検察の取り調べ「違法性」認めず “無罪”元社長訴え棄却 大阪地裁「逮捕や起訴は違法とはいえない」
巨額の横領事件で無罪となった不動産会社の元社長が、検察の違法捜査を訴えている裁判で、大阪地裁は21日、元社長側の訴えを退け、国側の賠償責任を認めない判断を示しました。
(裁判長)
「主文 原告の請求を棄却する」
検察の捜査の在り方が問われた、この日の裁判。司法は一連の捜査を「違法ではない」と判断しました。
訴えを起こしたのはプレサンスコーポレーションの元社長、山岸忍さん。2019年、21億円の横領事件で、大阪地検特捜部に逮捕・起訴され、その後の裁判で無罪になりました。無罪の決め手となったのが、検察側による山岸さんの元部下への威圧的な取り調べの実態です。
田渕大輔 検事
「(机を叩く音)ウソだろ?(机を叩く音)ウソだろ?」
机を叩きながら迫るのは、元部下の取り調べを担当した田渕大輔検事。
田渕大輔 検事
「検察なめんなよ。命かけてるんだよ、俺たちは。あなたたちみたいに金をかけてるんじゃねえんだ。かけてる天秤の重さが違うんだ、こっちは」
「あなたはプレサンスの評判を貶(おとし)めた、世間の評判を貶めた大罪人ですよ」
こうしたやりとりのあと、元部下の供述は変遷。大阪地裁は「部下らの証言は信用できない」とし、山岸さんの無罪が確定しました。
プレサンスコーポレーションの山岸忍 元社長
「取り調べの録音・録画を見てこんなことが起っているのかと、ただただびっくりしました」
その後、山岸さんは「検察の違法な捜査が冤罪を生んだ」として、国に賠償を求め提訴。民事裁判では、田渕検事や主任検事など4人の検事が、証人尋問のため証言台に立ちました。
田渕大輔 検事
「(山岸さんの元部下が)ウソや言い訳を重ねていると感じ、真摯に取り調べに向き合ってほしいと思って、机をたたく行為や大声で厳しく問い質した」
裁判では、別の検事が主任検事に対し「逮捕は待った方がいい」と進言していたことも明らかに。しかし、その進言は聞き入れず、山岸さんの逮捕へと踏み切られていったのです。
そして迎えた今日。捜査の違法性と国に賠償責任があるかどうか判断が示される「中間判決」が行われました。
大阪地裁は「山岸さんの元部下は田渕検事に精神的に支配されておらず、威迫によりウソの供述をしたことが明らかとまでは言えない。ほかの供述や客観証拠からも、見立てには一定の合理性がある」と指摘。
そのうえで、「山岸さんの逮捕や起訴は、違法とはいえない」として、山岸さん側の訴えを退け、国の賠償責任を認めないとする判決を言い渡しました。
プレサンスコーポレーションの山岸忍 元社長
「こういう判決になると全く思っていなかった。結果をみると、裁判所は検察の違法行為を擁護している。こういう状態であれば、この国から冤罪はなくならない」
山岸さん側は今後、判決を不服として控訴する方針を示しています。