)
「3キロくらいです。重いです、肩がこります。お風呂にも浸かれないので、疲れがとれない」

補助人工心臓は充電式で、1回につき、12時間動きます。

(鈴木彩乃さん)
「停電で充電ができない場合は、湖西市にある消防署に行って災害時にバッテリーを充電するコンセントを貸してほしいというお願いはしています」

さらに、補助人工心臓をつけると、1人で生活することはできなくなります。緊急時に対応できるように、家族は24時間、常に機械のアラーム音に気づける範囲内にいなければならないという決まりがあります。

(母・ふみえ さん)
「ずーっと見守るしかないから、そばで見てるだけ。2.3度も花畑を見たって言ってたから、いつでも不安があったんですけど、頼れる人もいないから、自分で頑張って、涙こぼすこともあったけどね」

(鈴木彩乃さん)
「母の人生の一部を私に費やしてもらわないといけなくなったので、親孝行をしたい矢先だったので、申し訳ないです」

さらに、緊急時にすぐに対応できるよう、かかりつけの病院まで2時間以内に行ける場所にいなくてはならず、とても旅行などには行けません。

生きるための“リアル”な生活

補助人工心臓を利用するには、国民健康保険や自治体の補助を使っても、月に5万円ほどの自己負担が発生します。鈴木さんは障がい年金をもらっていますが、その額も、月に5万円ほど。これでは生活費すら捻出することはできないため、鈴木さんは補助人工心臓をつけたまま、アルバイトもしているのです。

元々は腕利きの料理人だったこともあり、浜松市内のフランス料理店で週に1回ほど、仕込みを手伝っています。金銭的な厳しさを知ったオーナーの川合さんが、鈴木さんの体調も承知の上で採用したのです。

(鈴木彩乃さん)
「どうしても無理しちゃうとよくないというのが過去の経験であって、疲れた時は疲れたので休ませてくださいとか、そういうのもわかってOKと言ってくださるのがとても働きやすい」

今では、店頭で販売しているパウンドケーキやお菓子などをすべて任されています。

(鈴木彩乃さん)
「ご理解いただいて、私の可能性を発掘してくださって」

(オーナー 川合正剛さん)
「もったいないですもんね、移植が終わってからも生活や仕事は続くから」

鈴木さんは周りのサポートもあり、補助人工心臓で生活することができていますが、実際には、サポートが受けられずに諦めてしまう人も多くいます。

(鈴木彩乃さん)
「いま生きているのは補助人工心臓のおかげなので、体の一部だと思っています」

農園レストランの夢…未来への希望

鈴木さんの夢は、いまも「農園レストラン」を開くこと。そのためには”心臓移植”が必要で「ひとりでも多くの人に臓器提供への関心を持ってもらいたい」そんな思いがあります。

(鈴木彩乃さん)
「NOでもいいと思うんですね。YESかNOか、家族で話し合ってもらえたらいいな」

(静岡第一テレビ every.しずおか 2023年11月27日放送)

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