『私は検察に殺された』組織内の性犯罪で“二次被害”なぜ起こる?大阪地検元トップが一転『無罪』主張 女性検事の刑事告発に検察庁が示した“不起訴”の理由と当事者の怒り

組織の中で起こる性犯罪では事件そのものの被害だけではなく、意を決して被害を公にした後も誹謗中傷に晒されるなど、被害者が周囲から傷つけられるケースが後を絶たない。
大阪地検元トップが加害者として起訴された性的暴行事件で、勇気を振り絞って“性被害”を公にした女性検事・Aさんが、再び打ちのめされる事態が起きた…。絞り出した声に牙をむく性犯罪のセカンドレイプの実情を伝える。(取材・報告:丸井雄生)
■法廷での謝罪から一転『無罪』を主張 議論を生む“性的同意”
大阪地検元検事正が準強制性交の罪に問われる裁判をめぐり、2024年の暮れ、弁護人が突然の方針転換を告げた。
元検事正・北川健太郎被告(65)の弁護人である中村和洋弁護士は、「北川被告には事件当時、Aさん(性被害を訴える女性検事)が抗拒不能であったという認識はなく、またAさんの同意があったと思っていたため、犯罪の故意がない。したがって無罪」と訴えた。
初公判で起訴内容を認めていた北川被告は、一転「同意があったと思った」と主張を翻したのだ。
その翌日、Aさんは会見を行い、時折涙に声を震わせながら、怒りと絶望感を露わにした。
女性検事Aさん
「無罪を主張していることを知り、絶句し泣き崩れた。今の率直な気持ちを申し上げると、被害申告なんてしなければよかった」
北川被告に真意を尋ねるため、取材班は接見を申し入れたが、辞退された。
『性的同意』の認識を争う主張は、かつて不起訴や無罪が相次ぎ、判断の見直しも行われるなど議論を生んできた。
刑事法に詳しい甲南大学の園田寿名誉教授は、「同意の問題を中心に議論するべきではない」と指摘し、「客観的に何が行われたかというのが重要。その人間の性的尊厳に反するような行為がまず行われたのかどうか、ここを確定しないといけない。単になんでもかんでも、『同意があった』という主張をすれば許されるということではない」と説いた。